第2話 学校では秘密… 「藤宮麗華の彼氏」だなんて言えるわけがない
第2話「学校では秘密――『藤宮麗華の彼氏』だなんて言えるわけがない」。
前回は、主人公と藤宮麗華がただ交際しているだけではなく、すでに同じ家で暮らしていることが明らかになりました。
朝起きれば隣に麗華がいて、一緒に朝食を食べ、主人公は学校へ、麗華は芸能活動へ向かう。
そして夜になれば、二人は同じ家へ帰ってくる。
しかし、その幸せな同棲生活を知っているのは、麗華の所属事務所の社長と担当マネージャー、そして二人それぞれの両親だけです。
主人公の学校では、今日も藤宮麗華の話題で持ちきり。
「藤宮麗華って彼氏いるのかな?」
「一度でいいから会ってみたい」
そんな友人たちの会話を聞きながら、主人公は本当のことを言うことができません。
本当は彼氏がいる。
しかも、その彼氏こそ自分自身。
さらに毎日同じ家へ帰り、二人きりになれば何度もキスを交わしている。
けれど、その事実は絶対に明かせない――。
今回は、そんな「学校での主人公」と「家での彼氏」という二つの顔を中心に、二人が秘密を守りながら過ごす一日を描きます。
誰にも言えない恋だからこそ、二人きりの時間はより大切なものになっていきます。
朝六時十五分。
スマートフォンのアラームが鳴るより少し前に、俺は目を覚ました。
まだ薄暗い寝室。
隣を見ると、麗華は眠っていた。
藤宮麗華、二十歳。
雑誌の表紙を何度も飾り、最近ではテレビ番組への出演も増えている人気グラビアアイドル。
そんな彼女が今、俺の隣で静かな寝息を立てている。
学校の男子たちが見たら、まず信じないだろう。
いや、それ以前に――。
俺と麗華が付き合っていること。
そして同じ家で暮らしていること。
その事実を学校の人間は誰一人知らない。
知っているのは、麗華の所属事務所の社長と担当マネージャー。
俺の両親。
麗華の両親。
それだけだ。
「……ん……」
麗華が少し動いた。
「……おはよう」
「おはよう」
まだ眠そうな顔で俺を見る。
「何時?」
「六時十五分」
「早い……」
「麗華も今日は早いんじゃなかった?」
「九時から収録……」
「だったら起きないと」
「あと五分」
「昨日も言ってた」
「じゃあ三分」
「減ったな」
麗華が布団の中から手を伸ばし、俺の腕をつかむ。
「一緒にいて」
「いるよ」
「学校行っちゃうじゃん」
「そりゃ行くだろ」
「高校生って大変」
「グラビアアイドルに言われたくない」
「私も大変だよ?」
「知ってる」
麗華が笑った。
そして俺のほうへ少し近づく。
「朝の……」
何を言いたいのか分かった。
俺は麗華の頬へ手を添えた。
唇が重なる。
短く一度。
離れる。
ところが麗華は不満そうだった。
「短い」
「朝だから」
「関係ない」
今度は麗華から顔を近づけてきた。
もう一度。
さっきより少し長く。
唇が離れると、お互いの顔がすぐ近くにある。
麗華が笑う。
「おはよう」
「二回目だぞ」
「こっちが本当のおはよう」
「じゃあ最初のは?」
「寝ぼけてた」
「適当だな」
麗華は楽しそうに笑っていた。
俺にとっては、これがいつもの朝。
だけど玄関を一歩出れば、この日常はすべて秘密になる。
◇◇◇
朝七時十分。
俺が制服姿でリビングへ行くと、麗華は朝食を用意していた。
「できたよ」
「ありがとう」
「今日はちゃんと作りました」
「昨日もちゃんとしてただろ」
「今日はもっとちゃんと」
二人でテーブルにつく。
テレビでは朝の情報番組が流れていた。
俺が何気なく見ていると――。
『本日のエンタメ情報です』
麗華の動きが止まる。
「嫌な予感」
「なんで?」
『人気グラビアアイドル・藤宮麗華さんが昨日、都内で行われた――』
「出た」
「消していい?」
「いいじゃん」
