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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第三十一話 平和公園に残る記憶



 香川県さぬき市。


 四国へ渡った翌日。


 彩葉は朝日と共に目を覚ました。


 もっとも守護者である彩葉に睡眠は必須ではない。


 だが旅を始めてからは、人間たちと同じように朝を迎え、夜を過ごすことが少し好きになっていた。


 東の空から昇る太陽。


 鳥のさえずり。


 木々を揺らす風。


 それらを感じる時間が好きだった。


「いい朝です」


 彩葉は小さく伸びをした。


 見上げれば青空が広がっている。


 雲は少ない。


 絶好の観光日和だった。


「今日はもっと色々見て回りましょう!」


 その時だった。


 遠くから妙な音が聞こえてきた。


 プロペラ音。


「ブロロロロロロロロロ......」


「え?」


 彩葉は空を見上げた。


 そこにいた。


 黒い霧のようなオーラを纏う巨大な存在。


 翼を持ち。


 複数のプロペラを回転させ。


 機械の塊のような姿をしている。


 その姿は陽菜から受け継いだ知識の中にあった。


「え!?爆撃機......!?」


 彩葉は思わず声を上げた。


 だが普通の爆撃機ではない。


 黒い霧に包まれている。


 あれは想霊だ。


 強い負の感情から生まれた存在。


 しかもかなり大きい。


 下では人々が不安そうに空を見上げている。


 慣れているようにも見えた。


 すると。


 地上から何かが飛び上がった。


「バスケットボール?」


 球体だった。


 次の瞬間。


 ドカァァァァァァァァン!!


 凄まじい爆発。


 黒い球体が爆撃機型想霊へ直撃した。


 爆発と共に想霊の身体が大きく揺れる。


 黒い霧が散る。


「!?」


 彩葉は驚いた。


 あんな攻撃ができる者がいるのか。


 想霊はまだ消滅していない。


 しかし逃げるように遠ざかっていく。


 やがて空の彼方へ消えていった。


 周囲の人々は安堵している。


 どうやら日常的な出来事らしい。


「あの子か、あの子はまだ囚われて......」


 彩葉は近くにいた老人へ声を掛けた。


「あの......」


「ん?」


 老人が振り向く。


「あぁ、守護者様、なにかご用で」


「今のは......」


 老人は空を見上げた。


「あぁ......あの想霊は"あの戦争"の副産物じゃよ......そしてあの爆発は"あの子"の仕業じゃよ」


「あの子?」


「うむ」


 老人は少し寂しそうに笑った。


「よかったらさぬき市平和公園に行ってみると良い......そこであの子に会うと良い」


「......わかりました。色々教えてくれて、ありがとうございました!」


「いやいや、私はもう長くないから話したくなるものじゃよ」


 彩葉は頭を下げた。


 そして老人から受け取った地図を見る。


「さぬき市平和公園......」


 少し離れているらしい。


 彩葉は歩き始めた。


 朝の街を抜ける。


 住宅街を通る。


 田畑の横を歩く。


 やがて町並みは少しずつ静かになっていった。


 そして。


「......えっと、こっち?......あ、あれかな............なんとか小学校?」


 遠くに建物が見えた。


 しかし近づくにつれて彩葉の足は遅くなった。


「......」


 妙だった。


 空気が重い。


 胸の奥が締め付けられるような感覚。


 目の前にあるのは学校だったらしい。


 だが今は廃校になっている。


 校舎は崩れていた。


 壁は焼け焦げている。


 窓もない。


 骨組みだけが残っている。


 まるで大火災でも起きたようだった。


 しかし。


 体育館だけは違った。


 綺麗だった。


 新しく見える。


 周囲との違和感が凄まじい。


「......」


 彩葉が見つめていると。


 後ろから声がした。


「体育館だけ綺麗でしょう?」


「!」


 振り向く。


 そこには一人の老婆が立っていた。


「はい......それになんだか心が締め付けられるような感じの場所です......」


「そうだろう」


 老婆は校舎を見た。


「ここは空爆でボロボロになったんだよ......」


「空爆......」


「それにあの体育館はね。"あの子"のために市が作り直したんだ......寂しくないようにね......」


 彩葉は体育館を見る。


 誰かのために。


 それだけで建て直したのだろうか。


「あの、聞いても良いですか?」


「なんだい?」


「"あの子"って......」


「あなた様と同じ......守護者様だよ」


「守護者......」


「うん」


 老婆は頷いた。


「あの子は人間と遊ぶのが好きだったと聞いているよ......私は別の学校だったから聞いただけだがね......」


 彩葉は体育館を見つめた。


 人間と遊ぶのが好きな守護者。


 どんな守護者なのだろう。


「............なにか前にあったんですか?空爆って......」


 老婆の表情が少し曇る。


 遠くを見るような目になる。


「第一次共生世界大戦......」


「なんですか、それ......」


「知らないかい?別名『第二次世界大戦』とも言われているけど」


「はい......すみません、生まれたばかりで......」


「まぁ、仕方ないね......」


 老婆はゆっくり語り始めた。


「第一次共生世界大戦、別名『第二次世界大戦』......人間以外の存在との共存を目指す日本側と、人間以外の存在を兵器や道具として使おうとするアメリカ側の戦争じゃよ......」


 彩葉は息を呑んだ。


 そんな戦争があったのか。


 知らなかった。


「......どうして、日本側は共存を選んだんでしょう。どうしてアメリカ側は兵器や道具として使おうとしたんでしょう......」


 老婆は首を横に振る。


「アメリカ側の思考は私にゃわからん」


 そして微笑んだ。


「だが、この国では昔っから守護者は神と同等として扱っていた......それに八百万の神として祭っているところもあるからの」


「そうなんですね......」


「詳しいことは"あの子"に聞いてみると良い」


 老婆は体育館を指差した。


「あの体育館にいると思うから」


 彩葉はそちらを見る。


 風が吹いた。


 体育館の入口は静かに開いている。


 誰かがいる。


 そんな気配が確かにあった。


「はい!ありがとうございました!」


 彩葉は頭を下げる。


 老婆も微笑んだ。


「気をつけてお行き」


「はい!」


 彩葉は歩き出した。


 一歩。


 また一歩。


 静かな校庭を進む。


 焼け焦げた校舎の横を通る。


 胸の奥が少し苦しい。


 悲しみ。


 後悔。


 怒り。


 様々な感情が染み込んでいるような場所だった。


 やがて。


 体育館の入口へ辿り着く。


 中は静かだった。


 風の音だけが聞こえる。


 そして。


 彩葉は感じた。


 確かにいる。


 人間を守ろうとした誰かが。


 今もこの場所に。


 ずっと。


 ずっと。


 残り続けていることを。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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