34. トップステルス
俺はこれから入学式に参加するからブレザーを汚す訳にはいかない
ブレザーを脱いでネクタイを外す。夏服のような格好
スキャナが入ったケースを背負い、特殊なクローズフィンガーの手袋をつける
暗視ゴーグルを首から下げて、これで準備は完了
「よっと……」
机の上に立って学習準備室の天井にある四角い板を上に押し上げる
そこは狭いダクトになっている
かつて裁凪先輩が通った道だ
指紋を残さないようにクローズフィンガーの手袋で周辺に触る
問題なく動けそうだ
「それじゃ、静道先輩、いってきます」
「あぁ、健闘を祈る」
手に力を込めてダクトの中に入る
「通信機無しは厳しいよな……」
ミッションインポッシブルでも仲間がいたし、通信機もつかっていた
単独で潜入するのはゲーム等ではありがちだが、現実で行なうのには厳し過ぎる
「暗視ゴーグル装着……っと」
普通のゴーグルのようにつけると視界が緑色を帯び、暗いダクトの中も真昼の様に問題なく見えるようになる
ちなみにこのゴーグルは長時間保つ結構良いバッテリーで動く、最大で8時間連続使用が可能になっている
確か葉城が玩具屋で安っぽい玩具を買って来て、改造したんだよな……
そんな事を考えつつダクトを進む
時折物音が聞こえて止まったりしながら動いていると、行き先が無くなった
フロアの端に辿り着いたのだ
そしてその横には下へと続くダクトが続いている
学習準備室があるのは4階、職員室や事務室があるのは2階
つまり、このダクトを通して降りる必要がある
嵌めているクローズフィンガーグローブは指紋を残さない他、摩擦力の向上の狙いもある
ダクトの壁に手と足をつけ、大の字のアメンボのような姿勢で少しずつ降りて行く
スパイダーマンの気分だったりするが、時折埃のせいで滑ったりして気が気じゃない
まず最初に一つ横穴を見過ごし、次の横穴に滑り込む
再び横向きのダクトなので音に気をつけながら静かに移動する
しばらく狭い空間に居るため、一般人は方向感覚が狂ったり閉所恐怖症に陥ったりするが、俺は訓練してあるため問題ない
恐らく……この辺り……
一枚の板をめくって索敵する
「オールクリアだな」
呟いて板を外す
「よっ」
穴から下に飛び降りてしゃがみつつ着地
狙った通り、そこは多くのファイルやコピー機が置いてある事務室
もたもたしている訳にもいかないので資料を探そう
「新一年生の資料は……」
主に学年ごとに個人情報が棚に分けられている為、それぞれを見て探す
「資料が多過ぎる……!」
各部活予算案や花壇整備費用集、PTA交通費まとめ等々、数多くの資料がある
……見つけた
生徒個人情報がまとまっている所に『入試面接結果』と書かれた資料と『1年次個人情報』と書かれた資料を見つけて手早く抜き取る
「……!」
……コツ……コツ
廊下から足音が聞こえたから急いで事務机の影に隠れる
幸い通り過ぎたようだから背負っていたケースを下ろす
ジッパーを開けて4枚のタブレット端末のようなものを取り出す
というか、元タブレット端末だ
在庫処分で大安売りしていたタブレット端末を鎌月が買って改造した訳で、これもトンデモ機械だったりする
この手袋はこう言った人間の指先から出る微弱な電流で操作する端末機器の操作も出来るように特殊な加工がされているため、手袋を外す事無くタブレットを操作する
起動し、スキャナアプリを起動
通常であれば特定位置から撮影するとプリントをPDF化できるようなアプリが多いが、そんなアプリじゃ資料全部をコピーするのに日が暮れてしまう
このアプリは改造された端末にしか操作できない特殊なアプリだ
アプリを起動した2枚のタブレットでファイルごと挟む
画面が内側を向いている状態である事を確認してから……
「スキャン」
俺が呟くと声紋で動きを認証したタブレットから光が漏れてスキャンが始まる
そう、光で全ての資料を透過してスキャンするのである
もう片方のファイルも挟んでスキャン開始
このタブレットはX線を発生させる事が可能な様に改造されているため、ファイルごとレントゲンをとっているような状態になる
そんな事できるはず無い、出来たとしても何枚もの資料が重なって文字がぐちゃぐちゃに写る
と、思われてしまうかも知れないが、これを作ったのはSVTのメカニック、鎌月だ
両側から交互にスキャンする事で距離を計算して、一枚一枚の資料を認識し、保存する
このファイルのスキャンもあと20秒ほどでスキャンが終わる
「よし……順調だ」
入試面接結果の保存が完了したのでタブレットを収納し、ファイルを棚に戻す——
俺が動こうとしたその瞬間、廊下から事務室の鍵を開けようとする音が聞こえた
瞬時に事務机の下に飛び込んで隠れる
「生徒名簿生徒名簿……」
その声から今朝会った、社会科の教員の井古先生である事がわかった
優しい初老の先生だが、怒るときは怒る
バレてはいけない
「……あぁ、見つけた。これで準備はいいかな……」
どうやら見つけたらしくガサゴソやってから去って行った
「ふぅ……天井に穴もあいていて明らかにおかしいだろうに気付かなかったのかよ」
まぁ、良かったが
スキャンも終了したのでタブレットをケースに入れて背負い、ファイルはもとの場所に戻した
「帰ろうか」
ジャンプして天井の穴を掴み、腕力で体を持ち上げる
板を元に戻してから再度ダクトを移動
「これ……登るのが大変だろうな」
任務完了です
こんにちは永久院です
赤木の単独任務
スパイ系は書くのが楽しいです
最近文字数が伸びずに悩んでいたり……
なんか調子が悪いですけど、最低限1週間に1回は更新するスタイルで続けます
よろしくおねがいしまーす




