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『俺の彼女はグラビアアイドル』  作者: AQUARIUM【RIKUYA】
第一章 藤宮麗華編
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第1話 誰にも知られない、二人だけの家


第1話「誰にも知られない、二人だけの家」。


第0話では、十八歳の男子高校生である主人公と、二十歳の人気グラビアアイドル・藤宮麗華が、誰にも言えない秘密の恋人同士であることが明らかになりました。


そして今回は、さらに大きな秘密が明かされます。


二人はただ交際しているだけではありません。


実はすでに、一つ屋根の下で同棲生活を送っていました。


この事実を知っているのは、麗華の所属事務所の社長と担当マネージャー、そして主人公と麗華、それぞれの両親だけ。


学校の友人たちはもちろん、芸能界の関係者やファンにも知られていません。


学校へ行けば普通の高校三年生。


仕事へ行けば、多くのファンから憧れられるグラビアアイドル。


けれど二人が帰る場所は同じです。


朝には同じ家からそれぞれの一日へ向かい、夜には「ただいま」「おかえり」と言い合える。


そして、誰にも見られることのない二人だけの家では、何度もキスを交わしながら互いへの想いを確かめ合う――。


世間には絶対に見せることのできない、二人の本当の日常。


第1話では、そんな秘密の同棲生活を描いていきます。



朝六時半。


カーテンの隙間から差し込んだ朝日が、静かな寝室を少しずつ明るくしていく。


俺が目を覚ましたとき、最初に見えたのは見慣れた天井だった。


そして――。


「……おはよう」


すぐ隣から聞こえた声。


顔を向ける。


そこには藤宮麗華がいた。


二十歳。


人気急上昇中のグラビアアイドル。


雑誌の表紙を飾り、テレビ番組にも出演し、街を歩けば広告でその姿を見ることもある。


学校では男子たちが毎日のように、


「麗華ちゃん可愛いよな」


「一度でいいから会ってみたい」


などと話している。


そんな藤宮麗華が今、俺のすぐ隣にいる。


しかも――。


俺たちは、ただ付き合っているだけではなかった。


一緒に暮らしている。


俺と麗華はすでに同棲していた。


「おはよう、麗華」


「うん……」


まだ眠そうな麗華が俺を見る。


仕事中の彼女からは想像できない表情だった。


髪も少し乱れている。


完全に寝起き。


だけど俺にとっては、それも見慣れた麗華の姿だった。


「今日、学校だよね?」


「平日なんだから当然だろ」


「そっか……」


「麗華は?」


「十時から撮影。そのあと事務所で打ち合わせ」


「また忙しいな」


「最近ずっとこんな感じ」


そう言いながら、麗華が少し近づいてくる。


俺たちの距離がなくなる。


「でも……」


「ん?」


「朝はまだ、彼女でいていいでしょ?」


「いつでも彼女だろ」


「そういう意味じゃないの」


麗華は少し頬を膨らませた。


俺は笑う。


そして麗華の頬へ手を添えた。


麗華がゆっくり目を閉じる。


俺たちはキスをした。


一度。


唇が離れる。


麗華が俺を見る。


そして今度は、麗華のほうから唇を重ねてきた。


「ん……」


もう一度。


そして、また一度。


朝の静かな寝室で、俺たちは何度も何度もキスを交わした。


急ぐ必要なんてなかった。


誰かに見られる心配もない。


ここは俺たち二人の家だから。


少し離れては顔を見合わせ、また自然と唇を重ねる。


長く唇を重ねたあと、麗華が俺の胸元へ顔を寄せた。


「……学校行ってほしくなくなる」


「それは困る」


「今日は休んじゃう?」


「ダメ」


「即答なんだ」


「高校三年生だからな」


「分かってます」


そう言いながらも、麗華は離れない。


「麗華だって仕事あるだろ」


「あるけど……」


「撮影遅刻するぞ」


「まだ大丈夫」


そしてまた麗華が顔を上げる。


「もう一回」


「何回目だよ」


「数えてない」


「俺も」


「じゃあいいじゃん」


再び唇が重なった。


何度繰り返しても、不思議と飽きることはない。


学校では絶対に見せられない。


撮影現場でも当然できない。


街中でも俺たちは簡単には恋人として振る舞えない。


だからこそ、この家にいる時間だけは何も隠さない。


俺たちは何度もキスをして、互いの気持ちを確かめ合っていた。


◇◇◇


