その65 モー◯
昭和◯◯年◯月◯日
「すげー!」
TVに映るロボットのオモチャ。
歩き回りミサイルを発射して、ビームも撃って大爆発。
昭和のオモチャのCMは、過剰な演出が入りがちだった。
そんなCMを観ていた俺の前にあいつが流れた。
オレンジ色のふさふさとした生き物は、まるで意思を持っているかのよう。
お目々はくりくり。
柔らかな毛束がゆっくりと揺れたかと思うと、次の瞬間には外人の腕へするりと巻き付き、細い指先へと這うように移動していく。
俺は思わずTVに釘付けになった。
「すげー! さすがアメリカッ! 俺たちにはできないことを平気でやってのけるッ! そこに痺れる、憧れるうッ!」
とは、言わなかったが、マジですげー! と思った。
早速、親が港町にパチをしにいくというので、一緒についていくことに。
退屈なパチ屋で時間を潰し、帰り際に港町のデパートに行く。
デパートと言っても、4階建ての小さなデパートで、最終的には火事によって廃業してしまった。
最後には、燃え残ったものを捨て値で売り出して、哀愁を誘ってたね。
燃えていなくても、煙で炙られたせいか、みんな商品は煙くさくなっていた。
そんなことより、オレンジ色のふさふさだ。
カウンターには、子どもが沢山ならんで押し合いへし合い、そのオモチャを買っていた。
意外と値段は安い。
確か300円か、400円だったはず。
あらためてぐぐってみると、定価380円だった。
今だと、980円――といったところか。
どうやら400円前後で今も復刻されているらしい。
お金を払って商品を受け取ると、透明なパッケの中に、オレンジ色のふさふさが丸まっていた。
「やった!」
車の中で、「開けるのは家に帰ってからにしろよ」
と、言われて大人しくしていた。
家に飛び込むと、早速パッケを開ける。
「イケー!」
開けたが、オレンジ色のふさふさはまったく動かない。
持ち上げると、紐がついていた。
説明書を読む……。
紐を引っ張って遊ぶものらしい……。
そりゃ、そうだ。
オモチャが、生き物みたいに動くはずがない。
「よくもだましたアアアア!! だましてくれたアアアアア!!」
「よくもぼくをォ!! だましたなァ!!」
マジで、トラウマになるぐらいショックだったね。
今でも、あの当時のことははっきりとおぼえてるぐらいにショックだった(笑)
もう夢に見るぐらいに。
まぁ、そういうことが度々あって、オモチャのCMにもクレームが殺到したのだろう。
CMが流れる度に「ロボットは動きません」「ミサイルは発射しません」「ビームはでません」
――などという、テロップが入るようになった。
「JAROってなんじゃろ。ウソ、大げさ、紛らわしい、公告の苦情、お問い合わせはこちらに!」
というJAROのCMが流れ始めたのも、この頃から。
もう、ひどいCMが多かったからなぁ。
ウソ言って買わせるのはアカンよ。
詐欺と変わらんし。
ざけんなよ、マジで(笑)




