表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
17/87

第十七話 白き鏡の導き



 三重県伊勢市。


 夕暮れの海岸。


 波が静かに打ち寄せる。


 橙色に染まった海を背に、白く輝く少女は穏やかに微笑んでいた。


「八咫鏡?」


 彩葉は首を傾げる。


 聞いたことのない名前だった。


 八咫鏡は優しく頷く。


「あぁ、三種の神器の化身にして天照大御神様の御霊だよ」


「...........................えっと?」


 彩葉の頭の上に疑問符が浮かぶ。


 八咫鏡は思わずくすりと笑った。


「ふふふ、そこからか」


「ご、ごめんなさい......」


「いや、気にしなくていいよ。まぁ、しょうがないね、生まれたばかりなのだから......」


 そう言って八咫鏡は海を見つめた。


「三種の神器とは、『天叢雲剣』『八尺瓊勾玉』そして『八咫鏡』この三つのことだよ」


「三種の神器......」


「そして天照大御神様。この国の最高神にして太陽の神」


 その言葉には深い敬意が込められていた。


「とても大いなるお方だよ」


「へぇ......」


 彩葉は感心したように頷く。


「そして御霊」


「うん」


「御霊とは神の分身体のようなものだね」


「じゃぁ、神様なの」


 すると八咫鏡は少し考えるような顔をした。


「う~ん......そうでありそうじゃないかな」


「?」


「今のこの体は分身体の欠片」


 八咫鏡は自分の胸に手を当てる。


「つまり断片なんだ」


「断片......」


「本体の御霊は伊勢神宮にいるよ」


「そうなんですね」


 彩葉は納得したように頷いた。


 神という存在は思っていたより複雑らしい。


 すると彩葉は気になっていたことを思い出す。


「で、私を見てたのって......」


 八咫鏡は少しだけ目を細めた。


「君が逸材だから、かな」


「逸材?」


「あぁ」


「でも私、まだ何もできませんよ?」


 彩葉は慌てて言う。


 拘束の魔力を少し使えるようになっただけだ。


 小紅や陽菜のように戦えるわけでもない。


 だが八咫鏡は首を横に振った。


「そういう意味ではないんだ」


「?」


「だけど、何がすごいのかは教えられないかな......」


「え、どうして」


 八咫鏡は空を見上げた。


 夕陽が少しずつ沈んでいく。


「......それが"道"だから、かな」


「道?」


「うん」


 それ以上は説明しない。


 彩葉は少し不満そうな顔をした。


「気になります......」


「ふふふ」


 八咫鏡は楽しそうに笑った。


「そうだ、ここの良いところ、もっと教えてあげるよ」


「本当ですか!?」


「もちろん」


 彩葉の表情がぱっと明るくなる。


 八咫鏡は微笑んだ。


「ついておいで」


「はい!」


 二人は海岸沿いを歩き始めた。


 波の音が心地よく響く。


 しばらく進むと、小高い丘へ続く道が見えてきた。


「ここを登るのですか?」


「うん」


 彩葉は元気よく登り始める。


 守護者の身体能力なら大した距離ではない。


 数分後。


 二人は丘の上へ到着した。


「わぁ......!」


 彩葉は思わず声を上げた。


 眼下には伊勢の街。


 遠くには海。


 そして沈みゆく夕陽。


 街全体が黄金色に輝いていた。


「綺麗......」


「ここは私のお気に入りの場所なんだ」


 八咫鏡が言う。


「神宮も海も山も見える」


「本当ですね」


 彩葉はしばらく景色に見入った。


 旅を始めてから様々な景色を見てきた。


 京都の夜景。


 東京の街並み。


 桜菊祭の灯り。


 そして伊勢の神域。


 どれも美しかった。


 だが今見ている景色もまた特別だった。


「この国って......綺麗ですね」


 彩葉がぽつりと呟く。


 八咫鏡は優しく頷いた。


「そうだね」


 風が吹く。


 二人の髪が揺れる。


 しばらく静かな時間が流れた。


 やがて日が沈み始める。


 街には少しずつ灯りがともり始めていた。


「ねぇ、八咫鏡さん」


「ん?」


「ずっと伊勢にいるんですか?」


 八咫鏡は少し考えた。


「基本的にはね」


「やっぱり神様のお仕事?」


「それもあるかな」


「大変そうです」


「慣れてるよ」


 八咫鏡は笑う。


「彩葉の旅の方が大変そうだ」


「そうですか?」


「うん」


「でも楽しいです!」


 即答だった。


 八咫鏡は少し驚き、それから嬉しそうに笑った。


「なら良かった」


 空が藍色へ変わり始める。


 夜が近付いていた。


 その時だった。


 八咫鏡の表情が僅かに変わる。


「......」


「八咫鏡さん?」


 彩葉も違和感に気付いた。


 誰かがいる。


 遠く。


 森の奥。


 木々の間。


 何者かの視線。


「......誰かいます?」


 彩葉が尋ねる。


 八咫鏡は穏やかな表情のまま答えた。


「いるね」


「知り合いですか?」


「残念ながら違う」


 その声は少しだけ冷たかった。


 彩葉は森を見る。


 暗くなり始めた木々の隙間。


 そこに一瞬だけ。


 白い装束が見えた気がした。


 次の瞬間には消えている。


「......?」


 さらに別の方向。


 今度は木の陰。


 何かの札が風に揺れたように見えた。


 そしてまた消える。


「今の......」


 彩葉は目を凝らした。


 だがもう何も見えない。


 しかし。


 気配だけは残っている。


 まるで獲物を観察するような。


 静かな視線。


 八咫鏡は夜の森を見つめたまま小さく呟く。


「どうやら......面倒な者たちが伊勢にも入り込んでいるみたいだね」


 その視線の先で。


 闇の中に数枚の符が静かに揺れていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