閑話 二人の一般男性――グラビアアイドルを愛する者同士、初めての二人飯
今回の閑話では、第一章と第二章の主人公が、ついに初めて二人だけで食事をします。
以前の二人は、共通の友人・横谷梨紅を通じて何度か顔を合わせただけの関係。
顔と名前は知っている。
会えば挨拶もする。
しかし二人きりで遊んだことはなく、連絡先すら交換していませんでした。
そんな二人を大きく近づけたのが――藤宮麗華と白河綾音。
第一章の主人公の妻は、グラビアアイドルの藤宮麗華。
第二章の主人公の彼女は、同じくグラビアアイドルの白河綾音。
一方はすでに秘密の恋愛を乗り越えて結婚した夫婦。
もう一方は、これから秘密の恋を育てていく恋人同士。
立場は少し違っていても、一般男性として人気グラビアアイドルを愛する二人には、普通の友人にはなかなか相談できない共通の悩みがあります。
週刊誌。
SNS。
人目を避けるデート。
職場で広がる恋愛の噂。
そして、大切な女性の芸能活動を守りながら、自分たちらしい恋愛を続けること。
第二章の主人公にとって、麗華の夫は少しだけ先を歩いている存在でもあります。
今回はそんな二人が、初めて真正面から互いの恋について語り合います。
そして話題はやがて、二人を最初につないでいた横谷梨紅へ。
「今度は梨紅も入れて、三人で飯行く?」
かつて梨紅がいなければほとんど話すことのなかった二人。
今度は二人のほうから梨紅を誘うことになります。
ただし――。
梨紅はまだ、二人がそれぞれ藤宮麗華と白河綾音のパートナーであることを知りません。
昔とはまったく違う関係になった三人が、再び同じテーブルを囲む未来へつながる閑話です。
金曜日。
午後七時を少し過ぎた頃。
俺は会社を出て、駅から少し離れた場所にある居酒屋へ向かっていた。
今日会う相手は綾音ではない。
会社の同僚でもない。
そして、横谷梨紅でもない。
藤宮麗華の夫。
第一章の主人公だ。
以前、麗華と綾音を交えた四人で食事をしたとき。
俺から、
「今度、二人で飯行かない?」
と誘った。
あのときは軽い気持ちもあった。
けれど、実際に約束の日が近づいてくると、聞いてみたいことがいくつも浮かんできた。
何しろ相手は――。
俺より先に、グラビアアイドルとの秘密の恋愛を経験している。
しかも今では、その相手である藤宮麗華と結婚している。
俺にとっては、少し先を歩いている人でもあった。
スマートフォンが震える。
『着いた』
俺は返信する。
『俺ももうすぐ』
数分後。
店の前。
見覚えのある男が立っていた。
「お疲れ」
「お疲れ」
以前なら。
横に梨紅がいた。
あるいは。
四人で会ったときなら、麗華と綾音がいた。
でも今日は。
俺たち二人だけ。
「何か変な感じだな」
俺が言う。
「分かる」
「二人だけで会うの初めてだよな」
「初めて」
「昔は梨紅がいないと会うこともなかったし」
「そもそも連絡先知らなかったからな」
「そうだった」
二人。
少し笑う。
そして。
店へ入った。
◇◇◇
案内されたのは奥の半個室。
俺たちは向かい合って座る。
飲み物を注文。
料理も何品か頼む。
そして。
グラスが届いた。
「じゃあ」
「何に乾杯する?」
「またそれ?」
「この前も四人でやったから」
少し考える。
俺は笑った。
「グラビアアイドルを彼女と妻に持つ男同士」
向こうも笑った。
「長いな」
「じゃあ秘密を守る男同士」
「それも怪しい」
結局。
「まあ、普通に」
「お疲れ」
「お疲れ」
グラスを合わせた。
◇◇◇
最初は。
普通の話だった。
仕事。
最近忙しいか。
休日は何をしているか。
梨紅とは最近会ったか。
昔、梨紅を通じて会ったときの話。
「そういえば」
俺が聞く。
「最初に会ったのいつだった?」
「覚えてる?」
「はっきりとは」
「俺も」
「梨紅が何人か集めたときじゃなかった?」
「ああ、あれか」
「多分」
「俺、お前と何話した?」
「ほとんど話してない」
「だよな」
「梨紅がずっと喋ってた」
「あいつそういうところあるからな」
二人。
笑う。
本当に。
それくらいの関係だった。
顔を知っている。
名前も知っている。
でも。
