表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/81

第四十七話 直島の守護者たち



 瀨戸内海 直島。


 柔らかな潮風が吹き抜ける港の広場。


 そこに現れた白髪の少女に、島の空気がふわりと揺れた。


「……あ、」


 彩葉の視線の先。


 白い髪を風に揺らし、大きな大剣を背負った少女が、ゆっくりと歩いていた。彩葉(いろは)


 その姿はどこか自然で、島の風景に溶け込んでいるようでいて、それでいて圧倒的な存在感を放っていた。


「……うん、ただいま。楽しんでる?」


 少女は周囲に笑顔を向ける。


 港の男性がすぐに返事をした。


「はい!」


「守護者様~!」


 女性たちも手を振る。


 子供たちは一斉に駆け寄った。


「守護者さま~!」


「遊んで~!」


「遊んで~!」


 白髪の少女は困ったように微笑む。


「うん、後でね」


 優しい声。


 だが、その言葉にはどこか慣れた響きがあった。


 人々にとって、それは日常の一部のようだった。


 そんな彼女の背後から、さらに二つの影が現れる。


「おいおい、はぐれるなよ。直」


 赤い髪に一本角を持つ少女が呆れたように言う。


「そりゃこっちのセリフだろ」


 もう一人。


 クリーム色の髪の少女が小走りで追いついてくる。


「待ってください~!」


 三人のやり取りは自然で、長い付き合いを感じさせた。


 白髪の少女は振り返る。


「ん、二人が遅いだけ」


「いやいや、あんたが早すぎるんだって」


「……すみません、皆さん見てますし、喧嘩は……」


 クリーム色の少女が慌てて間に入る。


 その様子を見ていた彩葉は、小さく首を傾げた。


「……あれ?三人かと思ったけど、守護者は二人だ、あの二人の気配が混じってて角の子から守護者の気配を感じた……この気配は、えっと、感じたことのない気配です」


 思わず小声で呟いたその瞬間。


「なに一人で言ってんだ?」


「!?」


 背後から声。


 彩葉は慌てて振り返る。


「すみません!考え事をしていて……」


 そこには赤い角の少女が立っていた。


「そうか、ならよかった。あ、私は朱鬼(しゅき)!鬼人だ」


「バ、バッグの守護者彩葉です!」


 少し緊張しながらも頭を下げる。


「……鬼人?」


「鬼人は人間と妖怪“鬼”のハーフです。今では陰陽師の影響で、朱鬼さんくらいしか残っていないんです」


 クリーム色の少女が丁寧に説明する。


「私は塔風(とうか)。“男木島灯台”の守護者です」


「こんにちは!」


 彩葉は元気に返した。


 すると、白髪の少女がゆっくりと歩いてくる。


「二人とも、ここにいたの。……あれ、知らない子」


「あぁ、彩葉だ。多分観光だろ」


 朱鬼が軽く紹介する。


「この人は直島の守護者“直”さんです。とても強い方ですよ」


「こんにちは!バッグの守護者“彩葉”です!」


「朱鬼、そんな言い方するなよ。私だって強いぞ!」


「ひぃ!ごめんなさい!」


 塔風が慌てて縮こまる。


「そ、そこまでビビるか」


 朱鬼が苦笑する。


「塔風は気弱なんだから」


 直が淡々と告げた。


 そのやり取りに、島の空気はどこか和やかだった。


 しかし彩葉は、その中に混ざる“違和感”を感じていた。


(この三人……)


 完全に一つの組織ではない。


 だが、同じ場所に立っている。


 まるで役割の違う守護者が、自然に共存しているようだった。


「すごいですね……直島って」


 彩葉が思わず呟くと、朱鬼が笑う。


「まあな。ここはちょっと特殊なんだよ」


「特殊?」


「守護者が一人の役割に縛られてない」


 直が静かに言う。


「ここは“芸術と調和”の島だからな。守る形も一つじゃない」


「へぇ……」


 彩葉は目を丸くする。


 これまで出会ってきた守護者たちは、それぞれ強い使命や組織に属していた。


 しかしここでは違う。


 役割が柔らかい。


 境界が曖昧だ。


 その分、自由で。


 その分、強く見えた。


 塔風が小さく手を振る。


「あの、よかったら案内しますか?」


「いいのか?」


「は、はい!島のことなら少しは……!」


 朱鬼が笑う。


「じゃあ決まりだな」


 直も軽く頷いた。


「観光客は歓迎だ」


 こうして彩葉は三人に案内される形となった。


 島の坂道を歩く。


 白い壁の家。


 アート作品の間を抜ける風。


 観光客の笑い声。


 そのすべてが混ざり合っている。


「ここ、昔はただの漁村だったんだ」


 朱鬼が言う。


「でもな、今は“守るもの”が変わった」


「守るもの……」


「戦うだけが守護じゃない」


 直が続ける。


「この島は、それを教えてくれる場所だ」


 彩葉は静かに頷いた。


 その言葉は、胸の奥に残る。


(守る形は一つじゃない……)


 今までの旅で出会ったすべてが繋がっていく感覚。


 そのときだった。


 塔風が空を見上げる。


「あれ……?」


 朱鬼も視線を上げる。


「おい、今の気配……」


 直が剣に軽く手を添える。


 空気が一瞬だけ変わる。


 穏やかな島の風の中に、ほんのわずかな“歪み”が混じった。


 彩葉も感じ取った。


「これは……」


 朱鬼が呟く。


「いや、まだいい。今は騒ぐ時間じゃない」


 直が静かに制する。


 塔風が小さく頷く。


「観光客もいますし……」


 彩葉はその空気を感じながらも、言葉を飲み込んだ。


 島の平和。


 今はそれを壊すべきではない。


 しかし確かに何かが近づいている。


 それだけは、分かっていた。


 直が歩き出す。


「案内の続きだ」


 朱鬼が肩をすくめる。


「せっかくだし楽しめよ、彩葉」


 塔風も笑う。


「はい、ゆっくり見ていきましょう」


 彩葉は小さく頷いた。


「はい!」


 だが胸の奥では、次の旅の気配が静かに動き始めていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