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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第十九話 迫る闇と神域の守り人


 三重県伊勢市。


 夜の伊勢神宮。


 頭上には無数の星々。


 そして空を覆うように広がる黄金の光。


 伊勢大結界。


 日本三大結界の一つ。


 神域と街を守り続ける巨大な結界は静かに夜空を照らしていた。


 しかし。


 その光は先ほどよりもわずかに揺らいでいる。


 まるで迫り来る危機を知らせているようだった。


「だから止めよう」


 八咫鏡の言葉に彩葉は力強く頷いた。


「はい!」


 迷いはなかった。


 生まれてまだ日も浅い。


 世界のこともほとんど知らない。


 だが一つだけ分かることがある。


 守らなければならないものがあるということだ。


「結界を壊されたらどうなるんですか?」


 彩葉(いろは)が尋ねる。


 八咫鏡は静かに結界を見上げた。


「まず伊勢の霊的な防壁が崩れる」


「防壁......」


「うん」


 八咫鏡は続ける。


「この結界は単なる壁じゃない」


 黄金の光が夜空で揺れる。


「神界、霊界、妖界、そして現世。その境界を安定させている役目もある」


 彩葉は息を呑んだ。


「そんなに大事なものなんですか」


「とてもね」


 八咫鏡の表情は真剣だった。


「もし壊れれば強力な妖怪や悪霊、呪いの類が流れ込み始める」


「っ!」


「もちろん神域そのものも傷付く」


 彩葉は空を見上げた。


 美しい結界。


 この景色が失われる。


 そんな未来は想像したくなかった。


「止めましょう」


「あぁ」


 八咫鏡は頷く。


「そのためにまず敵の数と配置を確認する」


 そう言うと再び瞳が金色に輝く。


 巨大な鏡の幻影が現れた。


 神々しい光が周囲を照らす。


 鏡面には森の様子が映し出された。


「わぁ......」


 彩葉は思わず声を漏らす。


 先ほどより鮮明だ。


 森の奥。


 地下祭壇。


 陰陽師たち。


 その全てが映し出されている。


「人数は......」


 八咫鏡が数える。


「二十七」


「多いですね......」


「うん」


 さらに映像が切り替わる。


 祭壇の周囲。


 山道。


 川沿い。


 複数の地点に陰陽師が配置されていた。


「見張り?」


「そうだね」


 八咫鏡は頷く。


「かなり慎重に準備している」


「どうしてそこまで......」


「結界破壊は簡単じゃないからだよ」


 すると映像の一角に見覚えのある服装が映った。


 彩葉の表情が変わる。


「......あっ」


「気付いた?」


「この人」


 映像の中にいる中年の男。


 どこか見覚えがある。


 そして思い出した。


「京都で......!」


 路地で戦った陰陽師たち。


 その一人によく似ていた。


「なるほど」


 八咫鏡も察したようだった。


「同じ組織か」


「やっぱり」


「断界同盟」


 その名を口にした瞬間。


 周囲の空気が少しだけ重くなった気がした。


 彩葉は小紅の言葉を思い出す。


 太歳星君が属していた組織。


 神々と敵対する存在。


「いったい何が目的なんでしょう」


「分からない」


 八咫鏡は首を横に振る。


「でも一つだけ確かなことがある」


「?」


「ろくでもない連中だ」


 珍しく辛辣な言葉だった。


 彩葉は少し驚いた。


 だがそれだけ危険な相手なのだろう。


 すると。


 突然。


 八咫鏡の表情が変わる。


「......ん?」


「どうしました?」


 鏡面を見つめる八咫鏡。


 映像の中で何かが動いていた。


 地下祭壇。


 そこへ黒い布を被った人物が現れる。


 陰陽師たちが一斉に頭を下げた。


「偉い人?」


「たぶん」


 人物は祭壇の前に立つ。


 顔は見えない。


 しかし。


 その瞬間だった。


 彩葉の背筋に寒気が走る。


「っ!?」


「彩葉?」


「な、なんですか今の......」


 胸がざわつく。


 嫌な感覚。


 まるで深い闇を覗いたような感覚だった。


 八咫鏡の表情も険しい。


「なるほど」


「知ってるんですか?」


「いや」


 八咫鏡は首を振る。


「だが危険だ」


 映像の人物は何かを取り出した。


 黒い石。


 拳ほどの大きさ。


 その表面には無数の亀裂が走っている。


「......あれは」


 八咫鏡の目が細くなる。


「まさか」


「?」


「呪核」


 その声には警戒が混じっていた。


「呪核って?」


「大量の呪力を圧縮した危険物だ」


 彩葉の顔が引きつる。


「危険物」


「うん」


 八咫鏡は頷く。


「あんなものを結界に使われたら厄介だ」


 すると映像の人物が手を掲げる。


 陰陽師たちが一斉に動き出した。


「始まる......」


 八咫鏡が呟く。


「え?」


「儀式の準備だ」


 彩葉は拳を握った。


「じゃあ早く止めないと!」


「あぁ」


 八咫鏡は鏡を消した。


 光が夜の空気へ溶けていく。


 そして静かに歩き出す。


「行こう」


「はい!」


 二人は神宮の奥へ向かう。


 月明かりが石畳を照らしていた。


 やがて巨大な御神木の前へ到着する。


 その木は異様なほど大きかった。


 空へ届きそうなほど高い。


 神聖な力が溢れている。


「ここは......」


「伊勢神宮でも特別な場所だよ」


 八咫鏡は御神木へ触れる。


 すると。


 黄金の光が広がった。


 木の根元から無数の光の筋が現れる。


 それらは地中へ伸びていた。


「結界の力......」


 彩葉は思わず呟いた。


「そう」


 八咫鏡は頷く。


「ここは伊勢大結界の要の一つ」


 彩葉は息を呑む。


 つまり敵はこれを狙っている。


 この場所を。


 この神域を。


「絶対に守ります」


 彩葉は真っ直ぐ言った。


 八咫鏡は少し驚き。


 そして優しく笑った。


「頼もしいね」


 夜風が吹く。


 木々が揺れる。


 その時だった。


 遠くの森から。


 ゴォォォォォォォン――


 重く不気味な鐘の音が響いた。


 彩葉と八咫鏡は同時に振り返る。


「始まった......!」


 八咫鏡の表情から笑みが消える。


 森の彼方。


 闇の中。


 不気味な黒い光がゆっくりと立ち上り始めていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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