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21. 巡回警備

赤木あかぎしるべです

ようやく迎えた桜祭りで、早速巡回警備(パトロール)を開始

今回は高校生のボランティアとして参加しているので、普段の制服に『桜祭り実行委員会』の腕章を着けて歩いているのだが、これがどうも……

一緒に並んで歩いている雨羽あまは先輩をみやりつつ思うことがある

なんか、雰囲気のいい高校生が二人で花見に来ているような絵図じゃないか?

腕章さえなければ疑いの余地もなくそう見えてしまうだろう

この状況を『SVT』隊員を除く学校の知り合いに見られたりでもしたら結構……。

俺は学校では顔も学力も身体能力も普通としてやってるのに生徒会長、美人、市長の孫娘などというハイスペックなカテゴリーを持っている雨羽先輩とその……恋人みたいな空気を出してるのはまずくないか?

才色兼備な雨羽先輩に近づこうとするファンは少なくなかったはず

もしもその中の人間とエンカウントしたら巡回警備(パトロール)どころじゃないって言うか……

「導君、お年寄りの方が階段を登るのに困っています!」

「え、はい?どこですか?」

隣の雨羽先輩に声をかけられて、付近を見渡す

と、確かに杖をついたご老人が長い階段を登ろうとしている

困っているかどうかは定かではないが、確かに援助すべきであろう

「行きましょう!雨羽先輩!」

急いでご老人の方に駆け寄る

白髪のお爺さん……年齢は70歳前後と言ったところか……?

「お爺さん、大丈夫ですか?ここの階段は長いですから手伝いましょうか?」

「おぉ、君は……高校生かな?妻と孫たちに団子を買いに来たんだが、階段を登るのが辛くなっていたようだ」

お爺さんの手には確かに団子のパックが入った袋があり、杖と袋を持つことで、安定する手すりを握れないようだ

「お荷物、上まで持ちますよ」

雨羽先輩が荷物を預かる

「一番上まで、背負いましょうか?」

「ありがとう。私の膝はもうかなりいたんでいる。背負ってもらえると助かるよ」

「では、乗ってください」

腰を屈めて、背負う

これだけの長い階段をお爺さんを背負って登るのは結構な重労働ではあるが、日頃から鍛えている俺にとっては準備運動にも劣る

一歩ずつ、安全第一で慎重に登る

だが、お爺さんの体力もあるだろうから、あまり長い間背中に掴まらせるわけにはいかない

ある程度の速度で、登っていく

「大丈夫ですか?導君?」

「大丈夫ですよ。雨羽先輩。いつもは体を片手で支えて壁を登っていますから」

俺の腕は少し特殊な筋肉の付け方をしているため、大きく隆起しているタイプの荒威あらい先輩の腕とは違い、外見は普通の腕だが、力を入れると筋肉の繊維が引き絞られて常人を遥かに凌ぐ腕力を発揮できるのだ

特に瞬発力や腕の筋持久力は『SVT』内でもわりと上位で……いや、星霧(ほしきり)先輩の馬鹿力には負けたけどさ

とにかく、この程度では疲弊しやしない

昨日の任務の筋肉痛が僅かにあるが、それも僅かなもの

あと200往復は楽……

「……と、着きましたよ。下ろしますよ」

「おぉ、ありがとう。」

「はい、お荷物です」

一番上まで登り、お爺さんを下ろす

雨羽先輩が荷物を手渡し、俺と雨羽先輩は横並ぶ

「いやぁ、本当にありがとう。君たちは高校生かな?」

「はい」

礼と質問に答えると、お爺さんは微笑み、言葉を繋ぐ

「最近の高校生は気配りができないとか色々と聞くが、君たちみたいなボランティア精神のある子もいるんだな。感心したよ」

「ありがとうございます」

「私たちは、人の役に立つ事が好きなんです」

お爺さんは雨羽先輩の言葉を聞いて嬉しそうに笑顔を浮かべ、ありがとう、と一言残し、去っていった

巡回警備(パトロール)開始して間もなく一つ仕事を終えた

幸先が良いのやら、困っている人が多いのやら

「行きますか?雨羽先輩」

「そうですね!導君!」

あれ?なんか嬉しそうだな……

人助けの達成感だろうか……?

