第七十五話 集いし鋼の守護者たち
何者かの気配。
それも一つではない。
とてつもなく巨大な"力"の気配。
彩葉が顔を上げる。
「何の音?」
雷神が耳をぴくりと動かした。
「プロペラ音じゃ」
風神も空を見上げる。
「ここにヘリでも来たのか?」
その瞬間。
空から声が響いた。
「空撃・弾道ミサイル!」
怪鬼が目を見開く。
「ナンダ!?」
「ドォォォォォォォォォォン!!!」
巨大な爆発。
怪鬼の身体が吹き飛ばされる。
「グッ!?!?」
菅原道真公が微笑んだ。
「やあ、ひさしぶりだね。テン、エフ、ハチロク」
彩葉は驚きに目を見開く。
「この気配......守護者!」
黒い装甲とプロペラを備えた守護者がため息をついた。
「はぁ、余計な仕事が増えました」
滑らかな装甲を持つ少女が静かに言う。
「そう言って、一番早くに来たじゃないですか」
煙突のような帽子を被った少女が柔らかく笑う。
「あはは~~みんな仲良しね~」
プロペラの守護者。
「戦闘ヘリ『Z-10』の守護者『テン』」
漆黒の航空機の守護者。
「ステルス戦闘機『F-117』の守護者『エフ』到着......」
蒸気を纏う少女。
「8620形蒸気機関車8620の守護者『ハチロク』ただいま参りました」
彩葉は思わず声を漏らした。
「......」
風神が目を輝かせる。
「おぉ!! ハチロクと言えば『第一次共生世界大戦』で敵の原子力空母『ヨークタウン』を撃沈させた守護者ではないか!」
雷神も感心する。
「他の二人も強いときいておるぞ!」
「すごい......」
菅原道真公は頷いた。
「うん、心強いね......テンは遠距離からの爆撃、エフは姿を消して不意打ち、ハチロクはその耐久力とスピードから来る突進攻撃は守護者ナンバーワンといっていい」
怪鬼がゆらりと立ち上がった。
「......新タナ敵カ」
テンが肩を回す。
「ええ、敵です」
「しかも気持ち悪いタイプの」
エフも前に出る。
「神域を荒らすとは」
「許しません」
ハチロクはにこにこと笑った。
「皆さんをいじめる悪い子なんですね~」
「では叱らないとですね~」
怪鬼の全身から黒い霧が溢れた。
「雑魚ガ増エタダケダ!!」
「全員消シ飛バシテクレル!!」
漆黒の腕が無数に伸びる。
しかし。
「空撃・機関砲掃射」
ダダダダダダダダダ!!
テンの周囲から大量の弾丸が降り注いだ。
怪鬼の腕が次々と消し飛ぶ。
「グォォォ!?」
さらに。
エフの姿が消えた。
「消えた!?」
彩葉が驚く。
次の瞬間。
怪鬼の背後。
「そこです」
「ステルス・エッジ」
ズバァッ!!
「ガアアアアア!?」
怪鬼の背中が裂ける。
風神が歓声を上げる。
「速いのじゃ!!」
雷神も目を丸くする。
「まるで気配がなかったぞ!」
しかし。
怪鬼の身体が再生する。
「無駄ダァァァ!!」
黒い衝撃波。
テンが空中へ跳躍する。
「危ないですね」
ハチロクが一歩前へ。
「では私が」
シュゥゥゥ......
白い蒸気。
神域に汽笛が響く。
「発車しま~す」
次の瞬間。
「え?」
彩葉が目を見開いた。
ハチロクの姿が消えた。
いや。
速すぎて見えない。
「蒸気加速」
「全速前進~!」
「ドゴォォォォォォン!!!」
怪鬼の腹部に強烈な体当たり。
怪鬼の巨体が吹き飛び。
山を砕きながら転がっていく。
「ガハァッ!?」
風神と雷神が揃って叫ぶ。
「速い!!」
「なんじゃ今の!!」
彩葉も目を輝かせた。
「すごいです!!」
ハチロクは頭を掻く。
「あはは~」
「褒められると照れます~」
怪鬼が怒り狂う。
「調子ニ乗ルナァァァ!!」
空間が歪む。
無数の黒い穴。
そこから巨大な腕が現れる。
「死ネ!!」
数百本。
数千本。
異形の腕が神域を覆う。
菅原道真公が目を細めた。
「厄介だね」
テンも眉をひそめる。
「数が多いですね」
エフが冷静に分析する。
「迎撃しきれません」
その時。
ハチロクが帽子を押さえた。
「なら」
「皆さん」
「少し下がってください~」
彩葉。
風神。
雷神。
菅原道真公。
全員が後退する。
怪鬼が笑う。
「ナンダ?」
「諦メタカ!!」
ハチロクは優しく微笑んだ。
「いえいえ~」
「久しぶりに本気で走ります~」
テンの顔色が変わった。
「待って」
「まさか」
エフも珍しく驚く。
「ハチロクさん」
「それは......」
風神が首を傾げる。
「なんじゃ?」
雷神も不思議そうにする。
「どうしたのじゃ?」
ハチロクはにこっと笑った。
「大丈夫ですよ~」
「昔みたいに沈めたりはしませんから~」
そして。
彼女の周囲から。
凄まじい蒸気と神力が吹き上がった。
「――――え?」
彩葉は息を呑む。
神域全体が揺れ始めた。
地面が震える。
空気が唸る。
怪鬼ですら。
初めて表情を変えた。
「......ナンダ?」
そして。
蒸気の向こうで。
ハチロクの笑顔だけが見えていた。
「それでは~」
「特急列車、通過しま~す♪」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




