第九十四話 呪われし年輪と仲間たちの絆
鹿児島の空の下。
異様な気配を放つ巨大な黒い木。
呪年樹。
その周囲には透明な呪力の霧が漂い、わずかに黒い瘴気が滲み出ていた。
何度攻撃しても再生する恐るべき怪異。
しかし、彩葉たちは諦めていなかった。
穂乃香が拳を握る。
「くそっ!」
「何度燃やしてもキリがねぇ!」
泉も眉をひそめる。
「まるで無限に再生していますわ……」
マイは不安そうに呟いた。
「こんなの、どうやって……」
リリアも困惑していた。
「再生速度が速すぎるよ……」
その時だった。
黒い木の幹が大きく脈動した。
ドクン。
ドクン。
年輪の隙間から無数の黒い釘が飛び出す。
「キィィィィィ!!」
呪いの悲鳴が響いた。
「来る!」
彩葉が叫ぶ。
「みんな避けて!」
バババババッ!!
大量の釘が地面に突き刺さる。
穂乃香が飛び退く。
「危ねぇ!」
泉もドレスを翻しながら距離を取った。
「呪いの攻撃ですわ!」
さらに。
枝が鞭のように伸びた。
ビュン!!
「きゃっ!」
マイが転びそうになる。
「危ない!」
彩葉が飛び出した。
「収納拘束!」
シュルルルル!!
無数のショルダーストラップが伸び、枝を縛り上げる。
「マイさん!」
「大丈夫!?」
マイは胸を撫で下ろした。
「う、うん!」
「ありがとう!」
穂乃香が笑う。
「さすがだな!」
「よし!」
「今度はアタイの番だ!」
全身から灼熱の炎が噴き上がる。
「火山爆拳!!」
ドゴォォォォォン!!
炎の拳が呪年樹を直撃。
黒い幹が吹き飛ぶ。
しかし。
メキメキメキ……
再び再生した。
「またかよ!?」
穂乃香が顔をしかめる。
泉も攻撃に移る。
「温泉渦流!」
ゴォォォォ!!
熱湯の渦が木を飲み込む。
蒸気が舞い上がり、幹が溶けていく。
だが。
再び。
メキメキ。
メキメキ。
「再生しましたわ!」
「本当にしぶといですわね!」
リリアが帽子を押さえた。
「だったら!」
「こっちも負けない!」
背中の蓄音機が光る。
「共鳴音波!」
キィィィィィン!!
音の衝撃波が放たれる。
木の表面に亀裂が走った。
「効いてる!」
しかし。
またしても再生。
「うそぉ!?」
リリアが目を丸くする。
マイもマイクを握る。
「わ、私も!」
「歌声共振!」
美しい歌声が響く。
音の波が呪年樹を包み込んだ。
枝が砕け散る。
だが。
やはり。
再生。
再生。
再生。
穂乃香が叫んだ。
「なんなんだよこいつ!」
「不死身か!?」
彩葉も息を切らしていた。
「そんな……」
「どうして……」
その時だった。
泉が何かに気づく。
「待ってくださいまし」
「再生するたびに」
「黒いオーラが少しずつ薄くなっていますわ」
「え?」
全員が見る。
確かに。
最初よりも黒い瘴気が弱まっている。
リリアがハッとした。
「呪力!」
「そうだ!」
「呪力は重なれば重なるほど強くなる!」
マイも頷く。
「つまり!」
「再生するたびに呪力を消費してるんだ!」
穂乃香が笑った。
「なるほど!」
「じゃあよ!」
「再生する暇もないくらいボコボコにすればいいんだな!」
泉も扇子を広げる。
「ようやく攻略法が見えてきましたわ!」
彩葉の瞳に光が戻る。
「うん!」
「頑張ろう!」
「みんなで!」
その瞬間。
呪年樹が怒り狂った。
「キィィィィィィィ!!」
巨大な枝が無数に伸びる。
さらに。
幹の表面から人の顔のような模様が浮かび上がった。
「ギャァァァァァ!」
「ウラメシイ!」
「ニクイ!」
「ユルサナイ!」
無数の怨嗟。
呪いの声。
周囲の空気が震える。
マイが震えた。
「ひっ……!」
リリアも顔を青くする。
「怨念が……!」
泉が真剣な顔になる。
「ここからが本番ですわ」
穂乃香は拳を鳴らした。
「面白ぇ!」
「上等じゃねぇか!」
彩葉も前に出る。
「負けない!」
「みんなで鹿児島を守る!」
すると。
呪年樹の根が地面を突き破った。
ゴゴゴゴゴ……
その巨体がさらに大きくなる。
「えぇ!?」
リリアが叫ぶ。
「まだ大きくなるの!?」
マイも驚愕する。
「そんな!」
泉の表情が険しくなった。
「まずいですわ!」
「長年蓄積された呪いを解放し始めています!」
穂乃香が目を見開く。
「おいおい!」
「さっきまで本気じゃなかったのかよ!」
そして。
巨大化した呪年樹の頂上。
そこに。
一本の巨大な五寸釘が現れた。
黒い雷を纏う禍々しい釘。
その瞬間。
周囲の空が暗く染まる。
ゴロゴロゴロ……
彩葉が息を呑む。
「これ……」
「嫌な感じがする……!」
呪年樹の全身から膨大な呪力が溢れ出した。
まるで。
次の一撃に全てを賭けるかのように。
鹿児島の大地が震え始める。
そして。
巨大な五寸釘がゆっくりと空へ向けられたのだった。
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