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22. イケメン……コンテスト!?

それは、俺と雨羽あまは先輩が巡回警備(パトロール)を終え、『SVT』メンバーが集るステージに戻ろうとしている時だった

『これより桜祭りステージ演出、午前の部の第一イベントイケメンコンテストが開催されます。出場者の皆さんは特設ステージ脇、スタッフテントまで来てください』

と、『SVT』のオペレーターである冴崎(さえざき)美咲みさきの声がスピーカーから聞こえて来て足を止める

「イケメン……コンテスト?」

しるべ君、知らないんですか?毎年、桜祭りの一発目に行なわれている名物企画じゃないですか」

「俺、いつもは午後に来てたんで、午前の一発目を見るのは始めてですね」

「そうなんですか」

どうやら雨羽先輩の話を聞くには、このイケメンコンテストは数年から始まったコンテストで

一年目は『街のアイドル』を探す程度の残念な大会だったが、二年目からガチ勢が参加し始めて、今では某アイドル事務所の取締役が視察、スカウトに来たり、この大会を見る為だけに訪れる観光客も少なくないらしい

「導君も参加すればいかがですか?結構上位狙えると思いますよ?」

「いやいや、悪い冗談ですよ。俺はイケメンじゃないし、恥をかくだけですよ」

「導君はカッコいいですよ?」

「え?」

雨羽先輩は明後日の方向を見ながら話す

「顔もカッコいいですし、運動もできますし、正義感が強いですし、優しいですし、たまには無茶する事もあるけど頑張り屋ですし、気遣いできますし、チームメンバーをまとめていますし…………」

「ちょ、ちょっと?雨羽先輩?」

「あ!ごめんなさい、導君!少し脳内を整理していただけですから!」

「そうですか……」

「で、でも!導君は本当に、コンテストで優勝を狙えると思いますよ!」

なんか……そこまで言われるとな

別に出場してみてもいいのではないだろうか……と思えて来る

「一回、本部に戻りましょう。静道せいどう先輩に相談しないと、もしかしたら待機体勢に入っておいて緊急任務に備えないといけないかもしれませんから」

「そうですね」

雨羽先輩と、一応巡回警備(パトロール)の帰りなので周辺で困っている人がいないかどうかをチェックしながら歩いてスタッフテントの裏、『SVT』のシートに向かった

辺りは第一イベント前になり賑やかに、人混みが増えて来ていた

「……ってあれ?」

シートに戻ると静道先輩の姿が無かった

桜の木にサンドバックを吊るして殴打している星霧ほしきり先輩に近づいて聞く

「静道先輩どこに行きました?」

「ん?あぁ、赤木あかぎ帰って来たのね。あいつならすぐそこのスタッフテントにいるはずだけど?」

「え?『SVT』は本部テントへの直属義務は無いんじゃ……?」

「イケメンコンテストへの参加申請しに行ったのよ。水爪みつまも連れて行ったわ」

「は!?」

「私に腕相撲で負けたらイケメンコンテストに出るって、賭けて負けたのよ。水爪は可哀想だけど」

「なんてこったい……」

静道先輩まで腕相撲で負けたんじゃ誰が勝てるんだよ!荒威あらい先輩か!?

本気で『SVT』内最強の存在は星霧先輩なのではないだろうか?下の名前は麻菜まなとかいう可愛い名前なのに

「そうだ、赤木。あんたもわたしと勝負しない?」

星霧先輩がこちらを見て言う

って、え?