いや、ちょっと待てよ

巡回警備(パトロール)始めてからずっとこんな感じだったか?

うーむ……

達成感かな

俺も、階段を登り終えた達成感とか色々と気分が高揚しているからな。

と、俺が回想をして無意識の間にやや口角を上げていると気付いた時、空気が壊れた

「あぁ!?ここは俺が先に場所取りしてただろうが!」

「んだと!?アンタ、俺の方が先だっただろ!?」

どうやら、場所取りで喧嘩をしているらしい

どちらかが元兇のはずだが、公然では関係ない

どちらも危険分子であるため、早期に手を打たなければ、彼ら自身が怪我をする可能性が有る他、止めに入ろうとした一般人が巻き込まれて怪我をするケースも少なくない

「雨羽先輩!本部から増援を要求してください!俺は取り敢えず緩和を狙ってきます!」

「はい!」

先輩に指示を出して、飛び出す

腕まくりをして、今にも掴み掛かりそうな形相の男性二人の間に入って、双方を睨めつける

「『桜祭り実行委員(スタッフ)』です。双方冷静に、落ち着いて話を聞いてください」

「なんだてめぇ?ただのガキが引っ込んでいやがれ、俺はそこのマナーがわりい野郎に用があるんだ」

「そうだ、単位欲しくてボランティアでスタッフやってるようなガキが首を突っ込むんじゃねぇ。男は拳で決めんだよ!」

いけない、双方酔っているようだ

視界の片隅に映る、缶ビールの箱と投げ捨てられた空き缶を見るに……片方はかなり飲んでいるな

もう片方も、シートに飲酒をした形跡がある

困るな……酔っぱらいは理性の(たが)が外れて怒鳴り散らす(やから)がおおい

周辺の観光客に迷惑をかける可能性が高いのである

「オラァ!ガキは引っ込んでろ!」

「さっさと殴り合え!」

さらに状況を悪化させているのが、双方の酔っぱらいのものと思わしきシートに腰掛けている他の人たち

恐らく関係者なのだろうが、彼らもまた酒に酔っていて、火に油を注いでいる

戦闘に転がる可能性は高い……

本来、俺の身体能力ならこの程度の素人二人は余裕でのばせるのだが、『桜祭り実行委員(スタッフ)』を名乗った手前、そのような暴力行為で解決するのはいかがなものか

暴力で暴力を止める……毒を以て毒を制す、と言うことわざを思い出す

そして、俺はそこからさらに連想させるものがある

それはかつて、俺の高校のランク2に位置していた男

富寺とみでら卿侍きょうじ

生徒会副会長として学園を変えようと言う心があったが、次第に真の目的を忘れ、学園を実験台に新しい未来を築こうとしていた

目標を歪めてしまった、天才だ

彼は、俺たち『SVT』を陥れる事で絶大な権力を手に入れようとして

俺たちを誘き寄せるべく犯罪を犯した

悪を滅ぼすために悪を許容したのだ

俺たちは、それを許さなかった

だとすれば……

今、喧嘩腰の二人組を成敗する為に格闘を行なうのは、許されないはず

「ま、どっちみちギャラリーが加勢して来たらさばき切れないか……」

今は騒いでいるだけだが、シートの上で酔っている見物客達が加勢して来たら大乱闘になる

それは、避けねばならない

「他の方の迷惑になるので、大声で騒ぐのは控えてください。それから、観光客の方同士でのトラブルが発生した場合は私たち『桜祭り実行委員(スタッフ)』をお呼び下さい」

「ガキに何ができるんだぁ!?」

「話し合いで、解決しましょう」

怒鳴り散らし、俺の方を睨めつけて来る酔っぱらいの背後に、俺の知人の姿が現れた

本名、鎌月かまつきまい

『SVT』が誇る重要戦力、『交渉人(ネゴシエーター)

