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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第九十一話 黒き年輪に宿る呪い


 鹿児島県。


 轟音の上がった方角へ。


 彩葉(いろは)たちは全力で駆けていた。


 街の人々も異変に気づいたのか、不安そうな顔で空を見上げている。


 そして。


 煙の立ち昇る場所へたどり着いた時。


 彩葉が足を止めた。


「あそこです!」


 その先。


 住宅街から少し離れた空き地。


 そこに存在していたものを見て、穂乃香(ほのか)は目を見開いた。


「なんだあれは!?」


「大きな木? に見えますが」


 (いずみ)も信じられないという表情を浮かべる。


 それは。


 葉が一枚もない。


 巨大な黒い幹。


 まるで焼け焦げた木がそのまま何百年も生き続けたような、不気味な姿だった。


 その周囲には透明なオーラ。


 しかし。


 その奥底からは、かすかに黒い気配が滲み出ている。


 それを見た瞬間。


 マイの顔色が変わった。


「呪年樹!?」


「呪年樹?」


 リリアが驚く。


 穂乃香が険しい顔になる。


「聞いたことがあるぜ」


「長い年月をへて呪いを年輪に刻む樹!」


「呪年樹!!」


「どうして、九州に?」


 泉は信じられないように呟く。


「呪年樹は確かに丑の刻参りで五寸釘に藁人形と共に打たれた木が、呪いをためるようになったと聞きますわ」


「鹿児島県にそのような伝承は少ないですし」


「なにより」


「呪年樹は若いうちに呪術師が斬り倒すはずですわよね」


 マイも緊張した顔で頷いた。


「うん」


「こんなに成長してるのなんて、戦国時代あたりに記述されているやつだけだよ」


 彩葉は巨大な黒い幹を見つめた。


「……でも」


「その術師さんを待ってる暇はないよ」


「ここで止めないと」


「そうだな!」


 穂乃香が拳を握る。


「木なんて燃やし尽くしてやるぜ!!」


「えぇ」


 泉も頷いた。


「幸い、呪年樹の使う"力"は呪力です」


「一番弱い"力"ですわ」


「油断さえしなければいけますわ」


「確か」


 リリアが思い出す。


「呪力は重なれば重なるほど強くなる」


「塵も積もれば山となる、だったよね」


「うん」


 マイが真剣な顔で答える。


「そうだよ」


 彩葉は皆を見渡した。


「みなさん!」


「頑張りましょう!」


「おう!!」


「えぇ!」


「うん!」


「もちろん!」


 しかし。


 その時だった。


 ズズズズズ……


 巨大な幹が揺れた。


「!?」


 彩葉たちが身構える。


 すると。


 黒い幹の表面に無数の亀裂が走った。


 そして。


 その亀裂の中から。


 大量の五寸釘が飛び出していた。


「うわっ!?」


 リリアが驚く。


「まだあるのか!」


 穂乃香も顔をしかめる。


 さらに。


 幹全体に浮かび上がる無数の藁人形。


 そして。


 びっしりと刻まれた年輪。


 その一本一本から。


 禍々しい気配が漏れ出していた。


 ドクン。


 ドクン。


 まるで巨大な心臓のように脈打っている。


「気味が悪いですわ……」


 泉が眉をひそめる。


「こんなの初めて見ます」


 マイも緊張していた。


「戦国時代の記録でも、ここまで大きいのは……」


 その瞬間。


 ドゴォォォン!!


 巨大な爆発。


「きゃっ!?」


 彩葉たちの目の前の地面が吹き飛んだ。


「なっ!?」


 穂乃香が驚く。


 そして。


 呪年樹の幹の途中。


 そこが裂けた。


 裂け目の奥。


 真っ黒な空洞。


 そこから。


 無数の赤い光が現れる。


「……目?」


 彩葉が呟く。


 次の瞬間。


 ギチギチギチギチ……


 不気味な音と共に。


 巨大な木の表面から。


 人間の腕。


 獣の腕。


 骸骨の腕。


 様々な腕が何十本も生え始めた。


「ひっ……!」


 マイが震える。


「なんだよ……それ」


 リリアも青ざめる。


「おいおい……」


 穂乃香の額に汗が流れる。


「想像以上じゃねぇか……」


 泉も顔を強張らせた。


「こんなもの……」


「本当に呪年樹ですの……?」


 すると。


 巨大な幹の中央。


 裂けた空洞の奥から。


 低く。


 不気味な声が響いた。


『怨メ……』


『憎メ……』


『呪エ……』


『殺セ……』


 その声は一つではなかった。


 老人。


 女。


 子供。


 男。


 何百。


 何千。


 数え切れない声が重なっている。


 彩葉は息を呑んだ。


「この声……」


「まさか……」


 ドクン。


 巨大な幹が再び脈打つ。


 すると。


 周囲の地面から。


 無数の黒い手が這い出してきた。


 そして。


 それらはゆっくりと形を変えていく。


 人型。


 獣型。


 異形。


 様々な姿へと。


 マイが震える声で呟いた。


「まずい……」


「呪力で作った式神……!」


 リリアが息を呑む。


「こんな数!?」


 穂乃香が拳を構える。


「上等だ!」


「まとめて焼き払ってやる!」


 泉も神力を高めた。


「一気にいきますわ!」


 彩葉も前へ出る。


「みなさん!」


「絶対に止めましょう!」


 その瞬間。


 数百を超える黒い影たちが、一斉に彩葉たちへ襲いかかろうとしていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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