第二十六話 活気あふれる街
大阪府大阪市。
巨大な駅から外へ出た彩葉は、その光景に思わず目を輝かせた。
「わぁ~!!大きな建物がいっぱいです!!!」
見上げるほど高いビル。
巨大な商業施設。
縦横無尽に走る道路。
行き交う無数の人々。
東京でも驚いた彩葉だったが、大阪にはまた違った雰囲気があった。
東京は整然としていて忙しそうだった。
けれど大阪は賑やかだった。
人々の声が大きい。
笑い声も多い。
どこか明るい。
そんな印象を受けた。
「なんだか元気な街ですね」
彩葉は周囲を見回しながら歩き始めた。
駅前には大きな広場がある。
待ち合わせをしている人。
写真を撮っている観光客。
急ぎ足で歩く会社員。
様々な人がいた。
彩葉は一人一人を眺めながら進む。
守護者として生まれてまだ日が浅い。
だからこそ、人間たちの何気ない日常も新鮮だった。
「みんな楽しそうです」
そう呟いた時だった。
近くで子供たちが走り回っている。
「待てー!」
「捕まえてみろー!」
元気な声が響く。
彩葉は思わず笑顔になった。
「ふふっ」
楽しそうだ。
ただ遊んでいるだけ。
それなのに見ているだけで少し楽しい気持ちになる。
人間とは不思議な存在だな、と彩葉は思った。
しばらく歩いていると、商店街のような場所へたどり着いた。
アーケードの天井。
左右に並ぶ店。
食品店。
衣料品店。
雑貨店。
飲食店。
様々な店が並んでいる。
「すごいです…………」
彩葉はきょろきょろと辺りを見回した。
見たことのない商品も多い。
派手な看板もある。
店員たちの呼び込みも聞こえる。
「いらっしゃい!」
「安いよー!」
「今だけだよー!」
元気な声が飛び交う。
彩葉は少し圧倒されながらも楽しそうに歩いていた。
すると。
どこからか香ばしい匂いが漂ってきた。
「?」
彩葉の足が止まる。
匂いの方向を見る。
そこには鉄板を使った屋台のような店があった。
丸い生地が並んでいる。
くるくるとひっくり返されている。
「なんでしょう」
興味津々で見つめる。
守護者は食事をしなくても生きていける。
だが食べられないわけではない。
むしろ味覚はある。
彩葉は今まで何度か食べ物を口にしていた。
人間の食文化は面白い。
だから見ているだけでも楽しい。
「丸いですね」
鉄板の上で焼かれているそれを眺めながら呟く。
しばらく見ていると完成した。
湯気が立つ。
香ばしい匂いが広がる。
「美味しそうです……」
彩葉は思わず言ってしまった。
だが今日は見るだけにした。
まだ行きたい場所がある。
もっと街を見てみたい。
そう思ったからだ。
商店街を抜ける。
今度は大通りへ出た。
車が多い。
信号も多い。
人の流れも絶えない。
彩葉は歩きながら空を見上げた。
「大阪……」
新しい土地。
新しい景色。
旅を始めてから色々な場所へ行った。
京都。
東京。
伊勢。
そして大阪。
それぞれ全く違う。
同じ日本なのに。
街も。
文化も。
人々も。
少しずつ違う。
それが面白かった。
「世界って広いんですね」
まだ日本しか見ていない。
それでも広いと感じる。
なら海外はどれほど広いのだろう。
彩葉は少し想像してみた。
小紅の故郷である中国。
アテナが所属する神々の組織。
遠い国々。
まだ見ぬ土地。
考えるだけでわくわくした。
しばらく歩く。
やがて川が見えてきた。
大きな橋。
その向こうにはさらに大きな街並み。
水面には建物が映っている。
「綺麗です」
彩葉は橋の上から景色を眺めた。
風が気持ちいい。
鳥が飛んでいる。
川面が揺れる。
穏やかな時間だった。
東京のような巨大都市も好きだ。
伊勢のような神聖な場所も好きだ。
そして大阪のような活気ある街も好きだった。
彩葉は橋を渡る。
その先にはさらに賑やかな場所が広がっていた。
巨大な看板。
派手な装飾。
観光客。
外国人。
若者たち。
笑い声。
活気。
エネルギー。
街全体が生きているようだった。
「すごい……!」
彩葉は目を輝かせる。
どこを見ても新しい発見がある。
歩くだけで楽しい。
それは守護者としての本能なのかもしれない。
世界を知りたい。
もっと見たい。
もっと学びたい。
そんな気持ちが心の中で大きくなっていた。
夕方になる。
空が少し赤く染まり始める。
ビルの窓が夕日に照らされる。
人の流れも少しずつ変わっていく。
学校帰りの学生。
仕事帰りの会社員。
買い物帰りの人々。
昼とは違う街の顔だった。
彩葉はベンチへ座った。
そして空を見上げる。
「今日はいっぱい見ました」
誰に言うでもなく呟く。
旅は急ぐものではない。
一歩ずつ。
一つずつ。
世界を知っていけばいい。
陽菜もそんな風に言っていた気がする。
風が吹く。
大阪の夕暮れ。
街の灯りが少しずつ増えていく。
彩葉は立ち上がった。
「明日も色々見てみたいです」
笑顔になる。
四国へ向かう前に。
もう少しだけ大阪という街を知りたい。
そう思いながら。
バッグの守護者、彩葉は夕暮れの大阪の街を歩いていくのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




