第九十六話 呪いの始まり、終わりの一撃
巨大な五寸釘。
その根元。
黒い年輪の奥。
そこに。
一本だけ。
古びた藁人形と錆びた五寸釘が深く打ち込まれているのが見えた。
彩葉の瞳が大きく開かれる。
「……あ!」
「みんな!」
「あそこ!」
「一番奥!」
「最初の五寸釘がある!!」
全員が一斉に振り向いた。
そして。
暴走する呪年樹の中心部で。
最初に打ち込まれた呪いの根源が、ついにその姿を現したのだった。
「本体ですわ!」
そう叫ぶと泉が目を見開く。
「間違いありませんわ!」
「あれが呪いの始まり!」
「最初の五寸釘ですわ!」
穂乃香も拳を握る。
「やっと見つけたか!」
「ぶっ壊して終わりにするぞ!」
しかし。
ドゴォォォォォン!!
呪年樹が大地を震わせた。
黒い幹が裂ける。
無数の枝が蛇のように暴れ出した。
「!?」
マイが驚く。
「守ろうとしてる!」
「本体を!」
リリアも顔色を変える。
「まずい!」
「近づけない!」
枝が空を埋め尽くす。
黒い呪力が嵐のように吹き荒れる。
「ギギギギギギギギ……」
呪年樹が不気味な音を鳴らした。
巨大な枝が穂乃香に襲いかかる。
「甘い!」
炎が爆発する。
「火山噴拳!!」
ドゴォォォン!!
枝が吹き飛ぶ。
だが。
別の枝が何十本も迫る。
「数が多すぎますわ!」
泉が叫ぶ。
「温泉障壁!」
熱湯の壁が広がる。
バシャァァァ!!
何本もの枝が弾かれる。
しかし。
後ろから現れた枝が泉を狙った。
「危ない!」
彩葉が飛び出す。
「収納拘束!!」
無数のショルダーストラップが伸びる。
枝を絡め取り。
動きを止めた。
「ありがとう!」
「彩葉さん!」
「ううん!」
「まだいっぱい来る!」
その瞬間。
マイが首のナットを回した。
キリキリキリ……
「私も!」
「みんなを守る!」
声色が変わる。
透明な音の波が広がった。
「共鳴音波!!」
ビィィィィィン!!
音の衝撃で枝が吹き飛ぶ。
「すごい!」
彩葉が目を輝かせる。
「マイちゃん!」
「えへへ!」
「まだまだです!」
リリアも帽子を押さえる。
「負けてられないね!」
背中の巨大なラッパが輝く。
「蓄音放射!!」
ドォォォォォ!!
昔の音を圧縮した衝撃波。
枝がまとめて粉砕された。
「今だ!」
穂乃香が叫ぶ。
「道が開いた!」
「彩葉!」
「行け!!」
「え?」
「アタイたちが守る!」
「本体を壊せるのはお前だ!」
「彩葉ちゃん!」
「お願い!」
マイも叫ぶ。
リリアも笑う。
泉も頷いた。
「行きなさい!」
「みんな……!」
彩葉は頷く。
「うん!!」
ダッ!
呪年樹の中心へ走る。
しかし。
ゴゴゴゴゴゴ……
年輪が開いた。
黒い顔のようなものが現れる。
「グオオオオオオオ!!」
「!?」
巨大な呪力砲。
黒い光が集まる。
穂乃香が叫ぶ。
「まずい!」
「避けろ!!」
だが。
間に合わない。
その時だった。
「収納盾壁!」
無数のバッグ素材。
革。
ゴム。
布。
金属。
それらが何層にも重なり。
巨大な盾となる。
ドォォォォォォォン!!
凄まじい衝撃。
彩葉は吹き飛ばされそうになる。
「うぅっ!」
「まだ!」
「負けない!」
旅で出会ったみんなの顔が浮かぶ。
「私は!」
「旅を続ける!」
「生まれた意味を見つける!」
「だから!」
「こんなところで止まれない!!」
全身の魔力が輝く。
その時。
胸の奥。
温かい光が生まれた。
『ふふっ』
『頑張ってるわね』
「え?」
聞き覚えのある優しい声。
『行きなさい』
『彩葉』
『あなたなら出来るわ』
「この声……」
「アテナさん……?」
光が一瞬だけ彩葉を包む。
「今なら……!」
「いける!」
両手を前へ。
魔力が収束する。
「収納拘束・大封縛!!」
無数。
いや。
数え切れないほどのショルダーストラップ。
ベルト。
革紐。
チェーン。
それらが津波のように飛び出した。
ギギギギギ!!
巨大な呪年樹を完全拘束。
「今だ!」
「穂乃香さん!」
「泉さん!」
「マイちゃん!」
「リリアちゃん!」
「はい!」
「任せろ!」
「いきます!」
「おー!」
四人の力が集まる。
「火山超爆拳!!」
「極楽温泉大渦!!」
「響聖歌!!」
「大蓄音砲!!」
四つの力が一つになった。
そして。
彩葉が飛ぶ。
「はあああああああ!!」
両手で。
藁人形を掴む。
「終わって!!」
グシャッ!!
錆びた五寸釘が抜けた。
次の瞬間。
ピシッ……
巨大な呪年樹全体に亀裂が走る。
「ギャアアアアアアアアア!!」
黒い木が崩壊していく。
光となり。
呪力が消えていく。
やがて。
何百年も積み重なった呪いは。
静かに。
風に溶けるように消滅した。
しばらくして。
「終わった……?」
マイが呟く。
リリアが大きく息を吐く。
「勝ったんだ……」
泉が微笑んだ。
「えぇ。」
「浄化されましたわ。」
穂乃香は豪快に笑う。
「はっはっは!」
「やったな!」
彩葉も笑顔になる。
「うん!」
「みんなのおかげ!」
すると。
呪年樹があった場所に。
小さな若木が一本だけ残っていた。
黒い色はなく。
淡い緑色の葉を揺らしている。
「あ……」
泉が優しく微笑む。
「呪いが消えたのでしょう。」
「普通の木に戻ったのですわ。」
マイも嬉しそうに笑う。
「よかったぁ……」
リリアも頷く。
「うん!」
穂乃香は腕を組む。
「これで一件落着だな!」
夕日が鹿児島の空を赤く染める。
優しい風が吹き。
小さな若木の葉が。
サラサラと静かに揺れるのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