「自分が出てるの見るの恥ずかしいんだけど」
画面には昨日の麗華が映っている。
きれいにメイクをして、カメラの前で笑っている。
俺はテレビと目の前を交互に見る。
「何?」
麗華が聞く。
「いや」
「絶対何か思ってる」
「同じ人なんだよなって」
「当たり前でしょ」
テレビの中の麗華は、完璧な笑顔でインタビューに答えていた。
一方、目の前の麗華は部屋着。
しかも俺が見ていることに気づくと、
「そんなに見ないで」
と恥ずかしそうに言う。
「学校でも今日この話になるだろうな」
「私の?」
「たぶん」
「みんな、そんなに私の話してるの?」
「結構してる」
「へえ……」
麗華は少し嬉しそうだった。
「でも変な感じ」
「何が?」
「君の学校では、私はテレビの中の人なんだよね」
「そうだな」
「なのに私は今、君の朝ご飯作ってる」
「そうだな」
「しかも一緒に住んでる」
「そうだな」
麗華がニヤッとする。
「そして彼女です」
「自分で言うなよ」
「事実だもん」
「学校では絶対言えないけどな」
その一言で麗華の表情が少しだけ変わった。
「……うん」
俺はすぐに気づいた。
「嫌?」
「何が?」
「秘密なの」
麗華は少し考えてから首を横に振った。
「嫌じゃないよ」
「本当に?」
「寂しいときはある。でも……」
麗華は俺を見る。
「私の仕事もあるし、君はまだ高校生だし。それに、私たちが付き合ってることを知られたら、君まで騒がれるかもしれないでしょ?」
「まあな」
「それは嫌」
麗華ははっきり言った。
「私のせいで君の学校生活が変わるのは嫌だから」
俺は少し黙った。
「ありがとう」
「だから学校では普通にしてて」
「最初からそうしてる」
「女の子に告白されたら?」
「断る」
「即答」
「彼女いるから」
麗華の顔が一気に明るくなった。
「もう一回言って」
「嫌だ」
「なんで!」
「朝飯食べろ」
「言ってくれたら食べる」
「子どもか」
結局、俺は小さな声で、
「俺には麗華がいるから」
と言った。
麗華は満足そうに笑った。
◇◇◇
午前八時十五分。
学校。
教室へ入った瞬間だった。
「なあ! 昨日の藤宮麗華見た?」
やっぱり。
鞄を置く前からこれだ。
「朝からそれかよ」
「昨日のイベント!」
「ニュースでやってたな」
「めちゃくちゃ可愛かったよな」
別の男子も会話に加わる。
「俺も見た。最近マジでテレビ増えたよな」
「次、ドラマにも出るんじゃない?」
「女優路線行くのかな」
「グラビアも続けてほしい」
次々に名前が出てくる。
藤宮麗華。
藤宮麗華。
藤宮麗華。
俺は席に座った。
数時間前まで同じ家で朝食を食べていた女性の話を、学校で他人のふりをしながら聞く。
未だに慣れない。
「なあ」
「何?」
一人が俺を見る。
「お前、藤宮麗華に会えたら何したい?」
「……何って?」
「例えばサインもらうとか、一緒に写真撮るとか」
俺は困った。
サイン。
頼んだことはない。
写真。
二人で撮った写真ならスマートフォンに何枚も入っている。
もちろん誰にも見せられない秘密の写真だ。
「普通に話してみたいかな」
俺は答えた。
「普通だな!」
「じゃあお前は?」
「俺は絶対写真!」
「俺は握手!」
「俺は名前呼んでもらいたい!」
盛り上がる友人たち。
俺は苦笑した。
――普通に話す。
そんなことなら毎日している。
「でもさ」
一人が雑誌を机に置いた。
「藤宮麗華って彼氏いると思う?」
来た。
一番答えにくい質問。
「どうだろ」
俺は雑誌を見ながら答える。
「いないだろ」
「いや、いるかもしれないじゃん」
「二十歳だしな」
「でも今売れてる時期に恋愛するかな?」
「芸能人同士とか?」
「俳優とかモデルだったらありそう」
俺は黙って聞いていた。
誰一人として――。
『相手は高校三年生で、しかもすでに同棲している』
