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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第六十一話 死神の鎌



広島県広島市。


夕暮れの空。


戦いによって空気は荒れ、地面には無数の傷跡が残っていた。


倒された想霊たちは黒い霧となって消えていき、それでもなお広場には不気味な邪気が満ちている。


その中心。


ゼクロスの背後。


黒い空間から巨大な鎌が現れた。


それは先程までとは比較にならない邪悪な気配を放っていた。


そして。


その鎌を見た瞬間。


アリアの表情が恐怖に染まる。


「……うそ」


「その武器……」


「どうして……」


灰原(はいばら)が気付く。


「知っているんですか?」


アリアの身体が震えていた。


「……あれです」


「私を襲ったのは……!」


ゼクロスは狂気に満ちた笑みを浮かべる。


「クハハハハハハハ!!」


「思い出したか!」


「小娘!!」


笑い声が空に響く。


巨大な鎌からは黒い瘴気が溢れ出し、周囲の木々さえ枯れ始めていた。


アビが羽を広げる。


「嫌な気配なの!」


彩葉(いろは)も身構える。


「すごく……怖いです……」


ゼクロスは鎌を肩に担ぐ。


「この『冥喰鎌』を受けて生きていたとはな!」


「さすが六花衆!」


「だが運もここまで!」


「今度こそ始末してやる!!」


その言葉に。


灰原が反応した。


「……始末?」


「まさか、最初からアリアさんだけを狙っていたのですか?」


「その通り!」


ゼクロスは不気味に笑う。


「この小娘は断界同盟の邪魔者!」


「異世界との境界を守り、迷い込んだ異世界の住人を元の世界へ返す!」


「それでは困るのだ!」


「我ら断界同盟は世界を分断する!」


「人間と妖怪!」


「神と悪魔!」


「国と国!」


「世界と世界!」


「全てを争わせ、混沌を生み出す!」


「異世界の怪物どもをこの世界へ流し込み、戦乱を広げる!」


「そのためには境界を守る者など不要!!」


彩葉は目を見開いた。


「世界を……争わせる?」


「そんなことをして、どうするんですか!?」


ゼクロスは笑った。


「クハハハ!!」


「争いこそ進化!」


「憎しみこそ力!」


「混乱こそ真理!」


「我ら断界同盟は新たな世界を創るのだ!」


「壊れた世界の先にな!」


彩葉は首を振った。


「そんなの……」


「そんなの、絶対に違います!」


「皆が仲良くしている方が素敵です!」


「人間さんも!」


「妖怪さんも!」


「神様も!」


「守護者も!」


「みんな笑ってる方がいいです!」


ゼクロスは鼻で笑う。


「ガキめ」


「綺麗事を!」


「だから弱い!」


「だから利用される!」


「だから壊される!」


アビが前に出た。


「彩葉は間違ってないなの!」


「お前が間違ってるなの!」


「アビもそう思うなの!」


灰原も静かに立ち上がる。


「私もです」


「争いから生まれた存在だからこそ」


「争いの愚かさを知っています」


「あなたの思想には賛同できません」


ゼクロスは忌々しそうに顔を歪めた。


「うるさい!」


「黙れ!」


「黙れ黙れ黙れ!」


「力ある者が上!」


「弱者は支配される!」


「それが自然の摂理だ!」


アリアが震えながら前へ出る。


「……違います」


「違います!」


「異世界の人たちだって!」


「みんな生きているんです!」


「家族がいて!」


「友達がいて!」


「帰る場所がある!」


「だから私は守るんです!」


「それが私の役目です!」


ゼクロスの目が歪む。


「黙れぇぇぇ!!」


ブォン!!


巨大な鎌が振り下ろされた。


「危ないなの!」


アビが彩葉を抱えて飛び上がる。


ドォォォォン!!


地面が真っ二つに裂けた。


彩葉は青ざめる。


「すごい威力……!」


アビも表情を強張らせる。


「今までの相手とは違うなの……!」


ゼクロスは笑う。


「クハハハ!」


「恐怖したか!」


「これが怪鬼様から授かった力!」


「死を喰らう冥喰鎌!」


「触れた魂を削り取る呪われし武器!」


アリアが顔を青くする。


「……だから」


「だから私の力が……」


灰原は理解した。


「魂そのものを傷付けられた……」


「だから回復が遅いんですね」


「えぇ……」


アリアは悔しそうに拳を握った。


「ごめんなさい……」


「私がもっと強ければ……」


彩葉が振り向く。


「アリアさん!」


「謝らなくていいですよ!」


「一人で頑張ったんですよね?」


「逃げて!」


「ここまで来て!」


「それだけでもすごいです!」


アリアの瞳が揺れる。


「彩葉さん……」


ゼクロスが苛立った。


「仲良しごっこか!」


「くだらん!」


「まとめて消えろ!!」


ブワァァァァ!!


再び黒い空間が開く。


そこから。


十体。


二十体。


三十体。


大量の想霊が現れ始めた。


アビが叫ぶ。


「まだいるなの!?」


灰原も息を呑む。


「こんな数……!」


ゼクロスは両腕を広げた。


「クハハハハハハハ!!」


「絶望しろ!」


「恐怖しろ!」


「お前たちに希望などない!」


「ここで終わりだ!!」


黒い想霊の大群。


巨大な鎌。


狂気の笑みを浮かべるゼクロス。


その光景を見ながら。


彩葉は胸の奥で。


何かが熱くなっていくのを感じていた。


心臓。


血管。


全身を巡る魔力。


陽菜から受け取った知識。


小紅との戦い。


八咫鏡との出会い。


マミとの約束。


直や朱鬼との思い出。


灰原の涙。


アビの笑顔。


アリアの優しさ。


旅で出会った大切な人たち。


それらが胸の中で光となり。


小さな魔力が。


少しずつ。


少しずつ。


強く脈打ち始めていた。


そして。


誰にも気付かれないまま。


彩葉の瞳の奥で。


淡い紫色の光が静かに揺れ始めていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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