雨羽先輩の要請を受けた静道せいどう先輩が酔っぱらいの相手をした時にもっとも被害が少ない『交渉人(ネゴシエーター)』である鎌月を選んで送って来たのか

「あぁ?てめぇもスタッフかよ。しかも今度は女か?生意気な事言ってんじゃねぇぞ」

「お兄さん、アルコールのにおいしますよ。だいぶ酔ってますね。この指何本かわかりますか?」

「あ?てめぇ人の話——」

「答えて頂けますか?」

「……に、二本だ」

凄い……

一瞬で酔っぱらいのペースを奪い取った

完全に鎌月のペースで話を進められて、酔っぱらいも戸惑っている

「視界は安定しているようですね。ですが、顔が結構赤いので飲み過ぎには注意してください。あと、お酒を飲んだ直後の運動は血圧が安定せずに様々な事故を招くので控えてください。ここは公共の場なので騒ぐのもよしてください。程々に花見を楽しんでください」

「あ、あぁ……」

次々と連続的に紡ぎだされる鎌月の物言いに圧倒された酔っぱらいは目を丸くして言葉を失っている

戦意はもはや無い

「そちらの方も、公共の場ですから、平等に使ってください」

「わ、わかった」

その物言いを見ていたもう片方の酔っぱらいも目が覚めたように素直に返事をする

「では、お花見を楽しんでいってください」

鎌月が最後に決め台詞の用な言葉を発して、事件は収束する

あっけにとられたような、未だに何が起きたかよく分かっていない様子で酔っぱらい達はシートに座り込んだ

周辺には多くのギャラリーが居て、一人の人物が拍手をし始めた

鎌月への、賞賛の拍手である

やがて、拍手をする人は増えていき、大喝采になった

「……ありがとうございます。皆様も、何かトラブルが起きた時は私たち『桜祭り実行委員(スタッフ)』をお呼び下さい。では、この桜祭りを楽しんでいってください」

拍手に対して鎌月はアドリブとは思えないような完璧な台詞を返して、こちらに歩んで来た

その隣には雨羽先輩もいる

「導君、大丈夫でしたか!?」

「大丈夫です。鎌月のおかげで戦闘にはなりませんでしたから」

雨羽先輩は心配性な面がある

慎重に物事を運ぶ事は重要だけど、たまには信頼もしてほしいな

でも、確かに、見ている側はヒヤヒヤしても仕方ないか……

「まったく……静道隊長から緊急任務を出されたと思ったら交渉戦なんて……あの程度の事で呼ばないでほしいですね」

呆れたような声で溜息をついてからこちらにジト目を向けて責任を要求するような発言をする鎌月

「せっかくナナちゃんを膝枕してて、ウトウトして来てあと少しで寝顔確認距離の最短記録を出せそうだったのに……」

「……。」

「うまくいけば寝ている間にナナちゃんの清純な唇を奪う事もできたのに……。今後は交渉程度で呼ばないでもらいたいですね」

「あの……鎌月、いいか?」

「なんでしょう?」

「今日は花見の酒で酔っぱらってトラブル起こす人が多いだろうから……ほら、酔った人への交渉は俺たちだと失敗するリスクが高いから、お前を呼ぶ事になると思うんだ」

鎌月、黙する

何故だろう、いつも通りの表情なのに、どことなく怖く感じる

い、いや、俺のせいじゃないし!

「雨羽先輩と勤務中にデートをしている誰かさんなら余裕で相手できるんじゃないですか?」

「で、デートじゃないですよ!鎌月さん!」

即座に否定したのは雨羽先輩

怒りだろうか、顔を赤くして訴えている

鎌月はその反応を横目で見つつ、更に一言

「マンザラでもないようですね」

「は?」

「か、鎌月さん!!」

「せいぜい巡回警備逢引(パトロールランデブー)を楽しむがいいでしょう」


謎の会話を交わして、鎌月は歩いて行った


桜祭りは、まだ続く





桜祭りはまだ始まったばかりです

ちょっとした小ネタを挟みました


雨羽先輩ルートに走っちゃうのかなー

でもそうなると僕の作風って……年上属性多いね!

僕はロリコンでは無いけど姉萌え属性も無いからなー

むしろ、無機物愛!

個人的には裏寡ルートでも雨羽先輩ルートでもなく、裏寡のCB1300スーパーボルドール萌えなんですよ


……次回をお楽しみに!

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