なんて想像していない。
当たり前だ。
俺だって半年前なら信じない。
「お前はどう思う?」
突然聞かれた。
「俺?」
「麗華ちゃんに彼氏いると思う?」
俺は少し考えるふりをした。
「……いるかもしれないな」
本当は知っている。
いる。
俺だ。
「うわー、夢壊すなよ!」
「可能性の話だろ」
「でも週刊誌に一回も撮られてないよな」
その言葉に、俺の表情がわずかに固まった。
週刊誌。
俺たちが最も気をつけなければならない存在。
「もし撮られたら大騒ぎだな」
「相手が誰かによるだろ」
「一般人だったら?」
「特定されそう」
俺は何も言わなかった。
そのとき初めて。
秘密にしている理由を改めて実感した。
麗華を守るためだけじゃない。
俺自身を守るためでもある。
◇◇◇
昼休み。
スマートフォンが震えた。
麗華だった。
『収録終わった!』
続けて、
『お昼食べた?』
俺は周囲を確認する。
誰も画面を見ていない。
『今から』
送信。
すぐに既読。
『ちゃんと食べてね』
『麗華は?』
『マネージャーさんと今から食べる』
そして数秒後。
『今日何時に帰る?』
『いつも通り』
『待ってる♡』
俺は思わず笑いそうになった。
その瞬間。
「誰とLINEしてんの?」
真横から声。
「うわっ!」
慌ててスマートフォンを伏せる。
「何だよ!」
「いや、お前がニヤニヤしてたから」
「してない」
「絶対してた」
「してないって」
「女?」
「違う」
「怪しい!」
心臓が速くなる。
危なかった。
もし画面を見られていたら――。
もっとも、麗華の名前をそのまま登録しているわけではない。
それでも内容を見られれば、彼女がいることは分かる。
「彼女できたんじゃない?」
「いない」
俺は答えた。
胸が少し痛む。
本当はいる。
嘘をつきたいわけではない。
でも今は、これしかない。
「本当に?」
「本当」
「じゃあ今の誰?」
「家族」
「ふーん」
疑っている。
俺はスマートフォンをポケットへしまった。
その直後、もう一度振動した。
絶対に今は見ない。
◇◇◇
午後四時。
授業が終わった。
俺は帰宅するため学校を出た。
電車に乗ってからスマートフォンを見る。
昼休みに届いていた麗華からのメッセージ。
『危なかった?』
どうやら返信が突然途切れたことで察したらしい。
俺は、
『クラスのやつに覗かれそうになった』
と返した。
すぐに返事が来る。
『大丈夫だった!?』
『大丈夫』
『よかった……』
続けて、
『気をつけようね』
俺は、
『麗華もな』
と返した。
俺だけが気をつけても意味がない。
二人で守らなければならない秘密だから。
◇◇◇
夕方五時過ぎ。
「ただいま」
家へ帰る。
返事はない。
麗華はまだ仕事中。
制服を脱ぎ、部屋着に着替える。
冷蔵庫を見る。
麗華からメモが貼ってあった。
『先に帰った人がご飯の準備!』
「マジか……」
昨日、二人で決めたルールだった。
仕方ない。
俺は夕食の準備を始めた。
午後七時二十分。
玄関の鍵が開く。
「ただいまー!」
「おかえり」
麗華がリビングへ入ってくる。
帽子。
マスク。
眼鏡。
外出時の変装姿。
玄関で全部外すと、ようやくいつもの麗華に戻った。
「いい匂い!」
「今日は俺だからな」
「本当に作ってくれたんだ!」
「約束だろ」
麗華が嬉しそうに近づいてくる。
そして――。
「ただいまのキス」
「まず手洗え」
「えー」
「仕事帰りだろ」
「はーい」
素直に洗面所へ向かう。
しばらくして戻ってきた麗華は、俺の前で立ち止まった。
「洗いました」
「はい」
「ということで」
麗華が顔を近づける。
俺も自然に応える。
唇が重なる。
一度。
離れる。
しかし麗華は俺の服を軽くつかんだ。
「今日長かった」
「何が?」
「会えなかった時間」
朝から夜まで。
