第九十話 平穏を裂く轟音
鹿児島県。
和風喫茶の窓から差し込む午後の光は柔らかく、店内には穏やかな音楽が流れていた。
テーブルの上には色とりどりの甘味や飲み物。
彩葉たちは和やかな時間を過ごしていた。
「わぁ~!」
「このケーキも美味しいです!」
幸せそうに笑う彩葉。
その様子を見て、向かい側に座るリリアが嬉しそうに笑った。
「でしょでしょ!」
「このお店、お気に入りなんだ~!」
マイも小さく頷いた。
「ここの紅茶も美味しいんですよ」
「本当だ!」
「いい香りです~!」
すると穂乃香が腕を組んで笑った。
「ははっ!」
「彩葉は何でも美味そうに食うな!」
「そうですわね」
泉も優雅に微笑む。
「見ているこちらまで幸せになりますわ」
「えへへ」
「そうかな?」
「うん!」
リリアが元気よく頷いた。
「彩葉ちゃんといると楽しい!」
「なんか元気になる!」
「私もです!」
マイも笑顔になる。
「皆さんと一緒だと、いつも以上に楽しいです」
そんな四人を見て、彩葉も嬉しそうに笑った。
「私も!」
「旅をしていてよかった!」
「みんなと会えたから!」
その言葉に。
穂乃香は照れくさそうに鼻を鳴らした。
「ふん」
「大げさだな」
「でも悪い気はしねぇ」
泉も上品に笑う。
「ふふっ」
「素直じゃありませんわね」
「うるせぇ!」
「お前だって嬉しそうじゃねぇか!」
「わたくしはいつも通りですわ」
「嘘つけ!」
「顔がにやけてるぞ!」
「にやけてなんていませんわ!」
「ははは!」
リリアが大笑いする。
「また始まった!」
「仲良しだね!」
「仲良しじゃねぇ!」
「仲良しではありませんわ!」
二人の声がぴったり重なる。
それを見て彩葉も思わず吹き出した。
「ふふっ!」
「息ぴったり!」
「双子みたい!」
「誰がこいつと!」
「誰がこの人と!」
またしても声が重なる。
「やっぱり仲良し!」
「だから違う!」
「違いますわ!」
店内には笑い声が広がっていった。
しばらくして。
喫茶店を出た五人は、鹿児島の街をゆっくり歩いていた。
青空。
穏やかな風。
遠くには桜島も見える。
「いい天気だな」
穂乃香が空を見上げる。
「さすが鹿児島ですわ」
泉も目を細める。
「今日は灰も少ないですし」
「そうなんだ?」
彩葉が首を傾げる。
「あぁ」
穂乃香が頷いた。
「桜島は元気だからな」
「灰が降る日もあるんだ」
「へぇ~」
「自然ってすごい!」
「うん!」
リリアも元気よく頷く。
「生きてるって感じ!」
マイも空を見上げた。
「なんだか歌いたくなりますね」
「さっきの鼻歌も素敵だったよ!」
彩葉が言うと、マイは慌てた。
「えっ!?」
「き、聞こえてたんですか?」
「うん!」
「すごく綺麗だった!」
「そ、そんな……」
顔を真っ赤にするマイ。
「まだまだです」
「もっと練習しないと」
「十分上手いと思うけどな」
穂乃香が言う。
「そうですわ」
泉も頷く。
「いつか本当に声優になれるかもしれませんわね」
「えへへ……」
マイは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます」
すると。
リリアが思い出したように言った。
「そうだ!」
「今度みんなでカラオケ行こうよ!」
「いいですね!」
「楽しそう!」
「うむ!」
「面白そうだ!」
「わたくしも賛成ですわ」
「彩葉ちゃんは?」
「もちろん!」
「行きたい!」
その時だった。
「ドォォォォォォォォォン!!」
突如。
遠くから巨大な爆発音が響いた。
地面がわずかに揺れる。
「!?」
彩葉が足を止めた。
穂乃香の表情が変わる。
「今のは……」
泉も目を見開いた。
「爆発……?」
リリアの笑顔が消える。
「な、なに?」
マイも不安そうに辺りを見回した。
「事故……?」
しかし。
次の瞬間。
「ドゴォォォォォン!!」
二度目の轟音。
そして。
遠くの空に黒煙が上がるのが見えた。
「ッ!」
穂乃香が険しい顔になる。
「おい……」
「あれ……」
泉の声も真剣になる。
「普通ではありませんわ」
彩葉も煙を見つめた。
「……誰か困ってる」
「行かなきゃ!」
リリアが頷く。
「うん!」
「放っておけない!」
マイも決意したように頷いた。
「急ぎましょう!」
穂乃香は拳を握る。
「よし!」
「行くぞ!」
泉もスカートを翻しながら走り出した。
「急ぎますわ!」
「うん!」
彩葉も駆け出す。
五人は爆発の起きた方向へ向かって走り出した。
そして。
その先で待ち受けるものを。
まだ誰も知らなかった。
ただ。
黒煙だけが。
青空を不気味に染め始めていた。
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次回もお楽しみに




