第九十七話 海を越えて辿り着く緑の島
翌日。
鹿児島県。
昨日まで呪年樹が暴れていた街では、人々や妖怪たち、精霊たちが協力しながら復旧作業を進めていた。
壊れた建物の修理。
倒れた街路樹の片付け。
誰もが忙しそうに動いている。
そんな光景を見つめながら、彩葉は静かに空を見上げた。
「............」
その隣で、腕を組んだ穂乃香が小さく息を吐く。
「もう行くのか」
その言葉に、彩葉はゆっくりと頷いた。
「はい」
「あわなきゃ行けないので」
「あの神様に」
穂乃香は少しだけ笑った。
「そうか」
すると、泉が優しく微笑みながら口を開く。
「............好きに行動すれば良いわ」
「あなたはあなたのもの」
「自由に行き」
「見つけなさい」
彩葉は目をぱちぱちさせた。
「え?............はい!」
そして辺りを見回した。
「......あれ?」
「マイちゃんとリリアちゃんは?」
穂乃香が肩をすくめる。
「あの二人なら音を探す旅にまたでかけたぞ」
「あいつら、音を集めて全ての存在を幸せにするってよ」
彩葉の顔に笑顔が浮かんだ。
「良い夢です」
「......私も、そろそろ行かないと」
穂乃香はニッと笑った。
「そうか」
「気を付けてな」
「守護者とはいえ大海原だ」
「なにが起きても不思議じゃない」
「はい!」
元気よく返事をした彩葉。
すると泉が何かを差し出した。
「そうですわ」
「これを」
「?」
「......これは?」
小さく可愛らしいお守りだった。
白い布に、温泉を思わせる水色の刺繍が施されている。
「お守りですわ♪」
彩葉の目が丸くなる。
「............ありがとうございます!」
「............それでは!」
「おう!」
「また、ですわ」
二人に手を振りながら。
彩葉は新たな旅へ歩き始めた。
次の目的地。
屋久島。
そして、その先にあるフィリピン。
さらに遠く。
海の向こうにあるギリシャ。
アテナに会うための旅である。
◇
海。
青く広がる大海原。
穏やかな波。
白い雲。
どこまでも続く空。
その上を、彩葉は走っていた。
足元の海面は沈まない。
水面に波紋だけを残しながら、まるで陸地を走るように進んでいく。
「やっぱりすごいな~」
「水上歩行って」
「どうして、日本生まれの守護者しかできないんだろう」
「日本の守護者『サクラ』って守護者ならわかるのかな......」
少し考える。
だが。
「まぁいいや」
「急ごう」
ニコッと笑った。
そして。
「よっと!」
ビュン!!
海面を蹴る。
一気に加速する。
風が髪を揺らす。
「気持ちいい~!」
空には海鳥。
時折、大きな魚が跳ねる。
「わぁ!」
「飛んだ!」
「すごい!」
楽しそうに笑う。
そのまま数時間。
やがて。
遠くに緑色の島影が見え始めた。
「わぁ~!」
「あれが屋久島か~!」
山々がそびえ立っている。
深い森。
濃い緑。
島全体から生命力のようなものが感じられた。
「あそこを経由してフィリピンに行くんだよね......」
「よし!」
そして。
ふと立ち止まる。
「そうだ!」
「少しあそこを見て回っても良いよね」
「うん♪」
「そうしよう!」
数十分後。
ついに。
彩葉の足が屋久島の大地を踏みしめた。
「着いた~!」
「屋久島!」
深呼吸する。
「すぅ~~~~」
「はぁ~~~~」
「空気がおいしい!」
思わず両手を広げる。
周囲には豊かな森。
鳥のさえずり。
木々の葉が風に揺れる音。
川のせせらぎ。
まるで島全体が生きているようだった。
「すごい......」
「なんだか安心する......」
すると。
ピョン!
一匹の鹿が近くを横切った。
「あ!」
「鹿さん!」
さらに。
サルたちが木の上から顔を出す。
「お猿さん!」
「こんにちは!」
サルたちは不思議そうに彩葉を見つめる。
「ふふっ」
「かわいい」
そのまま歩き始める。
すると。
電子地図が光った。
「ん?」
「屋久杉?」
「縄文杉?」
「白谷雲水峡?」
「すごい!」
「いっぱいある!」
「どこから見ようかな~」
楽しそうに悩み始める。
その時。
サァァァ……
優しい風が吹いた。
木々の葉が一斉に揺れる。
「?」
「風?」
すると。
どこからか。
楽しそうな歌声が聞こえてきた。
「~~~♪」
「~~~~♪」
彩葉がきょろきょろと周囲を見回す。
「?」
「誰かいる?」
しかし。
姿は見えない。
聞こえるのは歌声だけ。
「綺麗な声......」
「人かな?」
不思議そうに森の奥を見つめる。
そして。
生命に満ちた神秘の島。
屋久島で。
彩葉の新たな出会いが始まろうとしていた。
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次回もお楽しみに