詳しいことは知らない。
それなのに。
今は。
互いに誰にも簡単には言えない共通点を持っている。
料理が届く。
少し食べてから。
向こうが俺を見る。
「で」
「何?」
「今日は俺に聞きたいことがあるんじゃないの?」
俺は箸を止める。
「分かる?」
「四人で会ったとき、そんな感じだったから」
「まあ」
俺は少し考える。
「ある」
「何?」
「麗華さんと付き合ってたとき」
「うん」
「怖くなかった?」
相手の表情が。
少しだけ変わった。
「何が?」
「バレること」
俺は続ける。
「週刊誌とか」
「うん」
「SNSとか」
「うん」
「普通に出かけてるだけなのに、誰かに写真撮られるかもしれない」
「あるな」
「俺は会社員だから」
「うん」
「もし綾音とのことが知られたら、俺だけじゃなくて会社にまで迷惑がかかる可能性もある」
少し間。
「最近、会社で綾音の恋愛の噂が結構出てる」
「もう?」
「彼氏いるんじゃないかって」
「相手までは?」
「全然」
「なら、まだ大丈夫だと思う」
「でも」
俺は苦笑する。
「この前、『お前だったりして』って言われた」
向こう。
一瞬。
止まる。
「マジ?」
「すぐ『ないか』って笑われたけど」
「危ないな」
「だろ?」
「そのときどうした?」
「一緒に笑った」
「それが一番いい」
「やっぱり?」
「そこで変に否定しすぎても怪しい」
なるほど。
俺は頷いた。
「麗華さんのときもあった?」
「もちろん」
「どんな?」
「似たようなもの」
彼は少し笑う。
「芸能人って、少し雰囲気が変わっただけで『恋してるんじゃない?』って言われるから」
「綾音も言われてる」
「麗華もあった」
「やっぱり」
「でも一番怖いのは」
「何?」
「俺たち一般人側が油断すること」
俺は。
少し真剣になる。
◇◇◇
「芸能人側は普段から撮られることを意識してる」
「うん」
「でも俺たちは違う」
「確かに」
「普通に歩く」
「うん」
「普通にスマホを見る」
「うん」
「普通に知り合いと話す」
「うん」
「だから、無意識の行動からつながることもある」
俺は。
綾音とのことを思い返す。
駅。
公園。
家。
短い時間のデート。
「だからって」
彼は続ける。
「ずっとビクビクしてたら続かない」
「それ、前も言ってたよな」
「そう」
「二人のルールを決めるって」
「うん」
「俺たちも少しずつ決めてる」
「例えば?」
「人が多いところでは距離を取る」
「うん」
「外で無理に手をつながない」
「うん」
「何か変な噂が出たら、綾音だけで判断しないで事務所にも相談する」
「いいと思う」
「あと」
俺は笑う。
「家では普通にする」
向こうも笑った。
「それが一番大事かもな」
◇◇◇
しばらくして。
俺から聞く。
「結婚するときは?」
「何?」
「怖くなかった?」
少し。
沈黙。
「怖かったよ」
意外だった。
「そうなんだ」
「そりゃそうだろ」
「もっと迷わなかったのかと思ってた」
「迷うよ」
彼は。
グラスを置いた。
「麗華はグラビアアイドル」
「うん」
「俺は一般男性」
「うん」
「結婚するってことは、付き合ってるとき以上に責任がある」
俺は黙って聞く。
「でも」
「うん」
「最後は肩書きじゃなかった」
彼が言う。
「藤宮麗華と結婚するって考えた」
俺は。
その言葉を。
頭の中で繰り返す。
藤宮麗華。
グラビアアイドル。
ではなく。
藤宮麗華という女性。
「綾音さんも同じじゃない?」
突然。
聞かれる。
「え?」
「お前にとって」
「……うん」
「白河綾音という有名人と付き合ってるのか」
「うん」
「それとも」
少し間。
「綾音さんという一人の女性と付き合ってるのか」
俺は。
すぐ答えられた。
「後者」
「だろ?」
「うん」
迷わない。
テレビの中。
雑誌の中。
撮影現場。
そこにいる綾音も。
もちろん綾音。
でも。
俺が好きになったのは。
俺の家で笑って。
料理を作って。
映画の結末を外して悔しがって。
「会いたい」
と言ってくれる。
一人の女性。
白河綾音だった。
「だったら」
彼は言う。
「今はそれでいいんじゃない?」
「……そうだな」
◇◇◇
料理を追加。
