その62 ミグ
昭和◯◯年◯月◯日
オラが村に爆音が響く。
姿は見えないが、どうやらジェット戦闘機の音らしい。
かなり低く飛んでいるように思えた。
しばらくすると、TVから臨時ニュースが流れる。
街の空港にソ連のミグ25が着陸したという。
「さっきのか?! なんで?!」
すわ、戦争か?! なんて思ってしまうが、どうやらそうでもないらしい。
望遠でTV生中継もしてた気がするが、よく解らない。
空港近くの高校のミリオタ生徒が、上空を飛ぶ飛行機がミグ25だとすぐに気づいたらしく、授業サボって見にいったなんて話もある。
当時のミグ25に似ている飛行機といえば、米軍のF15イーグルなのだが、イーグルはまだ実戦配備されていない。
それで気づいたらしい。
オラが村でも、ちょっとした騒ぎになって、「見物に行くか?!」みたいなやつも現れたのだが――。
街に行くには峠を越えないと駄目。
当時の峠は、まだ整備されておらず、切り立った崖を崩して道を作り、道路も舗装されていない。
事故が多発して、棺桶街道と呼ばれていた。
峠を越えるのが大変なので、実際に野次馬しに行った人は少なかったと思われる。
どうせ行っても、交通規制で空港には近づけないだろうし。
実際、行った人がいたのかは、記憶にない。
特段面白い話がなかったせいだと思われる。
一般市民は興味津々なだけだろうが、自衛隊の幹部たちは、腹切る覚悟で実弾を配ったなんて話もあった。
そりゃ、自分たちの一挙一動がもとで、戦争になるかもしれんし。
まぁ、ミグに乗ってたパイロットが亡命しただけで終了したが。
戦闘機の燃料もほぼ空だったみたいやね~。
それゆえ、強行着陸したみたい。
ミグはすぐに回収されて、アメリカに送られた。
ソ連の秘密兵器だと言われてたミグだったが、調査したアメリカは驚いただろう。
外板は凸凹で、普通にリベットで止められたボロ。
有名なのは、ミグに真空管が使われてたってやつだが――これは、高出力レーダーの送信に真空管を使うのは、別に変じゃない。
敵が来たら、一直線に迎撃に上がって、ミサイルを撃つだけ――これがミグ25の仕事。
要はレーダーも30分保てばいいわけで……。
ここらへんの割り切りがソ連らしい。
宇宙に行くために、アメリカは無重力状態でも使えるボールペンを開発した。
一方ソ連は鉛筆を使った
――みたいなジョークもある。
改めて、当時のミグの飛行ルートをググって見ると、確かにオラが村上空を飛んでいた。
ただ、レーダーから逃れていたのか、正確な航路は解っていないらしい。
まぁ、まっすぐにしか飛べない戦闘機だし、燃料も残っていなかったみたいなので、余計な回り道はしていないと考えるのが妥当だろう。
突然、オラが村にもやって来た大事件だったが、まったく影響はなかったな~。




