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そしてさらに翌日。
俺はリリィの毒牙にかかり女になっていた。
「…………お兄……お姉さん……素敵」
おい、なんで言い直した!
さすがにあの街に入ってからお兄さんと言われたらそれはそれでまずいが、今は別にいいだろ!
「はい。すごく似合ってます」
女装が似合っても嬉しくねぇよ……
まあ、まだスカートとかはかされなかっただけましだがな。
「こっちもできたよー」
「何故俺がこんな格好をしなくちゃいけないんだ……」
ゼノは不機嫌そうに──いや不機嫌な顔で愚痴を言いながら出てくる。
うん。
女物の服を着て、軽い化粧がされたくらいで何もいじられてなくね?
いや、そもそも俺と違って髪は長いし、自称若いだけあっていじる必要がないんだろうが解せないな……
「こっちも終わりました」
聞き慣れない声とともにもう1人やってくる。
「──お前誰だよ!」
「正成でござる」
「えっ、ござるの人の原形がないじゃん!」
「拙者も忍ゆえこういう術も使えるでござる」
あっ、はい。
結局俺だけガッツリ女装をさせられたわけですね。
「それでは行きましょうか」
「…………」
リリィの呼びかけに反応したのは首を縦に振ったサシャだけだった。
「こんな格好で外に出たくない」
「まったくだ……」
「ほら! たった1時間程度の我慢なんだからさっさと行きなさい!」
そして俺たちはなすすべなくリリィによってあの街の前まで連れていかれた。
「それでは私は戻りますので後は頑張ってください」
「ちょっと待て! リリィもついてきたらいいじゃないか」
「私は1度中に入っていますので、変に怪しまれるかもしれませんし……」
何故そこで口ごもる。
余計入るのが怖くなってきたぞ……
「それとマスターは街の中では一切声を出さないでください」
「それもそうですね」
リリィの意見に正成も同調する。
声色の変えられる正成と元々声の高いゼノはともかく、俺が喋ったら一瞬でバレるからな……
それはさておき正成だと分かっているとすごく気持ち悪いからあいつにも喋らないでほしいくらいだが……
「分かったよ。サシャみたいに人見知りってことにしててくれ」
「分かったよ三厳ちゃん」
おい!
ゼノ殺すぞ!
「召喚士さんそんな怖い顔しないでください」
理由なんてないが、ムカつくから後で正成もしばいてやる。
ああ、今決めた。
これは決定事項だ。
「それでは行きましょうか」
俺はローブのフードを深く被り、正成とゼノの後をついていく。
サシャは俺にピッタリとくっついているが、これサシャがついてくる意味はあったのだろうか?
そんなことを考えてたら一昨日追い返された門の前へと到着した。
もちろん門番に話しかけられる。
「ここは男子禁制の街だ。入街理由を聞かせてもらおうか」
「私たちは冒険者です。魔王討伐のためにこの街の先へと進みたいのですが」
「そうか。なら入れ」
街に入りたい理由なんて聞かれた時には一瞬ヒヤッとしたが、切り抜けられたか。
正成ナイス!
「──待て! そこのフードを被った術士。1度そのフードを取ってもらおうか」
──と言うわけでもなかったようだ。
もしかしなくても絶体絶命のピンチじゃね?
いや、無理だったら無理だったでこんな格好すぐに辞められるじゃないか!
よし、頼む。
バレてくれ。
そんな願いとともに俺はフードを取った。
「──よし、入っていいぞ。せっかく綺麗な顔をしているんだからフードを取っていればいいものを……」
えっ!?
いや、ここはバレるところじゃないの?
なんで普通に女として認識されてるの?
「彼女人見知りなもので……」
「そうか。それは済まなかったな」
はあ……
こうなったら街の中でバレるのだけは勘弁だな。
いくらゼノがいるとはいえ──むしろここ辺りのレベルを考えるとゼノしかまともに戦えないから大惨事になりかねない。
そう思い俺は無言でフードを被り直した。
「すごく綺麗な街ですね」
「…………」
サシャと2人コクコクと頷く。
ゼノもまったく喋ろうとしないせいですごくネクラなパーティーになってるな……
まあ、それもあの口調だしボロが出ないようにだと思う。
「案内図的にはこのまま大通りを真っ直ぐ進めばいいみたいですね」
それでもめげずに正成は1人喋っている。
メンタルすげぇな。
「──ねぇあなたたち暇?」
そんなとき街の住民であろうギャルっぽい集団から声をかけられた。
「先を急いでいます」
「そんなこと言わずに私たちと遊んでこーよ」
「あの、本当に急いでいるので……」
おい正成もっと強く引き離せ。
なんとなくだが、リリィがついてくるのを嫌がった意味が分かったぞ。
「──ねぇこの子すごく可愛いんだけど!」
そんな俺らの気持ちなど露知らずギャルたちの視線がサシャに集まる。
その勢いにサシャは俺の後ろに隠れて震えているし、そろそろどうにかしないとヤバイぞ……
「先、急いでいるんで──ほらさっさと行くよ!」
「あの、すみません──」
ゼノの鋭い視線でギャルたちが怯んだ瞬間に、俺たちは逃げるようにその場から離脱した。
そしてそのままかけられる声をいなしながら街の向こう側へと歩を進める。
高々10分そこらで移動できるような距離も、リリィたちが言っていた通り1時間弱の時間を費やした。
街の外へようやく出れた時には全員気力が尽き果てそうだった。
「はぁ……あいつらが行きたがらなかった理由がはっきり分かったわ……」
「まったく……酷い目にあったでござる」
「…………怖かった……」
「ああ、2度とここには来たくねぇわ……そのためにもライドラを呼び出してさっさと魔法が使えるところまで行かねぇとな」
「俺たちはどうするんだ?」
「悪いが始まりの街でしばらく待機していてくれ。リリィに迎えに行ってもらうわ」
「御意」
「それじゃ解除! ──そして召喚!」
「召喚士はなんでそんな格好をしているんだ……」
「あの後色々あってな……」
頼むからこれにはもう触れないでくれ……
もう精神的に死にそうなんだ。
「──そんなことより早速飛んでくれるか。今日はいつもよりも距離を飛ばないといけないんだ」
「うむ。それでは行くぞ」
俺が乗ったことを確認するとライドラが空へ飛び立った。




