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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第三話 眠らない街の灯


「......はい!」


 山道を下りきった二人は、ついに街へと辿り着いていた。


 京都。


 古い歴史を持ちながらも、現代の灯りに照らされる巨大な都市。


 夜だというのに街は明るかった。


 建物の窓から漏れる灯り。

 道路を走る車。

 行き交う人々。

 色鮮やかな看板。


 彩葉は目を輝かせながら周囲を見回していた。


「すごい......」


「あはは、初めて見ると驚くよね」


 陽菜は慣れた様子で歩きながら笑う。


 彩葉は立ち止まっては色々なものを見つめ、また歩き出す。


 まるで小さな子供のようだった。


「おいで、夜だけど、案内するよ」


「はい!」


 二人は街の中へ入っていく。


 アスファルトの道路を歩く感覚も、彩葉には新鮮だった。


「......硬いです」


「それは道路だね。人間が歩きやすいように作ったんだ」


「人間って、すごいんですね......」


「まぁ、便利な物を作るのは得意だね」


 その時。


 大きなバスが横を通り過ぎた。


 ブォォォンッ――。


「ひゃっ!?」


 彩葉が驚いて陽菜の後ろへ隠れる。


 陽菜は思わず吹き出した。


「あはは!大丈夫大丈夫、あれは車だよ」


「く、車......」


「人間の乗り物」


 彩葉は恐る恐る道路を見る。


 様々な形の車が行き交っていた。


 小さいもの。

 大きいもの。

 光るもの。


「速い......」


「便利だからね。遠くまで行けるんだ」


「遠く......」


 彩葉は再び街を見回した。


 ここには、自分の知らないものが無数に存在している。


 その全てが新鮮だった。


 二人は商店街へ入る。


 夜だというのに開いている店も多い。


 飲食店から漂う香りに、彩葉はぴたりと止まった。


「......?」


「ん?」


「なんだか......いい匂いがします」


「あぁ、ご飯だね」


「ごはん......」


 彩葉のお腹が小さく鳴った。


 自分でも驚いたように目を丸くする。


「......今の、なんですか?」


「お腹空いたんじゃない?」


「お腹......?」


「守護者もエネルギー補給は必要だからね。人間ほどじゃないけど」


 陽菜は屋台へ向かう。


「せっかくだし、食べてみる?」


「た、食べる......」


 陽菜が買ってきたのは、湯気の立つたこ焼きだった。


「はい」


 彩葉は恐る恐る受け取る。


 ふわふわしていて温かい。


「............」


 一口食べる。


「......!!」


 彩葉の目が大きく開かれた。


「おいしい......!」


「あはは、気に入った?」


「はい......!すごいです!温かくて、柔らかくて......!」


 彩葉は夢中になって食べ始める。


 陽菜はそんな様子を見ながら笑っていた。


「生まれたばかりの守護者って、みんなそういう反応するんだよね」


「みんな......?」


「うん。初めて世界を知るから」


 彩葉はたこ焼きを見つめる。


 これもまた、自分の知らない世界の一つだった。


 しばらく歩いていると、彩葉はふと空中を見上げた。


 そこには、宙に浮かぶベンチがあった。


 さらに花瓶や街灯の一部までもが、空中に浮遊している。


「あ、あの、さっきから気になってたんですが......色々なものが浮いていたりするのですが......」


「ん?あぁ、天空石を加工して作られた、ベンチや物を置くための土台、花瓶とかだよ」


「天空石?」


「あぁ、神界でとれる不思議な空飛ぶ空色の石だよ」


「そうなんですね」


 彩葉は空中に浮かぶベンチをじっと見つめる。


「神界って......神様がいる場所ですか?」


「そうそう。天使とか神様とか、そういう存在が住んでる場所」


「神様......本当にいるんですね......」


「この世界だと割と普通だよ」


 陽菜は空を見上げた。


「まぁ、人間には見えないことも多いけど」


「見えない?」


「存在が違うからね。認識できる人間は少ない」


 彩葉は周囲を見る。


 人々は楽しそうに歩いている。


 だが誰も、浮いている花瓶を不思議そうには見ていなかった。


「......慣れてるんですね」


「京都は特にね。昔から妖怪とか精霊とか、そういう存在と近かった街だから」


 すると突然、彩葉の前を小さな光が横切った。


「......?」


 ふわふわと飛ぶ、小さな人影。


 羽を持った、小指ほどの大きさの存在。


「妖精......?」


「うん。街灯の光に集まってるんだ」


 妖精たちは笑い声を上げながら飛び回っている。


 その隣では、角を生やした小さな鬼の子供がジュースを飲んでいた。


 さらに屋根の上では白狐が丸くなって眠っている。


 彩葉は息を呑む。


「すごい......」


「この世界は、人間だけの世界じゃないからね」


 陽菜は静かに言った。


「色んな存在が、同じ世界で生きてる」


 彩葉はその言葉を胸の中で繰り返す。


 世界。


 それは思っていたより、ずっと広かった。


 知らないものばかりだった。


 だが不思議と怖くはない。


 むしろ――。


「......もっと、知りたいです」


 その言葉に、陽菜は少しだけ目を細めた。


「そっか」


 夜風が吹く。


 街の灯りが揺れる。


 彩葉は空を見上げた。


 月はまだ高い場所にあった。


 その光は、これから始まる旅路を静かに照らしているようだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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