実は俺と麗華が同棲していることを知っている人間は、本当に少ない。


麗華の所属事務所の社長。


麗華の担当マネージャー。


俺の両親。


そして麗華の両親。


――それだけ。


学校の教師も知らない。


クラスメイトも知らない。


俺の友人たちも知らない。


麗華と一緒に仕事をしている芸能人たちにも知られていない。


当然、ファンにも公表されていない。


事務所の中ですら、ほとんどの社員は知らないという徹底ぶりだった。


付き合い始めてから、俺たちは互いの両親へきちんと話をした。


そして麗華も所属事務所の社長と担当マネージャーへ、自分の口から俺との関係を説明した。


最初は当然驚かれたらしい。


人気が上昇しているグラビアアイドルに恋人がいる。


しかも相手は十八歳の高校三年生。


さらに二人は一緒に暮らしたいと考えている。


簡単に認めてもらえる話ではなかった。


何度も話し合った。


俺も麗華の両親と向き合った。


麗華も俺の両親と話をした。


そのうえで、いくつもの約束をした。


麗華の仕事を邪魔しないこと。


俺自身も高校生活を疎かにしないこと。


外では細心の注意を払うこと。


そして何か問題が起きた場合は、勝手に判断せず、必ず事務所へ相談すること。


そうしてようやく認めてもらった。


今、俺たちが暮らしているこのマンションも、事務所側が安全面を確認している。


だから俺たちにとって、ここは唯一と言っていいほど安心して恋人でいられる場所だった。


◇◇◇


「朝ご飯できたよー」


麗華の声が聞こえる。


制服に着替えた俺がリビングへ行くと、テーブルには朝食が並んでいた。


「早いな」


「今日は簡単なものだけ」


「十分だよ」


向かい合って座る。


「いただきます」


「いただきます」


テレビでは朝の情報番組が流れている。


天気予報。


ニュース。


スポーツ。


そして芸能コーナー。


『続いては、今注目のグラビアアイドル・藤宮麗華さんの話題です』


「……」


俺は箸を止めた。


麗華も止まった。


二人でテレビを見る。


画面いっぱいに麗華の写真が映し出された。


『現在二十歳の藤宮麗華さん。グラビアだけでなく、バラエティや俳優業など活躍の幅を広げています』


俺は隣を見る。


テレビにも藤宮麗華。


目の前にも藤宮麗華。


「すごい状況だな」


「何が?」


「テレビに出てる本人と朝飯食ってる」


「毎回言わなくていいから」


「学校のやつが見たら倒れると思う」


「そんなに?」


「昨日だって麗華の雑誌で大騒ぎだった」


「ふふっ」


麗華が嬉しそうに笑う。


「でも誰も知らないんだよね」


「何を?」


麗華が俺を指差す。


「藤宮麗華の彼氏が、今ここで一緒に朝ご飯食べてること」


「それどころか一緒に暮らしてるからな」


「そうなんだよね」


麗華は少しだけ声を落とした。


「秘密の同棲生活」


「言い方が怪しい」


「だって本当でしょ?」


確かに本当だった。


テレビの中では華やかな笑顔を見せている麗華。


その本人は今、部屋着姿で俺の目の前に座っている。


テレビの麗華が笑う。


目の前の麗華も笑う。


俺は思わず言った。


「俺はこっちの麗華のほうが好きだな」


「え?」


「テレビじゃなくて、今ここにいる麗華」


一瞬。


麗華の動きが止まった。


そして頬が赤くなる。


「朝からそういうこと言う?」


「思っただけ」


「……ずるい」


「何が?」


麗華は椅子から立った。


俺の横まで来る。


「麗華?」


俺の頬へ両手を添える。


「そういうこと言った罰」


「罰?」


次の瞬間。


唇が重なった。


「ん……」


一度。


そして、もう一度。


「朝飯冷めるぞ」


「もう一回」


「さっき寝室でも何回もしただろ」


「それはそれ。これはこれ」


「何が違うんだよ」


「場所」


「そこ?」


麗華が笑う。


そしてまたキス。


今度は少し長い。


俺も麗華の背中へ腕を回した。


俺たちは何度も愛情を確かめ合うように唇を重ねた。


テレビでは芸能人としての藤宮麗華が紹介され続けている。


その目の前で。


本人は高校生の彼氏と何度もキスをしている。


もし学校の男子たちがこの光景を見たら、間違いなく大騒ぎになるだろう。


でも誰も知らない。


俺たちだけの朝だった。


◇◇◇


午前七時四十分。


「行ってきます」


俺は玄関で靴を履いた。


「待って」