今度は。
少し軽い話へ変わる。
「ところで」
彼が聞く。
「綾音さん、家に来るんだろ?」
「来る」
「家族公認?」
「父さんと母さんと妹は知ってる」
「珠香ちゃんだっけ?」
「そう」
「麗音ちゃんの昔の同級生」
「そう」
「本当にすごいな」
「そっちもだろ」
「何が?」
「俊介くんと麗音ちゃん」
「ああ」
「中学で三年間同じクラス」
「そう」
「しかも俺の母さんと麗華さんのお母さん」
「昔の仕事仲間」
「それ」
二人。
顔を見合わせる。
「つながりすぎだろ」
「この前も思ったけど」
「相関図作れるよな」
「かなり複雑なやつ」
笑う。
そして。
俺は。
ふと思う。
「梨紅だけ何も知らないんだよな」
彼も。
「ああ」
「俺たちが今日会ってることも?」
「知らないと思う」
「俺も言ってない」
「俺も」
「何か」
俺は笑う。
「梨紅が一番中心にいるように見えて、一番何も知らないな」
「確かに」
二人。
また笑った。
◇◇◇
「でもさ」
俺は。
料理を取りながら言った。
「今度」
「うん?」
「梨紅も入れて三人で飯行く?」
彼が。
少し驚いた。
「俺とお前と梨紅?」
「そう」
「いいかもな」
「昔は梨紅が真ん中にいて」
「俺たち二人はほとんど話さなかった」
「でも今なら」
俺は笑う。
「普通に三人で話せそう」
「確かに」
「ただ」
「うん」
「綾音のことは言えない」
「麗華のこともな」
「そこなんだよ」
二人。
考える。
梨紅。
俺たち二人と仲が良い。
でも。
俺と綾音。
彼と麗華。
その関係は。
梨紅には知らされていない。
「絶対聞かれるよな」
俺が言う。
「何で急に二人仲良くなったのって」
「聞かれる」
「どうする?」
「適当に」
「一番怪しいやつ」
「じゃあ」
彼が考える。
「この前偶然会って、久しぶりに話したら意外と気が合った」
「嘘ではない?」
「完全な嘘ではない」
「四人で会ったことを省略してるだけ」
「そう」
俺は笑う。
「それでいくか」
「でも梨紅、鋭いときあるからな」
「そうなんだよ」
「お前、彼女できたこと言ってる?」
「いるとは言った」
「誰かは?」
「言ってない」
「俺も結婚の詳しいことまでは話してない部分あるからな」
「じゃあ余計に危ないな」
「まあ」
彼は笑う。
「そのときはそのとき」
「軽いな」
「秘密を言わなければいいだけだろ」
「それもそうか」
◇◇◇
俺は。
スマートフォンを取り出す。
「今連絡する?」
「梨紅に?」
「うん」
「早くない?」
「予定決めるだけ」
「まあいいけど」
俺は。
三人のグループを作ろうとして。
止まる。
「……俺、お前と梨紅それぞれ個別しかない」
「俺も」
「じゃあグループ作る」
「任せた」
新しいグループ。
俺。
第一章の主人公。
横谷梨紅。
三人。
作成。
そして。
『今度三人で飯行かない?』
送信。
数秒。
既読。
梨紅。
早い。
『何でこの三人?』
俺たち。
同時に。
笑った。
「ほら!」
「やっぱり来た」
続いて。
『お前らいつからそんな仲良くなった?』
俺。
彼を見る。
「何て返す?」
「さっき決めたやつ」
俺は。
入力。
『最近久しぶりに話したら意外と気が合った』
送信。
梨紅。
『どこで?』
「鋭い!」
「だから言っただろ」
『たまたま』
送る。
『怪しい』
俺たち。
爆笑。
さらに。
『まあいいけど』
『俺は行ける』
俺。
「行けるって」
「じゃあ日程決めよう」
こうして。
次は。
三人。
横谷梨紅を含めた。
久しぶりの食事が。
決まり始めた。
◇◇◇
それから。
俺たちは。
もう少しだけ話した。
恋人との時間。
仕事。
家族。
そして。
芸能人と一般人という違い。
俺が聞く。
「麗華さんと結婚して」
「うん」
「一番変わったことって何?」
彼は。
少し考える。
「帰る場所かな」
「帰る場所?」
「うん」
「どういう意味?」
「昔は麗華に会う時間を作ってた」
「うん」
「今は家に帰れば麗華がいる」
その言葉。
少しだけ。
羨ましいと思った。
俺と綾音は。
まだ恋人。
会う日を決める。
時間を合わせる。
仕事の予定を確認する。
人目を避ける。
そして。
