第八十五話 【南へ続く旅路と鹿児島への到着】
長崎県佐世保。
夕暮れの色が少しずつ町を染め始める頃。
佐世保鎮守府の守護者専用訓練施設では、穏やかな時間が流れていた。
駆逐艦「時雨」の守護者。
六花衆・第五席。
時雨。
バッグの守護者。
彩葉。
彩葉は時雨の話を聞き終え、大きく頷いた。
「はい!」
元気いっぱいの返事。
そんな姿に時雨は優しく微笑んだ。
「ふふっ」
「相変わらず元気ですね」
「そのままの彩葉さんでいてください」
「きっと、その優しさがあなたの強さになりますから」
彩葉は嬉しそうに笑う。
「えへへ」
「ありがとう!」
「時雨さん!」
時雨はゆっくり立ち上がった。
「さて」
「そろそろ日も暮れます」
「駅までお送りしますよ」
「え?」
「いいの?」
「もちろんです」
「せっかく知り合えたのですから」
「それに、あなたは大切なお客様です」
「ありがとうございます!」
二人は訓練施設を後にした。
長い廊下を歩き。
会議室を通り。
そして鎮守府の外へ。
海風が頬を撫でていく。
遠くには佐世保の町並み。
夕焼けに染まる港。
船の汽笛。
どこか穏やかな景色。
「綺麗ですね~」
「そうですね」
「私もこの景色は好きです」
「毎日見ているのに、飽きません」
彩葉は笑顔になった。
「うん!」
「なんだか安心する!」
しばらく歩き。
二人は賑やかな町へ。
商店街では買い物を楽しむ人々。
学生たちの笑い声。
観光客。
そして、守護者の姿を見つけると手を振る子どもたち。
「時雨お姉ちゃん!」
「こんにちは!」
「こんにちは」
「元気ですね」
時雨も微笑みながら手を振る。
その様子を見て彩葉は嬉しそうだった。
「人気者なんだね!」
「ふふっ」
「この町には長くいますから」
「皆さん、家族みたいなものです」
やがて。
大きな建物が見えてきた。
佐世保駅。
「わぁ~!」
「ここが駅!」
「大きいです!」
「えぇ」
「ここから博多へ向かい」
「そして新幹線で鹿児島中央駅へ行くと良いでしょう」
彩葉は電子地図を確認した。
「うん!」
「そうする!」
時雨は小さな紙袋を差し出した。
「?」
「これ、なんですか?」
「お弁当です」
「旅の途中で食べてください」
「えぇ!?」
「いいの!?」
「はい」
「長旅ですから」
彩葉は目を輝かせた。
「ありがとう!」
「時雨さん!」
「ふふっ」
「気を付けて」
「また会いましょう」
「うん!」
「またね!」
そうして時雨と別れ。
彩葉は駅へ入った。
切符を買い。
電車に乗り。
博多方面へ向かう。
車窓から見える海。
山々。
夕暮れの町。
初めて見る景色ばかり。
「わぁ~!」
「すごい!」
「流れていきます!」
近くの乗客が微笑む。
「守護者様は初めてですか?」
「はい!」
「旅をしてるんです!」
「それは良いですねぇ」
「いっぱい見てきてください」
「はい!」
やがて。
博多駅。
「わぁ!」
「また来ました!」
人の多さ。
明るい駅構内。
たくさんのお店。
しかし。
今回はゆっくり見て回る時間はない。
「次は新幹線!」
電子地図を見ながら歩く。
「あっ」
「こっち!」
案内板を見つけ。
無事にホームへ到着。
しばらくすると。
白く美しい車体の新幹線が入ってきた。
「わぁぁ~!」
「速そう!」
車内に乗り込む。
「すごい!」
「椅子ふかふか!」
窓際の席。
荷物を置く。
そして。
時雨からもらったお弁当を開ける。
「わぁ!」
「美味しそう!」
彩葉は嬉しそうに手を合わせた。
「いただきます!」
中には。
卵焼き。
魚。
ご飯。
野菜。
そして小さなみかん。
「おいしい~!」
「時雨さん、料理上手!」
窓の外。
夜の九州が流れていく。
福岡。
熊本。
そしてさらに南へ。
山を越え。
トンネルを抜け。
長い時間が過ぎていく。
彩葉は窓に顔を近づけた。
「もうすぐかな?」
すると車内アナウンスが流れた。
『まもなく、鹿児島中央駅です』
「!」
「着く!」
期待に胸を膨らませる彩葉。
やがて。
新幹線はゆっくり速度を落とし。
大きな駅へと滑り込んだ。
鹿児島県。
鹿児島中央駅。
扉が開く。
彩葉は荷物を抱え。
元気よくホームへ降り立った。
「わぁ~~!!」
「ここが鹿児島!」
「初めて来ました!」
夜の駅は明るく。
人々で賑わい。
遠くには雄大な山影が見えていた。
その存在感は圧倒的。
彩葉は思わず立ち止まる。
「すごい……」
「九州って広いんですね……!」
新しい土地。
新しい景色。
そして。
まだ見ぬ世界。
少女の旅は。
さらに南へと続いていくのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