確かに昨日より遅い。
「寂しかった?」
俺が聞く。
「……ちょっと」
「ちょっと?」
「かなり」
俺は笑った。
麗華の頬へ手を添える。
もう一度、唇を重ねた。
今度は少し長く。
離れても麗華は目を閉じたままだった。
そして再び近づいてくる。
二度。
三度。
何度も。
外ではできない。
学校では俺たちは他人。
仕事場でも俺の存在を話すことはできない。
だから家へ帰ると、離れていた時間を取り戻すように互いの気持ちを確かめる。
「……やっぱり家が一番」
麗華が呟いた。
「仕事嫌なの?」
「違うよ」
麗華は俺を見る。
「ここなら、好きって言っていいから」
その言葉に、俺は何も言えなかった。
代わりに。
もう一度だけ、麗華へキスをした。
◇◇◇
夕食。
「今日ね」
麗華が話し始める。
「スタッフさんに聞かれた」
「何を?」
「彼氏いるの?って」
俺の箸が止まった。
「何て答えた?」
「秘密です、って笑ってごまかした」
「大丈夫だった?」
「うん。雑談だったから」
麗華はそう言ったあと、少し笑った。
「でも変な気分だった」
「どうして?」
「本当はいるもん」
テーブルの下で麗華の足が俺の足へ軽く触れる。
「しかも目の前にいる」
「そうだな」
「一緒に暮らしてるし」
「それも言えないな」
「絶対言えない」
二人で笑う。
「俺も今日聞かれた」
「え?」
「彼女いるのかって」
麗華の表情が変わった。
「何て言ったの?」
「いないって」
「……そっか」
分かっているはずなのに。
少し寂しそうだった。
「悪い」
「謝らなくていいよ」
「でも」
「分かってる」
麗華は笑った。
「それが私たちの約束だから」
少し間を置いて。
「その代わり」
「何?」
「家ではちゃんと彼氏でいて」
「当たり前だろ」
「絶対?」
「絶対」
麗華が嬉しそうに笑う。
「じゃあ許します」
「何様だよ」
「彼女様です」
「はいはい」
「適当!」
いつものやり取り。
それだけで、さっきまでの寂しさが消えていく。
◇◇◇
夜十時半。
二人でソファに座っていた。
麗華は俺の肩にもたれている。
「ねえ」
「ん?」
「もし、いつか公表できるようになったら」
麗華がゆっくり話す。
「普通にデートしたい」
「いいな」
「映画館」
「うん」
「遊園地」
「うん」
「水族館も」
「全部行こう」
「本当に?」
「いつか」
麗華が笑った。
「あと学校の友達にも?」
「卒業して、いろいろ落ち着いたらな」
「どんな反応するかな」
「たぶん信じない」
「私が直接言おうか?」
「余計大騒ぎになる」
「じゃあ――」
麗華が少し悪戯っぽく笑う。
「『いつも彼がお世話になってます』って」
「やめてくれ」
「面白そう」
「絶対面白がってるだろ」
二人で笑った。
だけど。
そんな未来が本当に来ればいい。
俺はそう思った。
今は秘密。
学校では彼女はいないことになっている。
麗華も芸能界では恋人について話さない。
でもこの家だけは違う。
「麗華」
「何?」
「好きだよ」
突然言ったからか、麗華が目を丸くする。
「……急に何?」
「学校では言えないから」
麗華の表情が柔らかくなった。
「私も」
俺のほうへ身体を向ける。
「大好き」
唇が重なる。
一度。
そして、もう一度。
麗華の手が俺の手を握る。
指を絡める。
また唇を重ねる。
何度も何度も。
誰にも見られない場所で。
誰にも聞かれない場所で。
俺たちは恋人でいられる。
◇◇◇
夜十一時半。
寝室。
明かりを消す前。
麗華が俺を見る。
「明日も学校?」
「もちろん」
「私は朝から雑誌の撮影」
「また学校で話題になりそう」
「彼氏として感想よろしくお願いします」
「学校では他人だから」
「家では?」
「彼女」
「正解」
麗華が笑う。
そして俺の隣へ近づいた。
「おやすみ」
