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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第六話 燃え盛る火縄


 夜の路地を、四つの影が駆け抜ける。


 彩葉は必死だった。


 右も左も分からない京都の街を、ただ陽菜の背中を追いかける。


 背後からは陰陽師たちの足音が迫ってきていた。


「待てッ!!」


「逃がすな!!」


 怒号が狭い路地へ響き渡る。


 彩葉は黒髪の少女――影の手を引きながら走った。


 影はほとんど喋らない。


 だがその手は小さく震えていた。


 隣を飛ぶ黒い小妖怪――喰も、何度も後ろを振り返っている。


「クソッ......しつこいやつらだ!」


 陽菜は角を曲がる。


 さらに細い道を抜ける。


 やがて視界が開けた。


 そこは古びた倉庫跡のような場所だった。


 広い空間。


 周囲に人の気配はない。


 崩れたフェンスと放置されたコンテナだけが静かに並んでいる。


 陽菜が足を止めた。


 彩葉たちも慌てて止まる。


「はぁ......はぁ......はぁ.....」


 彩葉は肩で息をする。


 だが陽菜は落ち着いた様子で周囲を見渡していた。


「......ふぅ、ここなら一般人を巻き込むことはない」


 その声には迷いがなかった。


 影は黙ったまま彩葉の後ろへ隠れる。


 喰が小さく唸った。


「......なぁ、あいつら、なんなんだ?」


「陰陽師。妖怪と、妖怪にくみする者を根絶やしにしようとする、野蛮で危険なやつ」


 陽菜は火縄銃を静かに構える。


 その時。


 パチ、パチ、パチ――。


 暗闇の奥から拍手が聞こえた。


「野蛮とは、ひどいですね。我々も本気で仕事をしているのに」


 三人の陰陽師が姿を現す。


 若い男。

 中年の男。

 そして先頭に立つ、鋭い目をした老人。


「あぁ!そうだ!」


 若い陰陽師が叫ぶ。


「さぁ、逃げないのですか?」


 ベテラン陰陽師は不気味な笑みを浮かべていた。


 陽菜は火縄銃を肩へ乗せる。


「あぁ、もう、余計なものに弾を当てる危険性はないからね......最後の忠告だ......法律のお世話になるか、ここで死ぬか選べ」


 静かな声だった。


 しかし、その空気は鋭い。


 陽菜の周囲だけ温度が下がったように感じる。


 だが陰陽師は笑った。


「ハッハッハッ!!法律だと?何を言う?我々は正義だ!妖怪などこの世にいてはならないのだよ!もちろん、妖怪にくみする者も、だ!」


「なっ!」


 喰が怒りで震える。


 彩葉も思わず拳を握った。


 胸の奥が熱い。


 苦しい。


 怒り。


 それが何なのか、まだ彩葉には完全には分からない。


 けれど。


「......ふざけないで!!」


 彩葉の声が夜空へ響いた。


 全員の視線が集まる。


「彩葉?」


「...生まれちゃいけない存在なんていない!!」


 彩葉は影と喰の前へ出る。


 身体は震えていた。


 それでも逃げなかった。


「私はまだ若いから、よくわかんないけど......それだけはわかる!」


 彩葉は陰陽師を睨む。


「それに、存在しちゃいけないのは!傷つける者だよ!!」


 静寂が訪れる。


 影が僅かに目を見開いた。


「......!」


 喰も驚いたように彩葉を見る。


「......おまえ......」


 陽菜は小さく笑った。


「......よく言った...」


 だが次の瞬間。


 ベテラン陰陽師が大きく笑い出した。


「クッハハハハハハハ!!!何を言うかと思えば、何をぬかす?小娘......もういい、ここで死ね」


 三人の陰陽師が一斉に札を構える。


 霊力が空気を震わせた。


 彩葉は咄嗟に影と喰を庇う。


 怖かった。


 だが逃げたくなかった。


 その時。


「問題ないよ......」


「!?」


 彩葉は振り返る。


 陽菜の雰囲気が変わっていた。


 その瞳が赤く染まっている。


 まるで燃え盛る炎のように。


 火縄銃の銃口がゆっくりと持ち上がる。


 空気が熱い。


 熱気が周囲へ広がっていく。


「......富士のご加護よ。我の狙うものを......燃やし尽くせ......!」


 火縄銃の銃口が赤熱した。


「な、なんだ!?」


「銃口が赤く......」


 陰陽師たちが動揺する。


 陽菜は静かに息を吐いた。


「......ッ!散弾・富士エネルギー弾・改......」


 ――パァァァァァンッ!!!


 凄まじい轟音。


 赤い炎の弾丸が無数に拡散した。


 それは単なる火ではない。


 霊力そのものを焼き尽くす神秘の炎。


「ぐ、がぁぁぁぁ!?!?」


 中年陰陽師の身体が燃え上がる。


「体が燃える!霊力が吸い取られる!」


 若い陰陽師も悲鳴を上げる。


 札が次々灰になっていく。


「く、くそう、こんなところで......」


 ベテラン陰陽師も膝をついた。


 やがて三人は力尽き、そのまま動かなくなる。


 静寂。


 夜風だけが吹き抜ける。


「すごい......」


 彩葉は呆然としていた。


 さっきまで優しかった陽菜とは別人のようだった。


 だが陽菜は火縄銃を下ろすと、いつもの穏やかな表情へ戻る。


「......ふぅ、こんなところかな。三人とも、怪我はない?」


「あぁ!オレもこいつもないぜ」


 喰が元気よく答える。


「はい!」


 彩葉も慌てて頷いた。


「うん、よかった」


 陽菜は安心したように笑う。


 喰は胸を張った。


「ありがとな!オレは喰!そんでもって、こいつは影だ!」


「......」


 影は無言のまま小さく頭を下げる。


「僕は陽菜。火縄銃の守護者さ」


「バッグの守護者、彩葉です!」

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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