その67 事故
昭和◯◯年◯月◯日
なにやら、村が騒がしい。
早速、オカンが聞き込みに行く。
だいたい、村のスピーカー役みたいな人のところに情報が集まってくるのだが、どうでもいい個人情報まで集めるのは勘弁してほしい。
あそこの息子さんが、どこそこの学校に行ったとか、あそこが新しい車を買ったとか――どうでもええやん(笑)
まぁ、娯楽もなく、ネットもない時代、こういう奥様井戸端会議ネットワークが、大事な情報網だったから、致し方ないところではある。
それはさておき、どうやら人死が出たらしい。
死因は凍死。
村でも有名な呑兵衛のオッサンが、自分の家でない所で、玄関じゃないのに靴を脱ぎ、トイレじゃないのに小便をして、布団のないところで寝て――凍死したらしい。
「……」
オッサンには、みよりがないので、町内会で葬儀をすることに。
みな何も言わないが、「あ~」という感じだろう。
そのオッサンは、大型の免許を取るのにも、赤い顔をして「景気つけに一杯ひっかけてきたで、ガハハ」みたいなオッサンだったので、言わずもがな。
それにしても、こんな死に方をするなんて。
当時は、飲酒運転も、あたり前田のクラッカー。
普通に行われていたし、事故も多かった。
母方の2番目の叔父(オカンの弟)も、飲酒運転で事故った。
オラが村の入る道が整備されて、1直線になったのだが、入る手前でちょっと曲がっている。
叔父は、飲酒運転でそこをまっすぐにダイブしてしまったのだ。
シートベルトなんてしてない時代だったので、フロントガラスに突っ込み、顔はグチャグチャ。
100針以上縫って、フランケンシュタインみたいな顔になってた。
この叔父さん、今の言うところの、ヲタクのニート。
やっと働き出したと思ったら、事故で大怪我。
さすがの祖母も頭を抱えていた。
漫画好きだけど、コミックスは持ってなくて、雑誌の漫画オンリー。
アニメは見ないが、プラモ好き。
駆逐艦や、ドイツの対空砲のプラモを作っていた。
城や、屋台のプラモなんて、変わり種もあり。
ニチモの、超巨大戦艦ヤマトも作って自慢していた。
確か1万円ぐらいしてたはず。
当時の1万円は今の2万~3万円ぐらい?
塗装すると言ってたが、結局そのまま。
実家の棚の上で、ずっとホコリをかぶっていたのだが、奥尻島沖の大地震で、落下してバラバラに。
そのまま捨てられてしまった。
そんな叔父だったが、俺が札幌に引っ越してしまったので、疎遠になり、しばらくして――。
突然、田舎の親戚から電話あり。
どうやら、叔父が事故ったらしい。
「またかよ……」と、思いつつも、オカンは働きに出て留守。
親父は、出張でいない。
夜になって、オカンが帰ってきたので、電話のことを告げた。
すぐにオカンが田舎に電話をかけたのだが、電話口で口論してたと思ったら、その場に泣き崩れた。
事故った叔父が死んだらしい。
それは受け入れなければならないのだが、さて――困った。
急遽田舎に帰らなければならないのだが、その日は金曜日。
もう夜で、銀行も開いていない。
コンビニのATMなんてない時代。
オカンだけ帰るにしても、田舎に帰るだけの金がないのだ。
やむを得ず、たいして親しくもない隣近所に頭を下げて、なんとか金を借りる。
オカンだけ田舎に帰ることになった。
俺と弟はふたりで留守番だ。
――と、オカンが出かける準備をしていると。
なんの前触れもなしに、親父が突然帰ってきた。
事前の電話もなし。
マジで突然。
なにやら、突然仕事が打ち切られて、帰ることになったらしい。
親父に事情を説明して、金を借りた隣に謝罪して金を返し、急遽一家四人で田舎に帰ることになった。
田舎に帰って、どういうことか解った。
叔父はホテルの建設現場で働いていたのだが、屋上のクレーンが、土台ごと落下したらしい。
全国ニュースになるぐらいの大事故だったよ。
まぁ、当然即死やな。
どうやら、つき合っていた内縁の女性がいたらしく、その人も来てて揉めてたなぁ……。




