第七十八話 天神雷光・終焉の序曲
福岡県太宰府。
太宰府天満宮神域。
空は蒼白く割れていた。
そこに渦巻くのは、雷そのものの奔流。
菅原道真公の周囲に集まった神力は、もはや人の領域を超えていた。
風神が息を呑む。
「……これは、嵐どころではないのじゃ」
雷神も珍しく声を失う。
「天そのものじゃ……」
テンが低く呟く。
「神格領域、解放レベルです」
エフも目を細める。
「規格外です」
ハチロクは静かに見守っていた。
「懐かしいですね~」
彩葉はその光景に圧倒されていた。
「これが……道真公さんの力……」
怪鬼が一歩後退する。
「ナンダ……コレハ……」
菅原道真公はゆっくりと手を上げた。
その瞬間。
空の蒼雷が一本に収束する。
バチィィィィィィン!!
轟音。
空が裂けた。
怪鬼が叫ぶ。
「フザケルナァァァ!!」
滅界刀「黒禍」が振り下ろされる。
黒い斬撃と蒼い雷。
両者が正面から激突した。
ドゴォォォォォォォォォォン!!!
神域全体が揺れる。
風神が叫ぶ。
「山が割れるぞ!!」
雷神も歯を食いしばる。
「力が桁違いじゃ!!」
テンが分析する。
「エネルギー衝突規模……観測不能」
エフも静かに呟く。
「危険域を超えています」
彩葉は思わず手を握る。
「負けないで……!」
衝突の中心で。
怪鬼が歯を食いしばっていた。
「ナゼダ……!」
「ナゼ我ガ押サレル!!」
菅原道真公は静かに言う。
「君の力は」
「破壊だけだ」
「でもね」
「雷は違う」
その言葉と同時に。
蒼雷がさらに膨れ上がる。
バリィィィィィィン!!
怪鬼の刀にヒビが入る。
「バカナ!?」
怪鬼の顔に初めて焦りが浮かぶ。
「我ガ黒禍ガ……!」
ハチロクが小さく呟く。
「終わりますね~」
テンが頷く。
「ええ」
エフも同意する。
「決着です」
風神が叫ぶ。
「いけぇぇぇ!!」
雷神も続く。
「天神の雷じゃ!!」
菅原道真公が静かに目を閉じる。
「終わりにしよう」
そして。
目を開いた瞬間。
空全体の雷が一点に収束した。
蒼白の光。
それは雷というより。
天そのものの意志だった。
彩葉は息を呑む。
「綺麗……」
次の瞬間。
光が落ちる。
ドゴォォォォォォォォォォォォォォォン!!!
世界が白に包まれた。
数秒の静寂。
そして。
風が戻る。
雷が消える。
空が再び見える。
そこに立っていたのは。
菅原道真公。
静かに息を吐いた。
「……終わったね」
その前方。
怪鬼は膝をついていた。
「グ……ァ……」
滅界刀「黒禍」は砕け散っていた。
黒い霧がゆっくりと消えていく。
「バカ……ナ……」
怪鬼の身体が崩れ始める。
彩葉が駆け出そうとする。
「まだ……!」
しかしテンが止める。
「無理です」
エフも首を振る。
「崩壊が始まっています」
ハチロクは静かに見ていた。
「終わりですね」
風神が呟く。
「哀れじゃな……」
雷神も同意する。
「暴れすぎたのじゃ」
怪鬼が最後に笑う。
「ククク……」
「我ガ……敗レル……ダト……?」
菅原道真公は静かに言う。
「君は強かったよ」
「でも」
「世界を壊す力は」
「いつか必ず止められる」
怪鬼の身体が完全に崩れ始める。
「……クソ……」
「クソォォォォォォォォ!!」
そして。
黒い霧は空へ溶けていった。
静寂。
神域に戻る風。
彩葉はその場に立ち尽くした。
「終わった……」
テンが小さく息を吐く。
「任務完了ですね」
エフも頷く。
「被害最小で済みました」
ハチロクは微笑む。
「よかったです~」
風神と雷神は空を見上げる。
「久しぶりに暴れたのう」
「疲れたわい」
菅原道真公は空を見ていた。
そして。
彩葉に振り返る。
「さて」
「君の旅はまだ続くんだろう?」
彩葉はゆっくり頷いた。
「はい!」
強く。
迷いなく。
その答えに、神域の風が優しく吹いた。
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