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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第二十三話 神域を守りし者たち


 伊勢神宮地下祭壇。


 巨大な地下空間。


 そこに静寂が訪れていた。


 先ほどまで暴れ狂っていた特級想霊。


 その巨体は無数の紫色の拘束帯によって完全に縛り上げられている。


 腕も。


 脚も。


 身体も。


 首も。


 全てが拘束されていた。


 まるで巨大な繭のようだった。


 彩葉はその光景を見上げながら肩で息をしていた。


「はぁ......はぁ......」


 身体が重い。


 力が抜けそうになる。


 それでも倒れなかった。


 守れた。


 その事実だけが彩葉を支えていた。


 八咫鏡が近づいてくる。


「よくやったね」


 優しい声だった。


 彩葉は少し照れくさそうに笑う。


「えへへ......」


 しかし。


 その瞬間だった。


 男の笑い声が響く。


「ククク......」


 彩葉と八咫鏡が振り向く。


 祭壇の中央。


 黒いローブの男。


 その顔にはまだ余裕が残っていた。


「まさか特級想霊まで止めるとはな」


 男はゆっくりと立ち上がる。


「予想外だった」


 八咫鏡の目が細くなる。


「まだやるつもり?」


「当然だ」


 男が両腕を広げた。


「我々は終わらん」


 黒い呪力が溢れ出す。


 しかし。


 先ほどまでとは違う。


 弱い。


 明らかに力が減っている。


 特級想霊を拘束された影響だろう。


 八咫鏡も気付いていた。


「もう無理だよ」


「どうかな」


 男が笑う。


 そして懐から何かを取り出した。


 黒い符。


 大量だった。


「自爆術式か!」


 八咫鏡の表情が変わる。


 彩葉も息を呑む。


「自爆!?」


「この地下空間ごと吹き飛ばすつもりだ!」


 男は笑う。


「結界を壊せぬなら神域ごと崩壊させる!」


「狂ってる!」


 彩葉が叫んだ。


「そんなことしたらあなたたちも!」


「構わん!」


 男の目は完全に狂気に染まっていた。


「理想のためなら命など安い!」


 符が光る。


 地下空間が震える。


 岩盤が軋む。


 八咫鏡が前へ出る。


「彩葉!」


「はい!」


「奴を止める!」


「はい!」


 二人は同時に走った。


 男が符を放つ。


 無数の呪符。


 爆発。


 炎。


 雷。


 風。


 様々な術式が襲いかかる。


 しかし。


 彩葉はもう逃げなかった。


 心臓が鳴る。


 魔力が流れる。


 敵の力の流れが見える。


 どこから術が放たれるのか分かる。


「そこ!」


 彩葉が手を振る。


 紫色の拘束帯が飛び出す。


 呪符をまとめて縛り上げた。


「なっ!?」


 術式が発動しない。


 その隙に八咫鏡が距離を詰める。


「終わりだよ」


 黄金の光が広がる。


 巨大な鏡が出現した。


 男の顔が歪む。


「しまっ――」


 鏡面が輝く。


「神鏡閃」


 閃光。


 黄金の光が地下空間を埋め尽くした。


 轟音。


 衝撃。


 風圧。


 そして。


 男は祭壇ごと吹き飛ばされた。


「ぐあああああああっ!!」


 地面を転がる。


 黒いローブが破れる。


 周囲の陰陽師たちも倒れる。


 立ち上がる者はいない。


 完全な決着だった。


 静寂。


 長い沈黙。


 やがて。


 彩葉がぽつりと呟く。


「......終わった?」


 八咫鏡は周囲を見渡した。


 祭壇。


 術式。


 陰陽師。


 呪核。


 全てが停止している。


 そして。


 空を見上げた。


 伊勢大結界。


 その黄金の光は少しずつ安定を取り戻していた。


「うん」


 八咫鏡が微笑む。


「終わったよ」


 彩葉はその場に座り込んだ。


「よかったぁ......」


 全身から力が抜ける。


 安心した瞬間だった。


 その時。


 上空から複数の気配が近付いてきた。


 八咫鏡が顔を上げる。


「あぁ」


「?」


「来たみたいだね」


 地下空間の入口。


 そこから複数の足音が聞こえる。


 やがて現れたのは黒い制服姿の人々だった。


 人間たち。


 しかし普通ではない。


 霊力を帯びている。


 彩葉は首を傾げた。


「あれ?」


 八咫鏡が説明する。


「人類連盟直属の特殊警察」


「警察?」


「うん」


 先頭の女性が歩いてくる。


 短髪の女性だった。


 周囲を見回し。


 拘束された陰陽師たちを見る。


「こちらの勝ちのようですね」


 八咫鏡が頷く。


「引き渡すよ」


「助かります」


 女性は部下たちへ指示を出した。


「全員確保」


「はい!」


 警察たちが動き始める。


 拘束された陰陽師たちは次々と連行されていく。


 黒ローブの男も例外ではない。


「離せ!」


「黙って歩け」


 連行されながらも男は彩葉を睨んでいた。


「覚えておけ」


 彩葉は黙って見つめ返した。


 男が笑う。


「断界同盟は終わらん」


「......」


「また会うことになるぞ」


 そして連れて行かれた。


 やがて全員が姿を消す。


 地下空間には再び静寂が戻った。


 八咫鏡が大きく息を吐く。


「ふぅ」


 彩葉も空を見上げた。


 結界はもう安定している。


 黄金色の光が夜空を優しく照らしていた。


「守れたんですね」


「うん」


 八咫鏡は笑う。


「君のおかげでね」


 彩葉は照れくさそうに頭を掻く。


「そんなことないですよ」


「あるよ」


 八咫鏡は真っ直ぐ言った。


「もし彩葉がいなかったら結界は壊れていた」


 彩葉は少しだけ黙る。


 そして空を見る。


 生まれたばかりの頃。


 何も知らなかった。


 京都の廃墟。


 陽菜との出会い。


 東京。


 桜菊祭。


 小紅。


 アテナ。


 そして今。


 少しだけ。


 本当に少しだけ。


 自分が何者なのか分かった気がした。


 守護者。


 世界を守る存在。


 誰かを守るために生まれた存在。


 それが彩葉だった。


 すると。


 八咫鏡が微笑む。


「さて」


「?」


「事件も解決したし」


「はい」


「明日は伊勢を案内しようか」


 彩葉の顔が明るくなる。


「本当ですか!?」


「もちろん」


「やったぁ!」


 彩葉の笑顔が夜空の下で弾ける。


 その様子を見て八咫鏡も笑った。


 伊勢大結界は守られた。


 陰陽師たちは警察へ引き渡された。


 神域は再び静けさを取り戻した。


 だが。


 連行される直前に男が残した言葉。


 断界同盟。


 その存在はまだ消えていない。


 彩葉の旅も。


 世界を知る旅も。


 まだ始まったばかりだった。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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