「あんたもわたしと勝負して、負けたらイケメンコンテストに出なさいよ」

「え、はい?いやいや、なんでそんな事——」

「面白いからに決まってるでしょ」

「……。」

絶句せざるを得ない

星霧先輩には過去に腕相撲で負けた事がある

トラウマだ

あの時の馬鹿力は忘れない

「まさか、女子相手に怖じ気づいてはいないわよね?逃げ出すつもり?」

星霧先輩はサンドバッグを蹴りながら挑発して来る

……

「そんな事言われたら勝負しないといけないじゃないですか」

「導君、やるんですか!?」

「星霧先輩と勝負して決めます。多分負けますけど」

いや、絶対負けるけど

「よし、来なさい。赤木」

星霧先輩がシートの上で匍匐(ブローン)になる

俺も伏せて、星霧先輩と向かい合う

正直言って、無意味だった

俺が単純な筋力で星霧先輩に勝てるはずが無い

が、言われるままにイケメンコンテストに出るのも腑に落ちない

仮に出るとしても、言い訳ができた方がいいのである

「良かったの?ホイホイと勝負に乗って?」

「俺だって色々と考えているんですよ」

今、右肘を支点に右腕をたてて、星霧先輩の手を握る

雨羽先輩はかたずを飲んで緊張気味な表情をしていて……

「スタートは御奈沢みなざわに言ってもらおうかしら」

「わ、わたしですか!?」

「お願いします。先輩」

緊張の糸が張られ、辺りには静寂が広がる

集中し、右腕の神経を研ぎすませる

男女の違いがあるにも関わらず単純な筋力だと俺は星霧先輩には勝てない

それ自体も問題だが、考えても仕方ない

勝利する為には、筋力ではなく、テクニックで勝つ必要がある

実は腕相撲には48種類の決まり手が存在して、それらを意識する事で戦況を有利に進める事ができる

さらに、腕相撲はアームレスリングとは違い、肘の支点を動かす事が可能で、相手の力の入れ方をそのまま利用した反撃などもテクニックも存在する

「勝算は、あります。いつでも始めて下さい。雨羽先輩」

俺は、早く始めて欲しかった

もちろん、緊張が嫌いである事もあるのだが、それ以上に……

「わたしも、準備できてるわ」

星霧先輩も準備できている様で、前傾姿勢でスタンバイしているのだが、それがまずい

む、胸、見えそうですよ!

星霧先輩は暴力的で男勝りな所も多いが、スタイルはかなり良くて、この状況、目のやり場に困る

あー。ポニーテールのお姉様が胸をチラ見せそうな状況……平静が保てない…………!!

理性を押さえ込むべく右手への神経をさらに通わせるが、いかんせん腕が震えている

「は、始めて下さい!!」

な、なに!?

雨羽先輩がこのタイミングで試合開始を宣告した!

辛うじて『SVT』トップランクを自負する反射神経で腕に力を込める

「早いわね」

ぐっ……!僅かに傾いたところで星霧先輩も力を込め始めて拮抗する

しかしながら俺はその握力で感じる

「まだ……本気じゃないですね……!」

「もちろんよ」

俺は既に本気だが、ビクともしない

状況打破の為には……支点を右側にずらして倒れるのを防ごう!

「っと、させないわよ」

「あ、噓だろ!?」

俺の視点が動くのを先に感知した先輩が真下に向けたベクトルで腕を引いて来た

肘への重量が多過ぎてシート越しに地面にめり込んで動いてくれない

「あっ……くっ……!!」

「悲鳴をあげているわね」

肘が超過重で悲鳴をあげている他、更に星霧先輩が俺の手を握りつぶすように握力を込めて来た

い、痛ぇ……!!

技の変更も無理、支点移動も無理、もはや……勝てねぇ……!!

だが、そこで俺の脳内に一つのひらめきがうまれる

対戦系のスポーツで争われる点は技術、力量だけではない

心理戦もあるだろう——

「先輩……交渉しませんか……?」

痛みで腕から力が抜けそうになるのをこらえつつ先輩に交渉を持ちかける

「なにかしら?」

「先輩……もしも俺に勝たせてくれたら——」

条件を、提示

「——麻菜先輩って呼びます!」

「……。」

「……。」

星霧先輩、無言

ついでに雨羽先輩も無言だ

雨羽先輩は下の名前で呼ばれる事を喜んでいた。そこから俺は一つの仮定を導きだしたのである

恐らく、女子は下の名前で呼ぶと、喜ぶ

餌で勝利を狙う戦術だ

「…………。」

俺も無言で星霧先輩の顔色を伺う

好戦的な顔だった星霧先輩はその笑顔のまま……

ビキィ!

青筋を浮かべた……って!?

なんか雨羽先輩と反応が違うんですけど!?

「死ね、赤木」

星霧先輩は一言そう言うと、右腕に全力を込めて――

「ハァアアアアアアアアアッッ!」

「っだぁあああああああああああああああああ」

まず最初に着たのは負荷

地面にめり込んだ俺の肘がさらに深く埋まり

次に俺の肘で地面を抉るかのように腕を倒し

最後に、俺の手を握りつぶした

「あっ……あぁ……」

い、痛い……

言葉も出ない

だ、脱臼したってこれ……!

空を見上げてシートの上に倒れる

「雑魚が」

星霧先輩は一言呟きどこかへ消えた

右腕の感覚もどこかへ消えた




空を見上げて、死に絶える直前の思いで、思考する


「イケメンコンテスト……ってなんだよ……」





こんにちは永久院悠軌です

次回の話へのつなぎの話になります

そう、次回は『SVT』が桜祭りイケメンコンテストに……!

今考えると『SVT』のイケメンは結構多いものですね

個性のある彼らがコンテストに出るとどうなるのか

こう、ご期待を!



なお、次回投稿はしばらく先になる可能性が有ります

ご了承ください

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