麗華が小走りでやってくる。


「忘れ物?」


「違う」


俺の制服の襟を軽く整える。


「曲がってる」


「ありがとう」


「あと」


「まだ何かある?」


麗華が少し背伸びする。


俺も何を求めているのか分かっていた。


だから顔を近づける。


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」


短いキス。


そのまま行こうとすると――。


「待って」


「今しただろ?」


「短かった」


「時間ないんだけど」


「じゃあ十秒」


「十秒?」


「うん」


結局。


またキス。


唇が離れると麗華は満足そうだった。


「これでよし」


「本当に?」


「……あと一回」


「増えてるじゃん」


「最後!」


もう一度だけキスをする。


「これで本当に行ってらっしゃい」


「はいはい」


俺は玄関を出た。


扉が閉まる。


その瞬間から、俺は普通の高校三年生へ戻る。


そして数時間後。


麗華もこの家を出れば、人気グラビアアイドル・藤宮麗華へ戻る。


家の中と外。


二つの世界を行き来する。


それが俺たちの日常だった。


◇◇◇


学校へ着く。


教室へ入った瞬間だった。


「おっ、来た来た!」


「何?」


「昨日の番組見た?」


嫌な予感がする。


「何の?」


「藤宮麗華!」


やっぱり。


「今日の朝もテレビ出てたぞ」


「見た」


「マジで最近すげえよな」


俺は鞄を机へ置く。


「お前、麗華ちゃんみたいな彼女ほしくない?」


「……どうだろうな」


「またそれかよ!」


周囲が笑う。


俺も適当に笑っておく。


まさか言えるわけがない。


欲しいも何も。


もう彼女だ。


しかも今朝まで同じ家にいた。


一緒に朝食を食べた。


そして家を出る直前まで何度もキスをしていた。


そんなことを言えば、教室中がひっくり返る。


「藤宮麗華って、どんな男がタイプなんだろうな」


誰かが言った。


俺は心の中で答える。


――少なくとも、今の彼氏は俺だ。


そのとき。


ポケットの中でスマートフォンが震えた。


確認する。


麗華からだった。


『私も今から仕事行ってきます!』


そして続けて。


『朝からいっぱいキスできたから今日も頑張れそう♡』


俺は慌てて画面を閉じた。


危なすぎる。


「どうした?」


「何でもない」


「顔赤くない?」


「気のせい」


絶対に見せられない。


◇◇◇


夜。


「ただいま」


俺が玄関を開ける。


今日は俺のほうが先だった。


麗華はまだ仕事。


リビングへ入り、制服から部屋着へ着替える。


しばらくして。


午後八時過ぎ。


玄関の鍵が開いた。


「ただいまー……」


疲れ切った声。


俺は玄関へ向かった。


「おかえり」


「……ただいま」


帽子とマスクを外した麗華は、明らかに疲れていた。


「大丈夫?」


「今日ずっと撮影だった……」


「お疲れ」


「疲れた」


「とりあえず座れば?」


「その前に」


麗華が俺を見る。


「充電」


「スマホ?」


「違う」


麗華が近づいてくる。


俺は笑った。


「分かったよ」


麗華の頬へ手を添える。


そしてキス。


一度。


「もう一回」


二度。


「まだ」


三度。


「麗華」


「何?」


「今日何回目だと思ってる?」


「知らない」


「俺も分からなくなった」


「じゃあ数えなくていいじゃん」


またキス。


麗華が小さく笑った。


「……回復した」


「本当に?」


「半分くらい」


「じゃあ飯食ったら残り半分だな」


「残りは?」


「知らない」


「私は知ってる」


麗華が嬉しそうに俺を見る。


「またいっぱいキスする」


「結局それか」


「だって好きなんだもん」


俺は何も言い返せなくなった。


◇◇◇


夜十一時。


一日の終わり。


二人でソファに並んで座っていた。


麗華は俺の肩にもたれている。


「明日は?」


俺が聞く。


「午前中から収録」


「帰りは?」


「たぶん九時くらい」


「遅いな」


「先にご飯食べてていいよ」


「待ってる」


「本当に?」


「一緒に食べたいから」


麗華が顔を上げる。


「……好き」


「急だな」


「今思ったから」


そして自然に唇が重なる。


一度では終わらない。


何度も。


何度も。


仕事で離れていた時間を埋めるように。