夜になれば。
別々の場所へ帰る。
「いいな」
俺が言う。
「何が?」
「家に帰ったら彼女がいるって」
「妻だけどな」
「そうだった」
「でも」
彼が俺を見る。
「お前たちはお前たちのペースでいいだろ」
「分かってる」
「焦る必要ない」
「うん」
「綾音さんにも仕事がある」
「そうだな」
「お前にも仕事がある」
「うん」
「二人で決めればいい」
俺は。
頷いた。
◇◇◇
午後十時前。
店を出る。
夜風。
少し涼しい。
「今日はありがとう」
俺が言う。
「何が?」
「色々聞けた」
「大したこと言ってない」
「いや」
少し考える。
「同じ立場の男がいるって思うだけでも結構違う」
彼は。
少し笑う。
「俺も」
「え?」
「今までは」
彼が言う。
「麗華の仕事仲間はいても」
「うん」
「その彼氏とか旦那と、こうやって二人で話すことはなかったから」
「そうなんだ」
「だから」
俺を見る。
「俺にとっても初めて」
俺は笑った。
「じゃあお互い様か」
「そういうこと」
駅。
分かれ道。
「じゃあ」
「また」
「次は梨紅?」
「多分」
「秘密バレないようにしないとな」
「お前が顔に出すなよ」
「そっちこそ」
二人。
笑う。
「じゃあな」
「また」
俺たちは。
別々の方向へ歩き出した。
◇◇◇
帰りの電車。
スマートフォンが震える。
綾音。
『ご飯終わった?』
俺。
『終わった』
『どうだった?』
少し考えて。
『楽しかった』
すぐに。
『よかった』
『何話したの?』
俺。
『色々』
『私のことも?』
『少し』
『何言ったの?』
『秘密』
『ずるい』
俺は笑う。
そして。
『でも』
『何?』
『色々参考になった』
綾音。
『麗華ちゃんの旦那さんに?』
『うん』
『よかったね』
そして。
少しして。
『友達になれそう?』
俺は。
画面を見る。
昔。
俺たちは。
友達ではなかった。
横谷梨紅。
その共通の友人を通して。
何度か顔を合わせただけ。
名前を知っている。
顔を知っている。
少し話したことがある。
それだけ。
でも。
今日。
二人だけで食事をした。
互いの恋愛について話した。
悩みも話した。
笑った。
次の約束までした。
俺は。
返信する。
『もう友達でいいんじゃない?』
綾音。
『ふふっ』
『よかった』
そして。
『次は?』
俺。
『梨紅も入れて三人で飯行くかも』
少し。
間。
『大丈夫?』
何を心配しているのか。
すぐ分かった。
『俺たちのことは言わない』
『麗華ちゃんたちのことも?』
『もちろん』
『なら安心』
そして。
最後。
『でもいつか』
俺。
『何?』
『梨紅さんにも話せる日が来るといいね』
俺は。
その文章を。
しばらく見ていた。
いつか。
俺と綾音。
麗華と彼。
二組の関係を。
梨紅にも。
普通に話せる日。
今はまだ。
来ていない。
でも。
いつか。
そんな日が来るのかもしれない。
◇◇◇
藤宮麗華の夫。
白河綾音の彼氏。
二人とも。
一般男性。
そして。
愛する女性は。
グラビアアイドル。
片方は。
すでに夫婦。
片方は。
まだ恋人。
立場は少し違う。
歩いてきた時間も違う。
それでも。
人目を気にすること。
相手の仕事を守りたいこと。
普通の恋人同士のように過ごしたいこと。
そして。
芸能人ではなく。
一人の女性として愛していること。
二人には。
思っていた以上に。
共通するものがあった。
かつては。
横谷梨紅を通して。
何度か顔を合わせただけだった二人。
それが今では。
梨紅を抜きにして。
二人で食事をする。
そして次は。
その梨紅を加えて。
三人で。
昔とは少し違う関係で。
同じテーブルを囲むことになりそうだ。
俺の彼女は。
グラビアアイドル。
彼の妻も。
グラビアアイドル。
そんな秘密を共有できる。
新しい友人が。
俺にも。
一人。
できたのだった。
閑話「二人の一般男性――グラビアアイドルを愛する者同士、初めての二人飯」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、第一章と第二章の主人公が初めて二人きりで食事をしました。
以前なら考えられなかった組み合わせです。
