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昭和の話  作者: 朝倉一二三


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51/55

その51 ドレミ号


 昭和◯◯年◯月◯日


「ヒャッハー!」

 俺は今、自由への道へと解き放たれた。


 胸を締めつけていた鎖が音もなく断ち切られたような解放感が、全身を駆け巡る。

 目の前には一直線の村のメインストリート。

 頬を打つ風は冷たいはずなのに、それさえ心地よく感じ、遥か先には誰にも縛られない未来が待っている。


 ペダルを踏み込むたびに、太腿の筋肉が力強く収縮し、その力はクランクを回し、車輪へと余すことなく伝わっていく。

 高速で回転するタイヤはアスファルトをしっかりと噛み、地面を後方へ蹴り飛ばすように前へ前へと進んでいった。


 速度が上がるにつれ、景色は流れる帯となり、風は轟音へと変わる。

 それでも脚は止まらない。

 いや、止める気など微塵もなかった。


 誰にも追いつけない。誰にも止められない。

 俺は自由を得たのだ。


 ――と、なにかすごいことをしたように書いているが、自転車に乗れるようになっただけである(笑)

 数日前まで、俺の自転車には補助輪がついていたのだが、それがなくなったのだ。


 それは、三輪車から始まった。

 小さな俺の身体には鉄の乗り物は大きく感じたが、日々大きくなっていく身体はすぐに三輪車を追い越した。


 三輪車をひっくり返して、手でペダルをグルグルと回して遊ぶ。

 そんな俺の元に、次の自転車がやって来た。


 フロントに輝く、仮面ライダーのお面と、赤色灯?

 ブリジストンの仮面ライダードレミ号である。

 もちろん、小さな俺には補助輪つき。


 もちろん、嬉しかったね~。


 はしゃいで、しばらくそのまま乗っていたのだが、すぐに不満が出る。

 補助輪のせいで、スピードが遅い。

 コーナーリングで倒れそうになる。

 ガラガラと煩い。


 すでに、補助輪なしで乗っている子もいる。

 一大決心した俺は、親父に補助輪を外してくれと頼んだ。


「それじゃ、片方だけな」

 いきなり両方の補助輪を取るのは危険だと思ったのか、左側だけ補助輪が外された。

 今思うと、あまり意味はなかった気がする。


 そのまましばらく乗っていたのだが、やっぱり補助輪が煩わしい。

 親父に残った補助輪も外してもらい、自転車の練習をする。


 当然コケまくった。

 親父に後ろから手伝ってもらったりしたのだが、補助輪なしで上手く乗れなかったのだ。

 泣いて、その日はそのまま終了。


 ――そして次の日。

 親父は仕事でいない。

 小屋から自転車を出すと、俺は一人でペダルに脚をかけて、踏み込んだ。


「やった!」

 昨日の連続転倒がウソのように、俺は補助輪なしで走り始めたのだ。

 本当にあっさり成功した。

 昨日との違いがどこにあるのか解らない。


 うれしさのあまり、そのままメインストリートに飛び出し、祖母の家まで行ってしまう。

 祖母に、補助輪なしでやって来たことを自慢げに話したのだが、彼女はニコニコしているだけ。

 まぁ、子どもの俺には偉業だったが、大人には日常だからなぁ(笑)


 そんなわけで、この仮面ライダードレミ号とのつき合いはしばらく続いた。

 村でも同じドレミ号が結構走っていたため、間違って他のガキに持っていかれる事件もあったり。


 やっぱり、名前をかかないと駄目よね(笑)



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― 新着の感想 ―
うらやましい。友達の自転車を借りて自転車を覚え。母親の大きい自転車を三角乗りで乗ってか川に頭から落ちたり、電電公社の鉄の扉に額を打ち付けたりして血みどろの姿を見て、やっと自転車を買ってもらったのは、小…
補助輪の片側外すと、外してない方に重心を傾けることを覚えるので効果がある、と私は思います。私も、前日まで乗れなかった自転車に乗れる瞬間が突然やってきたので不思議でした。 そのあとは、うちの爺さんが自転…
ドレミ号を買ってもらえるのは中流以上・・・ 普通のチャリでした ちょっと桜色っぽいの あれ?二人の姉はマイ自転車もってたっけ???長男特権だった??
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