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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第七十四話 希望を運ぶ者


福岡県太宰府 太宰府天満宮 神域


「……私」


「みんなを守りたいです」


 その言葉と共に。


 彩葉(いろは)の身体から、柔らかな光が溢れ出した。


 白でもなく。


 金でもなく。


 どこか温かく。


 見る者の心を安らげるような優しい光。


 それは怪鬼の放つ禍々しい黒とは正反対の力だった。


 怪鬼の振り下ろそうとしていた腕が止まる。


「……?」


 風神が目を見開いた。


「なんじゃ……あの光は……」


 雷神も息を呑む。


「神力……いや、違う……」


 菅原道真公も驚いていた。


「……彩葉」


 彩葉自身も驚いていた。


「え?」


「わ、私?」


 両手を見る。


 ショルダーストラップを生み出す時の黒い魔力ではない。


 修行を経て無駄がなくなった、純粋な魔力。


 それが初めて完全な形で解放されていた。


 すると。


 彩葉の足元。


 地面に置いていたバッグが淡く輝いた。


「え?」


 バッグの口が開く。


 中から無数の光が飛び出した。


 怪鬼が赤い瞳を細める。


「ナンダ……?」


 飛び出した光は空中で形を変えていく。


 革。


 布。


 糸。


 金具。


 様々な素材。


 それらが絡み合い、一つの巨大な盾を形成した。


 そして。


 怪鬼の拳が振り下ろされる。


「消エロ」


 ドゴォォォォォォン!!


 轟音。


 神域が震える。


 しかし。


 彩葉の前に現れた光の盾は砕けなかった。


「えっ!?」


 彩葉が目を丸くする。


 怪鬼も初めて驚きを見せた。


「……ホウ」


 菅原道真公が小さく笑う。


「なるほど」


「そういうことか」


 彩葉が振り返る。


「道真公さん?」


 道真公は優しく微笑んだ。


「バッグとは物を入れるもの」


「運ぶもの」


「守るもの」


「しまうもの」


「君の力の本質は拘束じゃない」


「守護」


「そして繋ぐ力だ」


 彩葉は目を瞬かせる。


「守る……」


 風神が嬉しそうに笑った。


「ほれ見ろ!」


「小娘はやはり面白いのじゃ!」


 雷神も豪快に笑う。


「はっはっは!」


「まだまだ伸びるわい!」


 怪鬼が黒い霧を噴き出す。


「下ラナイ」


「希望ナド」


「無意味ダ」


 無数の断界兵が再び襲いかかる。


 しかし。


 彩葉のバッグが再び光る。


 次々に生まれる布。


 革。


 ベルト。


 ショルダーストラップ。


 それらは空中で編み込まれ、巨大な壁となる。


 ドドドドドドド!!


 断界兵たちが激突する。


 だが。


 突破できない。


 彩葉が驚いていた。


「すごい……」


「勝手に……」


 道真公が首を横に振る。


「違う」


「それは君が望んだからだ」


「守りたい」


「その気持ちに力が応えたんだ」


 怪鬼が不快そうに唸る。


「気ニ入ラン」


「気ニ入ラン!」


 空間が裂ける。


 巨大な黒い腕。


 何十本もの腕が彩葉を襲う。


「死ネ!!」


 彩葉は思わず目を閉じる。


 しかし。


「おっと」


 雷が落ちた。


 ズドォォォォォォン!!


 黒い腕が消し飛ぶ。


 雷神だった。


「小娘一人に任せるほど耄碌しとらんわ!」


 続いて暴風。


 風神が笑う。


「そうじゃ!」


「若い者ばかり働かせては神の名折れじゃ!」


 さらに。


 無数の光の文字が舞う。


 菅原道真公の結界。


「彩葉」


「今は守るだけでいい」


「戦うのはボクたちの役目だ」


 彩葉は大きく頷いた。


「はい!」


 怪鬼が叫ぶ。


「邪魔ダァァァ!!」


 怪鬼の身体から巨大な鎌が現れる。


 アリアを恐怖させた、あの邪悪な武器。


 それを見た瞬間。


 菅原道真公の表情が変わった。


「……その武器」


 雷神も険しい顔になる。


「なんじゃあれ」


 風神が珍しく笑顔を消した。


「嫌な気配じゃ……」


 怪鬼は笑う。


「ククク」


「神ヨ」


「コレガ見エルカ」


「断界ノ神器」


「万物ヲ切リ裂ク鎌」


 そして。


 振り上げた。


「終ワリダ」


 瞬間。


 嫌な予感が走る。


 菅原道真公の顔色が変わった。


「まずい!」


 振り下ろされる。


 ザンッ!!


 空間そのものが切断された。


「!?」


 風神が驚愕する。


「なっ!」


 雷神も目を見開いた。


「神域が!」


 神域そのものに巨大な亀裂が走る。


 空。


 庭園。


 梅の木。


 全てが割れていく。


 道真公が結界を張る。


「くっ……!」


 だが止まらない。


 彩葉が震える。


「そんな……」


 怪鬼の笑い声が響く。


「クハハハハハハ!!」


「切レロ!」


「壊レロ!」


「全テ断チ切レ!」


 神域全体が崩壊を始める。


 しかし。


 その時だった。


 神域の遥か上。


 雲の向こう。


 何者かの気配。


 それも一つではない。


 とてつもなく巨大な力の気配。


 風神が空を見上げた。


「……ん?」


 雷神も目を細める。


「誰か来る?」


 菅原道真公が小さく笑った。


「ふふっ」


「どうやら」


「太宰府の騒ぎを見ていた連中がいるみたいだね」


 その瞬間。


 割れ始めた空の向こうから。


 眩い光が一筋。


 神域へ向かって降り始めていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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