二人には共通の友人・横谷梨紅がいます。
しかし、もともと主人公同士が仲良かったわけではありません。
梨紅を含めた複数人で何度か会ったことがある程度。
当時どんな話をしたのかすら、二人ともほとんど覚えていません。
そんな“友達の友達”だった二人が、今では直接連絡を取り合い、二人だけで食事へ行くようになりました。
その最大の共通点が――グラビアアイドルとの恋です。
第一章の主人公には、藤宮麗華という妻がいる。
第二章の主人公には、白河綾音という彼女がいる。
特に今回は、第二章の主人公が抱えている不安を麗華の夫へ打ち明けました。
最近、主人公の会社では、
「白河綾音には彼氏がいるんじゃないか」
という話題が増えています。
しかも以前には冗談ながら、
「お前だったりして」
とまで言われました。
もちろん周囲はすぐに、
「ないか!」
と笑っています。
それでも、本当の彼氏である主人公からすれば一瞬ドキッとする言葉です。
そんな主人公に対し、麗華の夫は自分自身の経験から話してくれました。
芸能人側だけではなく、一般人側も気をつける。
けれど、何もかも禁止して二人とも疲れてしまわないようにする。
そして二人なりのルールを作る。
麗華との秘密の交際を経験してきたからこその言葉です。
そして今回、主人公がもう一つ聞いたこと。
「結婚するときは怖くなかった?」
麗華の夫の答えは、
「怖かったよ」
でした。
グラビアアイドルとの結婚。
一般男性である自分との生活。
仕事への影響。
周囲への秘密。
いろいろなことを考えた。
それでも最後に考えたのは、
“グラビアアイドルの藤宮麗華と結婚する”
ということではなく、
“藤宮麗華という一人の女性と結婚する”
ということでした。
そして第二章の主人公も同じです。
主人公が好きなのは、“人気グラビアアイドル”という肩書きではありません。
家で笑う綾音。
料理を作る綾音。
映画を一緒に見る綾音。
「会いたい」と連絡をくれる綾音。
そんな一人の女性としての白河綾音です。
二人の主人公は、立場こそ違います。
一人は夫。
一人は彼氏。
それでも、互いに理解できることは思っていた以上にたくさんありました。
そして食事の途中。
話題は、二人の共通の友人である横谷梨紅へ。
「今度、梨紅も入れて三人で飯行く?」
という第二章の主人公からの提案。
昔は梨紅が二人をつないでいました。
梨紅と第一章の主人公。
梨紅と第二章の主人公。
それぞれは仲が良くても、主人公同士は顔見知り程度。
しかし今度は逆です。
仲良くなった二人の主人公が、梨紅を誘います。
さっそく三人のグループを作り、
「今度三人で飯行かない?」
と送信。
すると梨紅から返ってきたのは、
「何でこの三人?」
そして、
「お前らいつからそんな仲良くなった?」
という当然の疑問でした。
二人が、
「最近久しぶりに話したら意外と気が合った」
と説明しても、
「どこで?」
「怪しい」
と追及してくる梨紅。
もちろん二人は、
“藤宮麗華と白河綾音を交えて四人で会った”
とは言えません。
梨紅はまだ何も知らないからです。
自分と仲の良い二人の男性。
その一人が藤宮麗華の夫であり、もう一人が白河綾音の彼氏だとは、夢にも思っていません。
そして今回の最後。
綾音から主人公へ、
「友達になれそう?」
と聞かれました。
主人公の答えは、
「もう友達でいいんじゃない?」
でした。
かつては“横谷梨紅の友達”。
今では、梨紅がいなくても二人で会える友人。
しかも普通の友人には話しにくい悩みまで共有できる関係です。
そして次は――。
横谷梨紅。
第一章の主人公。
第二章の主人公。
三人での食事。
梨紅は、二人が急に仲良くなった本当の理由を知りません。
果たして二人は秘密を守ったまま、昔とは少し違う三人の時間を楽しめるのでしょうか。
そしていつか。
主人公と白河綾音。
第一章の主人公と藤宮麗華。
二組の本当の関係を、梨紅へ話せる日はやってくるのでしょうか。
“友達の友達”だった二人が、“同じ秘密を理解できる友人”へ。
二人の主人公の新しい友情が、本格的に始まった閑話となりました。




