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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第六十九話 【梅花の神域と魔力の流れ】


 福岡県太宰府。


 太宰府天満宮神域。


 美しい日本庭園の中。


 風に揺れる梅の木々。


 静かに流れる小川。


 そして、神力に満ちた空間の中で。


 彩葉は修行を続けていた。


 先ほどまで何度も魔法を使っていたため、額には汗が浮かんでいる。


 しかし、その顔には疲れよりも真剣さが浮かんでいた。


 菅原道真公。


 学問の神であり、太宰府天満宮の神。


 そんな彼女は縁側に腰掛けながら、じっと彩葉を見ていた。


「はい!」


 彩葉は大きく返事をした。


 そして再び岩に向かう。


 手を前に突き出した。


「えっと……!」


「縛れ!」


 黒いショルダーストラップが出現する。


 岩をぐるぐると拘束した。


 しかし。


 その周囲には黒い靄のようなものが漏れ出していた。


 道真公は頷く。


「うん」


「やっぱり漏れてるね」


「魔力が駄々漏れだ」


「これじゃ長期戦になったらすぐに力切れを起こす」


「まずは魔力を流す感覚を覚えよう」


 彩葉は首を傾げた。


「流す?」


「はい」


「魔力って流れるんですか?」


 道真公は笑う。


「流れるとも」


「神力も魔力も妖力も霊力も、みんな似たようなものだ」


「体の中を巡る川のようなもの」


「必要な場所に必要な量だけ流せばいい」


「でも君は」


「川の堤防を壊して洪水を起こしているようなものだよ」


「それじゃ無駄が多い」


「なるほど……?」


「うーん……」


「難しいです」


 彩葉は困ったように笑った。


 すると道真公も笑った。


「ははっ」


「最初からできるわけないさ」


「だから修行するんだから」


「まずは座って」


「目を閉じて」


「自分の中を感じるんだ」


「自分の中?」


「うん」


「何も考えなくていい」


「呼吸を整えて」


「ゆっくり」


「そう」


 彩葉は正座した。


 目を閉じる。


 周囲の音が聞こえてくる。


 風。


 鳥のさえずり。


 小川の流れ。


 葉の揺れる音。


 そして。


 体の中。


「……」


「……あ」


 彩葉は小さく声を漏らした。


 何かが見えた。


 いや。


 感じた。


 暖かい。


 優しい。


 金色の光。


 体の中心から流れる光の川。


 それが全身に巡っていた。


「見えた?」


「はい!」


「なんだか……暖かいです!」


「うん」


「それが君の魔力」


「面白いな」


「普通、守護者の魔力は色々な色なんだけど」


「君の魔力は金色か」


「珍しい」


 彩葉は目を開けた。


「金色?」


「うん」


「さて」


「その流れを腕に集めてみよう」


「腕?」


「そう」


「右手だけに」


「全部じゃないよ」


「少しだけ」


「はい!」


 彩葉は集中した。


 すると。


 金色の流れが右手へ集まる。


「おぉ」


「なかなか上手い」


「初めてでこれは凄い」


「本当ですか!?」


「うん」


「じゃあ」


「その状態で魔法を使ってごらん」


「はい!」


 彩葉は岩を見た。


「縛れ!」


 シュン。


 現れたショルダーストラップ。


 しかし。


 今までと違う。


 黒い靄がない。


 美しく。


 滑らかで。


 無駄のない魔法。


「わぁ!!」


「できました!!」


 彩葉は目を輝かせた。


 道真公も微笑む。


「うん」


「成功だ」


「すごいじゃないか」


「これで魔力消費は十分の一以下になった」


「十分の一!?」


「そんなに!?」


「そうだよ」


「だから無駄って怖いんだ」


「それに」


「今の君なら攻撃にも使える」


「攻撃?」


「うん」


「ショルダーストラップは縛るだけじゃない」


「振り回す」


「叩く」


「切る」


「飛ばす」


「使い方は色々だ」


「君は発想力が足りない」


 彩葉は目を丸くする。


「そんなことできるんですか!?」


「もちろん」


「バッグって便利だろう?」


「物を入れる」


「運ぶ」


「守る」


「支える」


「繋ぐ」


「つまり」


「君の力は可能性の塊なんだ」


「可能性……」


「うん」


「だから面白い」


 道真公は湯飲みを手に取る。


「それに」


「君はまだ生まれたばかり」


「伸びしろしかない」


「たぶん」


「サクラ様も面白がるだろうね」


「サクラ様?」


「日本の守護者」


「会ったことは?」


「ありません!」


「ふふっ」


「まあ、そのうち会うことになるだろう」


「君ならね」


 彩葉は嬉しそうに笑った。


「会ってみたいです!」


「うん」


「さて」


「次の修行だ」


「まだあるんですか!?」


「当然」


「まだ初日だよ?」


「えええ!?」


 道真公は楽しそうに笑う。


「はははっ!」


「君、反応が面白いね」


「次は攻撃の練習」


「そして」


「魔法の形を変える練習」


「形?」


「そう」


「ストラップだけじゃない」


「バッグに使われる素材なら何でもいい」


「革」


「金具」


「ファスナー」


「チェーン」


「バックル」


「ボタン」


「君の可能性は無限大だ」


 彩葉の瞳が輝く。


「わぁ……!」


「なんだかワクワクしてきました!」


「うんうん」


「その調子」


「強くなるっていうのは」


「誰かを倒すためじゃない」


「守るため」


「助けるため」


「笑顔になるため」


「それを忘れちゃいけないよ」


 彩葉は力強く頷いた。


「はい!」


「頑張ります!」


 すると。


 その時。


 梅の木の向こう。


 神域の入り口の方から。


 微かに。


 誰かの気配が近付いてきていた。


 しかも。


 一つではない。


 複数。


 道真公の耳がぴくりと動く。


「……ん?」


 彩葉も首を傾げた。


「どうしました?」


 道真公は空を見上げる。


「お客さんかな?」


「珍しい」


「神域に来るなんて」


 そして。


 彼女は楽しそうに笑った。


「ふふっ」


「今日は賑やかになりそうだね」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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