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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第八話 流れ着く都市の鼓動



 夜が明ける前の京都は、少しだけ静かだった。


 彩葉は駅へ向かう道を一人で歩いていた。


 胸の中にはまだ陽菜の言葉が残っている。


 東京。


 桜菊祭。


 守護者と人類の友好を示す祭り。


 そして、自分が行くべき場所。


「駅は........................こっち、でしたよね」


 頭の中に残っている知識を辿りながら、彩葉は慎重に歩く。


 陽菜から受け取った情報は不思議だった。


 まるで元から知っていたように、道順や仕組みが理解できる。


 人間の街は複雑だと思っていたが、今は少しだけ分かる。


 駅という場所は、人が遠くへ移動するための結節点。


 そこから電車という乗り物に乗れば、東京まで行ける。


 彩葉は深く息を吸った。


「行ける..................はずです」


 やがて大きな建物が見えてきた。


 京都駅。


 夜明け前でも灯りが消えない巨大な建造物。


 人間の流れが絶えず、まるで生きているようだった。


 彩葉はその前で一瞬足を止める。


「.................すごい」


 人の数。


 音。


 光。


 全てが一箇所に集まっている。


 守護者の目で見ても、ここは“世界の交差点”のようだった。


 彩葉はゆっくり中へ入っていく。


 足元の感触が変わる。


 冷たい床。


 整えられた空気。


 巨大な天井。


 人々はそれぞれの目的地へ向かい、流れるように移動している。


 彩葉は少し戸惑いながらも案内板を見上げた。


「東京方面...............新幹線.................」


 頭の中の知識が自然とつながる。


 この場所から東京へ行ける。


 乗るべきは新幹線。


 彩葉は切符売り場へ向かう。


 人間たちの中に混ざるのは少し緊張した。


 だが誰も彼女を特別には見ない。


 守護者は人間に紛れることができる。


 それもまた、この世界の仕組みの一つだと理解していた。


「.................お願いします」


 切符を手に入れると、彩葉はホームへ向かう。


 長い廊下。


 響く足音。


 やがて、白く長い列車が姿を現した。


「これが......新幹線」


 巨大な鉄の塊が、静かに滑り込むように停止する。


 風圧が髪を揺らした。


 彩葉は息を呑む。


 中へ入ると、座席が整然と並んでいた。


 人間たちは静かに座り、それぞれの時間を過ごしている。


 彩葉も窓側の席に座った。


 少し緊張している。


 やがて列車が動き出す。


 ゴォォォ、と低い音が響き、景色が流れ始めた。


 京都の街並みが後ろへと遠ざかっていく。


 彩葉は窓に顔を近づけた。


「......離れていく」


 知らない土地へ向かう感覚。


 それは不安と同時に、わずかな高揚でもあった。


 車窓の外には、山や川、田畑が次々と流れていく。


 やがて街が増え、ビルが増え、景色は徐々に変わっていく。


 彩葉は静かに目を閉じた。


 頭の中に、陽菜の声が蘇る。


『東京には色んな守護者も来るよ』


『世界を知るにはちょうどいい場所さ』


 彩葉は小さく頷いた。


「......うん」


 やがて列車はさらに速度を上げる。


 空が明るくなり始めていた。


 長い時間の後。


 アナウンスが響く。


『まもなく、東京です』


 彩葉は目を開けた。


 胸の奥が強く鳴る。


 東京。


 知らない世界の中心。


 列車がゆっくりと停止する。


 扉が開くと、人の波が流れ込むように動き出した。


 彩葉もその流れに乗り、外へ出る。


 空気が違う。


 京都よりもさらに重く、さらに速い。


 音が多い。


 人が多い。


 すべてが速く動いている。


「ここが......東京......」


 駅構内は巨大だった。


 無数の通路。


 無数の人。


 標識が交差し、情報が洪水のように流れている。


 その中で彩葉は頭の中の知識を思い出す。


 東京にはいくつかの重要な駅がある。


 その中でも秋葉原は、桜菊祭の開催場所に近い。


「秋葉原駅......」


 彩葉は案内表示を探す。


 赤い文字で書かれた路線名が目に入る。


 人間の交通網は複雑だが、理解できる。


 電車に乗ればいい。


 彩葉はホームへ向かった。


 地下へ続く階段。


 風の流れが変わる。


 やがて電車が到着する。


 扉が開く。


 人が降り、人が乗る。


 彩葉もその中へ入った。


 座席に座ると、列車は再び動き出す。


 揺れと共に、都市の内部を進んでいく。


 地下のトンネルは暗いが、どこか生き物のようだった。


 光が流れ、影が流れる。


 やがてアナウンスが響く。


『秋葉原、秋葉原です』


 彩葉は立ち上がった。


 扉が開く。


 外へ出た瞬間、空気が一気に変わる。


 そこは京都とも違う、さらに異質な街だった。


 電気の光が溢れている。


 巨大な看板。


 人の声。


 電子音。


 あらゆる情報が混ざり合っている。


「ここが......秋葉原」


 彩葉はゆっくり歩き出す。


 人々の間をすり抜けながら、周囲を見渡す。


 守護者も、人間も、妖怪の気配も混ざっている。


 世界の境界が曖昧になる場所。


 桜菊祭の開催地に近いという理由が、少しだけ分かる気がした。


 ここはただの街ではない。


 世界が交わる場所だ。


 彩葉は胸の奥で静かに呟いた。


「......ここから、始まるんですね」


 新しい街。


 新しい出会い。


 そして、新しい物語。


 彩葉は一歩ずつ、秋葉原の中心へと歩き出した。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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