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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第六十四話 混沌の残響と新たな旅路



広島県広島市。


黒い空が裂けるように歪んでいた空間は、ゆっくりと崩れ始めていた。


その中心。


空中にぽっかりと開いていた不気味な穴。


そこから伸びた腕。


それは人のものとも、神のものとも違う異質な存在だった。


ゼクロスは歓喜の表情でその方向へ叫ぶ。


「怪鬼様!」


その瞬間だった。


穴の奥から、冷たく、無機質で、それでいて圧倒的な威圧を含んだ声が響く。


「…………死ネ…………オマエハモウ不要ダ」


ゼクロスの表情が凍りつく。


「え……」


次の瞬間。


ドゴォォォォォォォン!!


漆黒の落雷が空間を貫いた。


ゼクロスの身体を直撃し、地面が爆ぜるように崩壊する。


「……ァ……ァァ…………な……ぜ………………」


その声は途中で途切れ、黒い霧へと変わっていった。


彩葉は目を見開く。


「!?」


アリアの声が震える。


「仲間なのに……」


灰原は静かに目を伏せる。


「見捨てた……ということですね」


アビが小さく拳を握る。


「ひどいなの……」


黒い空間の中から、再び声が響く。


「…………我、怪鬼、」


「コノ国ヲ混沌ニ落トス者ナリ…………」


その言葉と同時に。


腕はゆっくりと穴の中へ引き戻されていく。


空間の歪みも、まるで最初から何もなかったかのように収束していく。


やがて。


空は元の色を取り戻した。


雲は薄くなり、広島の空に静寂が戻る。


彩葉は小さく息を吐いた。


「……ッ……」


その場に残ったのは、戦いの痕跡と重い沈黙だけだった。


しばらくして。


アビが羽をばたつかせる。


「もう大丈夫なの?」


アリアは少し照れたように笑う。


「うん!バッチリ回復したよ!にへへっ」


灰原も安心したように頷く。


「元気そうで何よりです」


彩葉は少しだけ微笑み、そして問いかける。


「アリアさんは、これからどうするんですか?」


アリアは少しだけ真剣な表情に戻る。


「うん、いったん拠点に戻って報告するつもり」


彩葉は頷く。


「そうなんですね」


灰原が静かに一歩前へ出る。


「念のため、私が付き添います」


アビもすぐに手を挙げる。


「アビも行くなの!」


アリアは頭を下げる。


「ありがとうございます」


その場に、少しだけ穏やかな空気が戻る。


アビはふと彩葉を見る。


「彩葉はどうするなの?」


彩葉は少し空を見上げた。


広島の空。


さっきまでの戦いが嘘のように静かだった。


そしてゆっくりと答える。


「私は、また旅をしようと思います」


「自分の生まれたわけを探して」


「世界を旅するので」


灰原は小さく目を細める。


「そうなんですね」


「お気をつけて」


アビは笑顔で手を振る。


「なの!」


アリアも柔らかく微笑む。


「そうです!」


「福岡の太宰府天満宮に行ってくれませんか?」


彩葉は首を傾げる。


「どうして?」


アリアはそっと封筒を差し出した。


「これを」


彩葉は受け取る。


「封筒?」


アリアは頷く。


「そこには手紙が入っています」


「それを太宰府天満宮の神」


「菅原道真公に渡してほしいの」


彩葉は大事そうに封筒を見る。


「うん!わかった」


アリアの表情が明るくなる。


「ありがとうございます!」


灰原はさらに小さな板のようなものを差し出した。


「福岡に行くなら、これを」


彩葉は不思議そうに受け取る。


「板?」


灰原は説明する。


「それは電子地図です」


「世界のことが載ってる最新の地図ですよ」


「私はもう使わないので」


彩葉は驚きながら笑う。


「そうなんですね、ありがとうございます!」


灰原は静かに頷く。


「うん、気をつけて」


アビは元気いっぱいに飛び回る。


「なの〜!」


アリアは少し寂しそうに、それでも笑って言う。


「では、行きましょうか、彩葉さん。また」


彩葉は力強く頷く。


「うん!」


三人はそれぞれの道へ歩き出し、やがて姿が見えなくなった。


広島の空には、完全な静けさが戻っていた。


彩葉は一人、その場に立つ。


そして小さく息を吐く。


「………………よし!行こっと」


彩葉は歩き出す。


福岡を目指して。


新しい旅へ。


その頃。


福岡県太宰府天満宮。


静かな境内。


市女笠をかぶった人物が、ゆっくりと掃除を終えていた。


「……ふぅ、掃除はこのくらいでしょうか……」


ふと、空を見上げる。


梅の花が、いつもより鮮やかに揺れていた。


「……ん?」


「梅の花、いつもより綺麗ですね……」


小さく笑う。


「良いことがあるかもしれませんね」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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