第四十六話 芸術の島の風
瀨戸内海 直島。
柔らかな海風が吹き抜ける。
青い空。
穏やかな海。
どこかゆったりとした時間。
直島全体が優しい空気に包まれていた。
港から歩き始めた彩葉は、目に映るものすべてに感動していた。
「どこも素晴らしいです!風もさわやかで自然も綺麗で、皆さん笑ってます!......そういえば、ここに守護者はいないのでしょうか......?守護者の気配だけがありません......あ、あの!」
近くを歩いていた女性が振り向く。
「?...あ、守護者様、どうしました?」
「ここに守護者って住んでないの?気配がしなくて」
「あぁ、いますよ、今はお友達のところに行ってるようですよ」
「そうなんですね。ありがとうございます!」
「いえいえ」
彩葉は女性に手を振る。
「やっぱりいるんだ!あってみたいな」
女性も微笑みながら去っていった。
彩葉は再び歩き始める。
海辺の道。
小さな家々。
坂道。
緑豊かな山。
どこか懐かしいような景色。
「なんだか落ち着きます」
京都の山奥とも少し似ている。
だが、人々の雰囲気はまた違っていた。
観光客らしき人々も多い。
人間。
亜人。
妖怪。
様々な存在が楽しそうに歩いている。
誰も争わない。
誰も怯えていない。
平和な時間だった。
しばらく歩いていると。
「わぁ!」
彩葉の目が輝く。
そこには大きな赤い水玉模様のカボチャのようなオブジェがあった。
「大きいです!」
近くでは子供たちが楽しそうに写真を撮っている。
妖狐の親子。
角のある亜人の家族。
翼を持つ小さな妖精。
みんな笑顔だった。
彩葉も思わず笑顔になる。
「すごいなぁ」
さらに進む。
すると。
地面から生えているような不思議な石像。
空中に浮いて見えるオブジェ。
鏡のように光る彫刻。
色々な作品が並んでいた。
「芸術って面白いですね」
よく分からない。
でも楽しい。
不思議な気持ちだった。
すると。
「こんにちは!」
小さな女の子が駆け寄ってきた。
人間の女の子だ。
「こんにちは!」
彩葉も笑顔で返す。
「守護者様だ!」
「うん!」
「遊びに来たの?」
「そう!」
「楽しい?」
「すごく!」
「えへへ!」
女の子は嬉しそうに笑った。
すると母親らしき女性が慌ててやってくる。
「すみません!」
「大丈夫ですよ!」
「この子、守護者様が大好きで」
「そうなんですか?」
「うん!」
女の子は元気いっぱいに頷く。
「守護者様って優しいもん!」
彩葉は少し照れた。
「えへへ」
母親が頭を下げる。
「ありがとうございます」
「?」
「昔からこの島は守護者様に助けられてきましたから」
「そうなんですね」
「はい」
母親は微笑んだ。
「だからみんな守護者様が大好きなんです」
彩葉は嬉しくなった。
日本では守護者は神様のように扱われている。
それは知識として知っていた。
でも、こうして実際に言われると嬉しいものだった。
女の子が元気よく手を振る。
「ばいばーい!」
「またね!」
彩葉も手を振る。
そのまま島の奥へ。
坂道を登る。
木々の間から海が見える。
とても綺麗だった。
「わぁ......」
瀨戸内海。
無数の島々。
青い海。
空。
白い雲。
その景色に思わず見惚れる。
すると。
どこからか楽しそうな音が聞こえてきた。
太鼓。
笛。
そして人々の声。
「お祭り?」
彩葉は音のする方へ向かった。
しばらく進む。
すると。
「わぁぁ!」
広場だった。
そこには屋台が並び、多くの人々で賑わっていた。
「すごーい!」
桜菊祭ほどではない。
だが、島ならではの温かさを感じる祭りだった。
焼き魚。
たこ焼き。
焼きとうもろこし。
綿あめ。
射的。
輪投げ。
そして。
絵を描く体験会。
陶芸体験。
木彫り体験。
芸術の島らしい催しも行われていた。
「面白そう!」
彩葉は目を輝かせる。
その時だった。
「ん?」
ふと。
遠くから僅かな気配を感じた。
「!」
彩葉が振り向く。
守護者の気配。
間違いない。
「いた!」
しかし。
その気配は一つではなかった。
「え?」
二つ。
いや。
三つ?
「守護者さんが三人?」
彩葉は驚いた。
今まで出会った守護者はほとんど一人だった。
それなのに。
直島には複数の守護者がいる。
「すごい!」
彩葉は嬉しくなる。
どんな人だろう。
どんな守護者なんだろう。
気になる。
会ってみたい。
話してみたい。
そんな気持ちが溢れてきた。
すると。
その気配の一つがこちらへ向かってくる。
「?」
彩葉は首を傾げた。
人混みの向こう。
屋台の間。
誰かが歩いてくる。
そして。
人々が自然と道を開けた。
「お?」
「帰ってきた!」
「おーい!」
島の人たちが笑顔で手を振っている。
どうやら島の人々と親しいらしい。
彩葉も背伸びして見ようとする。
「どんな人なんでしょう?」
そして。
少しずつ。
その姿が見え始めていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




