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強襲ボランティア  作者: 永久院 悠軌
新学年編
32/55

32. 新しいスタート

瑞々しい葉桜が太陽光を浴びて鮮やかなエメラルドをうつしだし、風が緑の波を描き出す

今日は四月の初登校日

新学年を迎えて、登校している人影があった




「あー……ねむ」

「先輩寝不足なんですか?」

「あぁ……すこしな。交通安全運動の間も眠くて仕方なかった」

隣から聞こえる寝不足宣言を聞きつつ歩く

俺の名前は赤木(あかぎ)しるべ

湖近くの高校に通う高校生

高校にしては珍しく、俺の高校では上級生も新入生の入学式に参加する

隣を歩く女性についての説明もしよう

背が高めのお姉様風貌の女子

ポニーテールのそのお姉様の名は星霧(ほしきり)麻菜まな

俺の先輩だ

「今日の入学式は寝そうだなー……」

「目測査定なんですからちゃんと働いてくださいよ?」

今日のSVTの仕事は校庭へ駐車する保護者樣方の車の交通整理と、入学式での照明や放送関係の仕事の手伝い。そして、目測査定だ

SVTは今日を持って3年生が7人、2年生が7人の計14人で活動している

だが、今年は三年生は受験のため、一時退役してもらう事になる

そのため新人隊員を求める必要があり、俺たちはスカウトできる人や志願者を捜す必要がある

その、スカウトする人間を捜すのに俺たちは『資料調査』と呼ばれる資料を用いた調査と、『目測査定』と呼ばれる目で見て優れている人間を捜す事をしている

今日は入学式に参加する人物の目測査定で、体格や歩幅、肩幅や傷跡、周辺への視線や気配りなどを見て、調査する訳だ

「目測査定なんて鷹宮たかみやにやらせておけばいいのよ」

鷹宮先輩はSVTの中でもトップレベルの隠密性を持つだけでなく、観察眼も人並みはずれていて、目測査定には向いている

だが、少しでも人員は多い方が良い

「先輩は受付ですから寝れませんけどね。観念して普通にやってくださいよ?」

「はぁ……めんどくさい」

口ではこう言っているが、実際は星霧先輩は志願してSVTに入った心優しい先輩だ

本番は本気を出す、最後まで全力を尽くすのは間違い無い

全力とは言え新入生を色眼鏡で見るだけなのだが

曲がり角を曲がったところで高校が見えて来る

「どうします?この時間、一緒に登校すると目立ちますよ?」

「あたしはそう言うのは気にしない。普通に歩くわよ。だけど、SVTに関する事は他人の前では言わない方が良いわね」

「部外秘ですからね」

SVTは無報酬、自主性、利他性が揃う完全なボランティアを目指しているため、人知れず深夜に活動する事が多い

色々と法律に触れつつボランティアを行なっているため、その存在は極力影の存在にしている

だが、完全に存在を消すと志願者が募らない為に、存在はするけど実態が不明な存在、都市伝説的なものとしている

俺と星霧先輩が会話をしながら歩いていると、後ろから駆け寄って来る人物の気配を感じた

振り返ると、背が低い女子が居た

というか、SVTメンバーで科学技術系専門の葉城はしろ七美ななみが居た

「星霧先輩おはようございますっ!しーくんもおはよー!」

「おはよう葉城」

「相変わらず元気だな」

どう見ても小学生にしか見えないこの少女、これでいて工具箱を渡せば何でもやりやがる機械系の超人だったりする

俺たちSVTの制服は冬服は葉城が作り、夏服は鎌月かまつきと言う別のメンバーが作っている

「……ん?」

一瞬だけ何らかの光を見た気がして咄嗟に道路脇の電柱の影に隠れる

仕事上、誰かに恨みを買っている可能性もあるから、スナイピングなどを警戒して不自然な光を見たときはすぐに遮蔽物に隠れる癖がついている

「赤木、どこだ?」

道路のもう片側の電柱の影に隠れた星霧先輩から問われ、付近を見渡す

「銃声や着弾が無いのでマズルフラッシュでは無かったようですが、スコープの反射光の可能性もあります」

葉城だけが路上で不思議そうに立っていて……何の危機感も無さそうだ

「危ないぞ、葉城、隠れろ!」

「!」

星霧先輩に言われてようやく状況がわかった葉城が遅れながら遮蔽物である電柱に隠れる

「先輩、光は学校側からでした、俺が遮蔽物を出ますので、安全確認を行ないましょう」

「囮作戦か……頼んだぞ」

「はい」

俺は電柱の影をでて、自分の高校側を見る

光を反射させる窓ガラスが見える他、確かに光を反射しているものが屋上にあった

睨みつけつつ歩む

一度も光から目は離さず、瞬きは左右の瞳で時間差を付けて一瞬も見逃さない

日本国内の一介の高校の屋上からライフルで普通の高校生を狙撃する可能性など極僅かだが、念を入れて目を離さない

と、そこで俺の胸ポケットから振動が伝わった

目を離さず再度付近の電柱の影に入りつつケータイを取り出し、振動から通話だとわかった俺はケータイを耳に当てる

「もしもし?」

『赤木さんの反射神経には驚きましたが、わたしはナナちゃんの通学中の写真を撮りたくて望遠レンズで構えていただけですからご心配なさらず』

「鎌月!?」

『今朝の交通安全運動はお疲れさまでした。暴走車輌は捕まったと聞きました』

「は、早いな……」

『裏寡さんの知人の警察官がCB1300Pで追いかけたそうです』

あ、それは逃げ切れないだろうな

『では、報告は以上です。本日は仕事が多いですので、気を引き締めて行きましょう。あと、ナナちゃんとレンズの斜線上に入らないでください。撮影ができなくなるので』

「あいよ……」

プツッ

唐突な鎌月からの電話で緊張と安堵の両方を受けた

なんか湿気った気分だ

「あー……星霧先輩、葉城。あの光は危険なものではないようです。行きましょう」

「危険なものじゃない……?」

「新入生査定を始めている隊員のものらしいです」

「そうか。では、安心して行こう」

星霧先輩も電柱の影からでて学校へ歩き始める

俺は道路の端をあるき、葉城と星霧先輩が歩くのを遅めの歩みで追う

鎌月の永久保存写真に写りたくなんかは無いからな



さて……



「俺も、二年生か」



こんにちは 永久院悠軌です

新学期のお話です

SVTの仕事はまだまだ続きます

つまり、僕の執筆作業はまだまだ続きます

楽しんで読んで頂けたら幸いです

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