朝から何回キスしたのか、もう本当に分からない。


でも回数なんてどうでもよかった。


俺たちは、こうして毎日愛情を伝え合っている。


外ではできないことだから。


やがて麗華が俺の肩へ頭を預けた。


「ねえ」


「ん?」


「いつまで秘密なのかな」


その言葉だけは、少し寂しそうだった。


俺はすぐには答えられなかった。


学校では誰も知らない。


芸能界でもほとんど知られていない。


知っているのは事務所の社長。


担当マネージャー。


俺の両親。


麗華の両親。


たったそれだけ。


「今は仕方ないよ」


「うん。分かってる」


「俺が高校生なのもあるし」


「うん」


「麗華の仕事も大事だし」


「分かってるよ」


麗華は少し黙った。


「でも、この家では秘密にしなくていいよね」


「当たり前だろ」


「ここでは普通の彼女でいていい?」


「最初からそうだよ」


俺は麗華を見る。


「俺にとっては、人気グラビアアイドルより先に、彼女だから」


「……またそういうこと言う」


麗華の顔が近づく。


俺たちは再びキスをした。


誰にも見られない家。


誰にも知られていない同棲生活。


明日の朝になれば、俺は高校生として学校へ行く。


麗華はグラビアアイドルとして仕事へ行く。


学校では友人たちが、きっとまた藤宮麗華の話をする。


雑誌を見ながら。


テレビを見ながら。


スマートフォンの画面を見ながら。


「可愛い」


「会ってみたい」


「彼氏っているのかな」


そんな話をするのだろう。


俺はこれからも、知らないふりをする。


藤宮麗華のことを。


彼女の本当の笑顔を。


彼女の寝起きの顔を。


彼女が仕事から帰ると「ただいま」と言うことを。


朝には「行ってらっしゃい」と送り出してくれることを。


そして――。


二人きりになれば、何度も何度もキスを交わすほど愛し合っていることを。


誰にも言わない。


それが俺たちの約束だから。


だけど、この家の扉が閉まった瞬間だけは違う。


人気グラビアアイドルと男子高校生ではない。


藤宮麗華と、その恋人。


ただそれだけでいい。


「おやすみ」


麗華が微笑む。


「おやすみ、麗華」


最後にもう一度。


静かに唇を重ねる。


俺たちの秘密の同棲生活は――。


今日も、誰にも知られることなく続いていた。



第1話「誰にも知られない、二人だけの家」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は主人公と藤宮麗華が、実はすでに同棲しているという二人の大きな秘密を中心に描きました。


朝、目を覚ませば隣には麗華がいる。


一緒に朝食を食べ、主人公は学校へ、麗華は撮影や収録へ向かう。


そして一日の終わりには、同じ家へ帰ってくる。


外では決して堂々と恋人として振る舞うことのできない二人だからこそ、この家の中で過ごす時間は特別なものになっています。


朝起きたとき。


学校へ送り出すとき。


仕事から帰ってきたとき。


そして一日の終わり。


何度も何度もキスを交わし、言葉だけではなく行動でも互いへの愛情を確かめ合う二人。


主人公にとって藤宮麗華は、雑誌の表紙を飾る有名人である前に、大切な一人の恋人です。


そして麗華にとって主人公は、芸能人としてではなく「藤宮麗華」という一人の女性として向き合ってくれる大切な存在。


学校では今日も、


「藤宮麗華って可愛いよな」


「彼氏っているのかな?」


そんな会話が繰り広げられています。


しかし、その答えを知っている主人公は何も言いません。


彼氏はいる。


しかも、その彼氏と藤宮麗華はすでに一緒に暮らしている。


そんな事実を知っているのは、事務所の社長、担当マネージャー、そして互いの両親だけです。


今のところ、二人の秘密は守られています。


けれど麗華の人気は日に日に高まり、仕事も増え続けています。


注目される機会が増えれば、それだけ私生活にも視線が向けられるようになります。


学校と芸能界。


まったく違う二つの世界の間で続いていく、二人の秘密の恋。


「いつまで秘密なのかな」


麗華が口にしたその言葉が、これから二人にどのような出来事をもたらしていくのか。


それでも家の扉を閉めれば、二人はただの恋人同士。


第1章「藤宮麗華編」。


二人だけの秘密の同棲生活は、まだ始まったばかりです。


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