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脱力系探偵・藍衣夜月の事件簿~友人の相談を聞いてみたら思ったよりエグかった~  作者: まむーろ


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第二話

「お母さんに説明してくるので、ちょっとここで待っててください」

 そう言って葉子は玄関から家の中に入って行った。

「立派なお宅だなあ」

「葉子はやはりイイトコのお嬢様だったのかー」

 二人は葉子が入っていった家を見上げて感嘆していた。

 二階建てで屋根にはソーラーパネルも付いているし、玄関や門にはカメラがたくさん付いていて防犯対策もバッチリだ。

 車庫も車が二台は入れられる広さがあり、どこを切り取ってもブルジョワジーを感じさせる邸宅だった。


「私、この家の子になる!」

「無茶を言いなさんな……」

 葉子を待っていて手持ち無沙汰だった二人は適当な雑談で時間を潰していた。夜月は一度門から外に出て、柵の外から庭を見学までしていた。恥ずかしいからやめて欲しいと虎一は心の中で嘆いた。

「すみません、お待たせしました。どうぞ中にお入りください」

 しばらくすると、葉子が玄関から出てきて家へ招き入れてくれた。

「お邪魔しまーす」

「失礼します」

 中に入ると、リビングと思われる部屋へ通された。広い……虎一はかつて在籍していた軍の施設の談話室を思い出した。夜月もキョロキョロと田舎から都会に出てきたお上りさんみたいな仕草をしている。

「それでお嬢様、例の荷物はどこに?」

「何それ、私のこと? こっちだよ。お母さん! こちらが友達の夜月と探偵の虎一さんだよ」

 リビングの横にあるキッチンの手前に女性が一人佇んでいた。少し思い詰めたような元気のない顔をした女性は、葉子によく似た美人だった。

「やはり美少女の母親は美人なのか……」

「こら、聞こえるよ夜月!」

「葉子の母のやよいと申します。今日はわざわざ来て頂いてありがとうございます」

「え、あ、これはご丁寧に、こちらこそありがとうございます?」

 丁寧に挨拶をするやよいに、二人は慣れない素振りで挨拶を返した。きっとやよいも育ちの良さが伺えるイイトコのお嬢様なんだろうなと虎一は思った。

「それで、これが荷物だよ」

 食卓と思われるテーブルの上にそのダンボールは置かれていた。長辺が五十センチメートルくらいの大きさの直方体で、思ったよりも小さな箱だった。

 その外周には写真で見た通りに、危険だということをこれでもかと言わんばかりにアピールするシールやテープが貼り付けられていた。これだけやられると、逆に問題ないんじゃないかと思ってしまう。


「ちょっと持ってみていい?」

「うん、いいけど気をつけてね」

「大丈夫か夜月、俺が持とうか?」

「いや、自分で重さを確かめたい」

 そう言って夜月はひょいとダンボールを持ち上げた。

「んん? 見た目の割に軽いな」

「そうなの。おかげで中に何が入っているのか全然見当がつかなくて」

 そんな話をしている時だった。玄関が開いて誰かが入ってくる音がした。リビングの入り口を見ると、男性がドアを開けて入ってきた。

「ただいま。あれ? お客さんかい?」

 葉子の父親だろうか? 虎一が男性に会釈をしていると、夜月が男性の顔をじっと見ていた。

「どうした?」

「いや、渋いオジサマだなと思ってさ」

 そう言うと、夜月はもう興味を失ったようでダンボールの方へと集中し始めた。

「おかえりお父さん。実はちょっと変な荷物が朝に届いてて困ってるんだ」

「ええ?」

 父親は驚いた様子でダンボールをちらりと目をやって、すぐにこちらを向いた。

「わざわざ来て頂いてありがとうございます。私は葉子の父の純也と申します。うちの娘と家内がご迷惑おかけしてすみません」

「いえいえ、こういうのが私の仕事ですから、気にしないでください」

 葉子の父親、純也の丁寧な挨拶に虎一が畏って返答した。

「それにしても、これ本当に軽いな。振動とかも全然無いし、なんなんだろ?」

 夜月がダンボールをブンブンと上下に振ってみたが、中で何かが動いているような感じは受けなかった。梱包材がギチギチに詰め込まれているのだろうか?

