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昭和の話  作者: 朝倉一二三


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25/52

その25 もういくつ寝ると


 昭和◯◯年◯月◯日


 ――師走の末。

 正月が近づいてくると、大掃除が始まる。

 掃除はもちろん、タンスなどを全部動かして隠れていた部分まで綺麗にすると、畳も持ち上げて、外でバンバンする。

 北海道の冬なので、雪が積もっているのだが、やる。

 もちろん、晴れている日を狙ってやるので、だいたい大掃除の日は他の家とも被っていた。


 みんなやっているので、ウチもやらないと――みたいな同調圧力みたいなもの。


 次は餅つきだ。

 母方の実家に集まると、巨大な蒸し器で、もち米を炊く。

 そいつを土間に置いた木臼の中にぶち込むわけだ。

 小学低学年までは、人力で餅を搗いていたが、そのうち餅つき機が売りに出されて、実家でも買った。


 まぁ、絶対に使うものだから――という感じだったのだろう。

 実家の場所は引っ越してしまったが、小屋の屋根裏には、まだ餅つき機がある。

 もう半世紀使ったことがないが。

 多分、もう使うことはないだろうとは思う。


 人力と機械の違いは、解る。

 杵と臼のほうが、米のつぶつぶが残ってるのだ。

 どちらが美味いかと言えば、そんなに違いはないように思える。


「やっぱり杵と臼のほうが美味いな」と、いう話はよく出たのだが、なにしろ手間がかかって大変なのだ。

 母方の実家は兄弟姉妹が少なかったので、3家庭分ぐらいの餅つきだったが、農家など親戚が多いところは、戦場みたいな感じ。

 そりゃ、餅つき機を使って楽なほうがいいだろう。


 つき上がった餅は、足を畳んだテーブルの上に置かれて、伸ばされてのし餅にされる。

 あるいは、丸く平らにされて、鏡餅になった。


 とりあえず、つきたての餅は美味い。

 なにもつけずに、パクパクと食べる。


 餅つきが終わると、親父が縄を結って、しめ縄を作り始めた。

 うろ覚えだが、切った半紙と、昆布、煮干しなどを括りつけていた気がする。

 実家は市販のものを使っていたのだが、ウチは親父の手製を使っていた。


 しめ縄は車にもつける。

 鏡餅を車に乗せる家もあった。

 ミカンもしめ縄につけたのだが、いつのまにか落ちてなくなっていたな~。


 そうやって苦労して作った大量の餅を、冬の間、ずっと食う。

 1月が終わるころには、徐々に餅に青カビが広がり始める。


 それでも、お湯で洗ったり、削ぎ落として食べていた。

 硬くなった鏡餅は、トンカチで割って、油で上げて食べる。

 オカキみたいになって中々美味かった。


 そんな感じで苦労して餅つきをしていたのだが、小学校に通っている間に、あまり餅を食べなくなってしまった。

 TVもCMでも、サトウの切り餅が流れ始める。


 最初は、「こんなの買うやつがいるのか?」と、みんな半信半疑だったのだが、意外と需要があったのだろう。

 そのうち「あんまり餅って食べないから、少量なら買ったほうがいいんじゃね?」みたいな感じになった。

 プラスティックでコーティングされた鏡餅は、カビも生えないし。

 正月に、雑煮が食えるぐらいでいいんだ。

 1月の終わりには、もうみんな餅に飽きてたし。


 そんな感じで、餅つきをする家も減ってしまい、大掛かりな大掃除をする家もあまり見なくなってしまった。

 小学1年~6年の間に、昭和の風習もガラリと変わってしまったのだ。



  

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― 新着の感想 ―
子供の頃のパンや餅には青カビがつくのが当たり前で、そこだけむしって食べてましたね ヤマザ○のランチパックにはカビが生えないという噂を検証するのに 真夏に買ってきたランチパックを開封して 1ヶ月放置した…
お袋が 結構頑張って年老いてからも餅つき器を使ってましたが なくなった後親戚が借りに来てそれっきり返そうか?とも聞かないし お礼に餅を持ってくると言うことも一度だけw
祖父祖母が生きていた時は餅つきしていましたね。餅つき機でから仕上げで臼でついていましたよ。
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