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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第三十七話 讃岐山脈の異変



 ニーミと別れた後。


 彩葉とマミはさらに讃岐山脈の奥へと進んでいた。


 人の手が入った道はいつの間にか消えている。


 周囲には巨大な杉や檜が立ち並び、昼間だというのに薄暗い。


 木漏れ日が地面へまだら模様を描いていた。


 風が吹く。


 枝葉が揺れる。


 だがそれ以外の音が少ない。


 静かすぎるのだ。


 彩葉は周囲を見回した。


「なんだか変ですね」


 マミが頷く。


「うん」


「静かすぎる........................」


「鳥もいない.......................」


 言われてみればそうだった。


 山へ入る前は鳥の鳴き声が聞こえていた。


 だが今は何も聞こえない。


 虫の音すらない。


 まるで山そのものが息を潜めているようだった。


「祟面の影響?」


 彩葉が聞く。


 マミは少し考えた後に答える。


「たぶん.......................」


「封印はまだ機能してる」


「でも漏れ出した気配だけで普通の生き物は近寄らなくなる」


 彩葉は思わず山の奥を見る。


 まだ姿は見えない。


 それでも不気味な圧力だけは確かに感じる。


 巨大な何かが眠っている。


 そんな感覚だった。


 二人はさらに進んだ。


 やがて森の奥に小さな祠が見えてくる。


 苔むした石段。


 崩れかけた鳥居。


 そして古い社。


「あれは?」


 彩葉が指差す。


 マミも足を止めた。


「山の守り祠」


「守り祠?」


「封印を補助する施設」


 彩葉は驚いた。


「こんなところにも?」


「うん.......................」


 マミは静かに近付いていく。


 彩葉も後に続いた。


 そして祠の前に到着した時。


「......あれ?.......................」


 彩葉は眉をひそめる。


 何かがおかしい。


 鳥居の一部が黒く染まっていた。


 まるで墨を塗ったような不気味な色。


 さらに社の周囲には黒い靄が漂っている。


 マミの顔色が変わった。


「まずい」


「え?」


「侵食されてる」


 彩葉も慌てて近付く。


 確かに黒い靄が社へまとわりついている。


 そして。


 バキッ。


 嫌な音が響いた。


 鳥居の一部にひびが入る。


「!?」


 彩葉が驚く。


 次の瞬間。


 黒い靄が集まり始めた。


 ぐにゃり。


 ぐにゃり。


 形が生まれる。


 人型。


 獣型。


 様々な姿が入り混じる。


 やがて三体の異形となった。


 目だけが赤く光っている。


「想霊!」


 彩葉が叫ぶ。


 マミは静かに前へ出た。


「下がって」


「でも!」


「いいから」


 マミの声は静かだった。


 だが強い。


 彩葉は一歩下がった。


 三体の想霊が唸る。


「グルルルル......」


「アアアア......」


 その姿は不安定だった。


 まるで無理やり形を保っているように揺らいでいる。


 マミは地面に落ちていたバスケットボールを拾った。


 いや。


 正確には魔力で生み出したものだ。


 橙色の球体が彼女の手の中に現れる。


「消えて」


 短く告げる。


 そして。


 ドンッ!


 ボールを投げた。


 空気が震える。


 信じられない速度だった。


 一体目の想霊に直撃する。


 瞬間。


 ドォォォン!!


 爆発。


 巨大な火花が散った。


 想霊は悲鳴を上げる暇もなく消滅する。


「すごい!」


 彩葉が目を輝かせた。


 だが残り二体は止まらない。


 一斉に襲い掛かる。


「ガアアアアア!!」


「アアアアア!!」


 マミは冷静だった。


 再びボールを生成する。


 一つ。


 二つ。


 三つ。


 そして。


 ドドドドドッ!!


 連続で投げ放った。


 爆音が山へ響く。


 閃光。


 衝撃波。


 木々が揺れる。


 やがて煙が晴れると。


 想霊たちは消えていた。


 彩葉は思わず拍手した。


「すごいです!」


「......普通」


 マミは少し照れたように視線を逸らす。


 だが次の瞬間。


 彼女の表情が険しくなった。


「おかしい」


「え?」


「今の程度の想霊がここにいるはずない」


 彩葉も真剣になる。


「どういうこと?」


「封印区域の外側」


「本来ならもっと下にいる」


「ここまで上がってくることはない」


 つまり。


 何かが起きている。


 彩葉も理解した。


 その時だった。


 ズズズズズ......


 地面が震えた。


「!?」


 二人は同時に振り向く。


 山の奥。


 さらに先。


 封印のある方向だ。


 微かな揺れ。


 だが確かに感じる。


 そして。


 ドクン。


 彩葉の胸が脈打った。


 心臓ではない。


 血管を流れる魔力が反応している。


 嫌な予感。


 危険信号。


 それが全身を駆け巡る。


「今の......」


「感じた?」


 マミが聞く。


 彩葉は頷く。


「はい」


 マミは険しい顔をした。


「封印の気配が弱くなった」


「えっ!?」


 彩葉は目を見開いた。


 封印が弱くなる。


 それはつまり。


 祟面が目覚めに近付いているということだ。


 山の奥から再び震動が伝わる。


 ドクン。


 ドクン。


 まるで巨大な心臓が脈打っているようだった。


 彩葉は拳を握る。


 怖い。


 正直怖い。


 だが。


 逃げたいとは思わなかった。


「行きましょう」


 彩葉が言う。


 マミは少し驚いた顔をした。


「怖くないの?」


「怖いです」


 彩葉は正直に答える。


「でも」


 そして前を見る。


 山の奥。


 封印の眠る場所。


「放っておけませんから」


 マミは少しだけ笑った。


 本当に少しだけ。


「......うん」


 二人は歩き出す。


 讃岐山脈のさらに奥へ。


 封印の真実へ。


 そして眠る災厄へ向かって。


 その先で待つものをまだ知らぬまま。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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