「おやすみ」
最後に唇を重ねる。
一度だけのつもりだった。
けれど。
離れた麗華が俺を見て、もう一度。
さらに俺からも。
結局、何度目か分からなくなる。
「……もう寝るぞ」
「うん」
「本当に?」
「最後」
もう一度。
「今度こそ?」
「……あと一回」
「増えてるじゃん」
小さな笑い声が寝室に響いた。
学校では、俺に彼女はいない。
芸能界では、藤宮麗華に彼氏がいることは知られていない。
俺たちが同棲していることを知っているのは、事務所の社長、担当マネージャー、そして互いの両親だけ。
明日になれば。
俺はまた学校で友人たちが麗華について盛り上がる姿を見る。
「藤宮麗華って彼氏いるのかな」
きっと、また誰かが言う。
そのたびに俺は、
「どうだろうな」
と答えるのだろう。
本当の答えを知りながら。
彼氏はいる。
一緒に暮らしている。
毎朝同じ家で目を覚まし。
一緒に朝食を食べ。
夜になれば同じ家へ帰り。
そして二人きりになると、何度も何度もキスを交わす。
俺たちは確かに愛し合っている。
だけど――。
その事実を、今は誰にも言えない。
「おやすみ、彼氏くん」
暗闇の中。
麗華の声が聞こえる。
「おやすみ、麗華」
明日も俺たちは、それぞれの世界へ向かう。
学校では普通の高校生。
芸能界では人気グラビアアイドル。
そして夜になれば――。
誰にも知られていない、ただの恋人同士に戻る。
それが今の俺たちにとって、何より大切な日常だった。
第2話「学校では秘密――『藤宮麗華の彼氏』だなんて言えるわけがない」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は、主人公が学校で抱えている大きな秘密に焦点を当てました。
学校では友人たちが藤宮麗華の出演番組を見て盛り上がり、
「可愛いよな」
「彼氏っていると思う?」
「会えたら写真を撮りたい」
と楽しそうに話しています。
けれど、そのすぐそばにいる主人公だけは、本当の答えを知っています。
藤宮麗華には彼氏がいる。
その彼氏は、自分。
そして二人はすでに一緒に暮らしている――。
しかし、主人公は友人から「彼女いるの?」と聞かれても「いない」と答えるしかありません。
麗華もまた、撮影現場で恋人について聞かれても、本当のことを話すことはできません。
好きな人がいるのに「いない」と言わなければならない。
同じ家へ帰っているのに、外ではまるで別々の人生を送っているように振る舞わなければならない。
それは二人にとって、時には寂しいことでもあります。
だからこそ――。
「家ではちゃんと彼氏でいて」
麗華のその言葉には、彼女の本当の気持ちが詰まっていました。
学校では普通の男子高校生。
芸能界では人気グラビアアイドル。
けれど、二人だけの家へ戻れば、その肩書きは必要ありません。
「ただいま」
「おかえり」
そう言い合い、一緒に夕食を食べ、今日あった出来事を話し、何度も何度もキスを交わして愛情を確かめる。
誰にも知られていなくても、二人は確かに恋人同士です。
今のところ、その秘密を知っているのは事務所の社長、担当マネージャー、そして互いの両親だけ。
しかし麗華の人気は、これからさらに高まっていきます。
テレビ出演が増えれば増えるほど。
雑誌の表紙を飾れば飾るほど。
街で知られる存在になればなるほど。
二人の秘密を守ることも、少しずつ難しくなっていくかもしれません。
それでも今は――。
学校では「彼女はいない」。
芸能界では「彼氏については秘密」。
そして家では、誰よりも愛し合う恋人同士。
そんな二人だけの特別な日常が、静かに続いています。
第1章「藤宮麗華編」。
まだ誰にも知られていない二人の恋が、これからどのように動いていくのか。
次回もよろしくお願いいたします。




