その29 冷たい川
昭和◯◯年◯月◯日
昭和40年半ばまで、道路は全部砂利道だった。
村のメインストリートも、砂利道。
下水はなくて、地下浸透。
それが舗装されて、コンクリート製の排水溝ができた。
まぁ、排水溝ができたといっても、下水処理のシステムがあるわけじゃないので、結局は川へ垂れ流しているわけだが。
そんなわけで、川には生活排水が流れ込み、大腸菌の濃度も上昇。
川で泳いだりはできなかったのだが、村から離れたりすれば、なんとか泳げた。
一応、学校が水質検査した結果、ここなら泳いでもいいよ――ってお墨付きをもらっていたわけだ。
家がない山の上流へいけば確実なのだが、熊はいるし、流れは急だし。
水は冷たいので、数分入ったら唇が紫色。
そんな上流の河原へ、炊事遠足に行く。
炊事遠足ってのは、文字通り炊事遠足だ。
リアカーに炊事の材料や道具を山積みにして、遠足して、目的地で炊事をして、皆で食う。
リアカー必須なので、グループ分けも、リアカーがある家が中心になって行われる。
重たいリアカーを交互に引っ張り押して、ニホンザリガニを獲った沢を横目に真っ暗な林道を進む。
今じゃその道もほとんど使われてないので、草ボーボー。
その前に熊がいるしな。
作る料理はカレーが基本――というか、カレーぐらいしか作れない。
当然、飯も現地で炊く。
昭和の時代だから、「料理は女の子」という、話になるのだが、料理ができる女の子なんておらず、いつもカレーっぽいなにかができあがる。
ご飯は焦げ焦げ、米も皆で持ち合っているから、種類がバラバラ。
目の前には、具材が鍋から溢れそうになってるカレー。
まぁ、それでも、しっかりと煮えていれば食えないこともない。
半煮えのじゃがいもや、ご飯に芯が残ったりしているのも愛嬌。
みんなで重たいものを運んで、ワイワイするのが、中々楽しかった思ひで。
そこは泳げる場所だったので、男子は海パンで泳いでいた。
もちろん、水が冷たく、数分でガクブル。
今でも炊事遠足ってあるのかな~?
ないよな~。
そもそも、都会じゃこんな遠足無理やし~。
昭和◯◯年◯月◯日
ある日、突然イカダブームが来る。
上級生たちが、川の流木をつなぎ合わせてイカダを作ったのだ。
それを見て、他の子たちも火がついたのだろう。
家から、釘やら道具を持ってきて、次々と流木をつなぎ合わせる。
デカい流木だけで、漕ぎ出す上級生もいた。
当然、ライフジャケットもなく、落ちたらそのままドボンだが、やっていたのは泳ぎに自身がある上級生ばかり。
俺もやりたかったが、まだ小さかったので、羨ましく見てるだけ。
中には、そのままとんでもない下流まで行ってしまった上級生もいて、大騒ぎに。
そりゃ、次の集落がある場所までは距離があるし、その間の区間は原生林と原っぱで人家もなにもない。
道路もないから這い上がることもできない、マジな原生区間。
出発地点となった堰堤から下流は、なにも障害物がないので、理論上はそのまま海まで行けるのだが(笑)
当然、学校にもバレ、イカダ遊びは厳重注意の上、禁止。
なにか子どもの間で流行ると、すぐに学校から禁止ってのはパターンだったな。
まぁ、そんなの守るガキもいないんだが、イカダはマジで危ないってことで、そのあとは誰もやらなかったな~。
マジで騒ぎになったし。