「ち、ちょっと! そんなに振り回したら壊れちゃうんじゃないですか!?」

「いや、めちゃめちゃ軽いし振動も無いから大丈夫だと思いますよ」

「そ、そうかい?」

 純也は何だかダンボールを動かす度にビクビクと反応している。母親といい、この一家はビビリなのだろうか? 夜月が少し呆れた様子でダンボールをテーブルの上に戻した。

「そうだ虎一、一応危険物じゃないか確かめてみようか」

「振り回す前にやるべきだろそれは……」

 そう言って虎一は肩に担いでいたバッグを床に置いてジッパーを開けた。そして中に手を突っ込み、何かアンテナのような物がついた機械を取り出した。

「これは簡単な探知機のような物です。これで爆発物じゃないかが判別できるんですよ」

「そんなの持ってるんですね……」

 やよいが感心したように呟いた。

 虎一は探知機の電源を入れてしばらく待ってからダンボールへ探知機のアンテナをかざした。すると、ピピッピピッと探知機が何か反応を見せた。

「え! 反応してるんですか!?」

「いや、これは……爆発物の反応ではないですね。ですが、金属反応があるみたいです。中身は何かの金属みたいですね」

「金属? その割には軽かったなあ」

 虎一がダンボールを持って重さを確かめるように上下させた。

「ふむ。ダンボールの重さを差し引いて、中身は緩衝材の重さを含めて300~400グラムってところか」

「わ、わかるんですか!?」

 葉子が虎一を驚いた表情で見た。

「経験上こういう予測するの得意なんですよ」

 虎一の予測を聞いて夜月が考えこみ始めた。すると、夜月は右手で自分の横髪の三つ編みを解き始めた。

 お、始まったな、とそれを見た虎一は思った。夜月は思考が深まってくると、三つ編みを解いたり結んだりする癖があるのだ。

「ダンボール……金属……危険物……」

 夜月がブツブツと何かを呟いている。こういう時は何を言っても反応しないので、虎一は黙って夜月が何か言うのを待った。日向一家も夜月を固唾を呑んで見守っている。

 夜月が器用に右手だけで解いた三つ編みを結び直すと同時に顔を上げて口を開いた。


「すみません、ちょっとお母さんとお父さんに質問してもいいですか?」

「あ、はい」

「ええ、構いませんよ」

「それじゃあまずお母さんから」

「はい」

 そう言って夜月はやよいの前に歩いていき、ゆっくりと話し始めた。

「お母さんはこの荷物に心当たりは無いんですよね?」

「はい、こんな変な荷物なんて全く知らないです」

 やよいが少し畏まった様子で返答した。

「それでは、最近インターネットで何かを買いましたか?」

「え? ええ、化粧品と掃除道具を買いました。でも、こんな危険物なんて買ってませんよ?」

「なるほど。では、どこかの店舗で郵送するような物も買ってませんか?」

「はい、最近はスーパー以外の店には行っていないです」

「分かりました。ありがとうございます」

 次に、夜月は純也の前に歩いていった。

「次はお父さん、いいですか?」

「え、ええどうぞ」

「同じ質問なんですが、お父さんもこの荷物に心当たりはありませんか?」

「え、ええ、ない、です」

 純也はなんだかそわそわとした様子で答えた。

「ふむ。ではお父さんは最近インターネットで何かを買いましたか?」

「いえ、こんな郵便で運んできてもらうような物は買っていないと思います」

「なるほど。では、どこか店舗で配送してもらうようなものは買いましたか?」

「買い……ました。でも、わざわざこんな大きな箱には入れないです」

 夜月の三つ編みをいじる手が一瞬止まったような気がしたが、すぐに夜月は元の調子に戻った。

「そうですか。では最後に、その買い物をした時は一人でしたか?」

「え? いや、会社の人と一緒……だったかな?」

「そうですか、ありがとうございました」

 そう言って夜月は元の位置へと戻ってきた。そして、いじっていた三つ編みのリボンをギュッと結び直してピンと指で弾いた。

「この荷物の正体が大体分かりました」

「え? 本当なの夜月?」

「一体なんなんですか?」

 葉子とやよいが驚いて夜月の方に一歩踏み出した。

 夜月はここにいる全員を見回して一度目を閉じた。もったいつけるなあ、最近なにか推理小説でも読んだのかな? と虎一はぼんやりと眺めていた。

「この荷物の正体は……」

 ゴクリと誰かの喉が鳴る音が聞こえた気がした。

「ごめん、その前にちょっとトイレ貸して!」

 全員がガクリとずっこけた。

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