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Re:アルケオン〜守護者として生まれた私は世界を旅する〜  作者: れんP
アジアの章 日本編

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第十五話 神域の街と海風



 三重県――伊勢市。


 列車がゆっくりと駅へ滑り込む。


 車窓の向こうには東京とも名古屋とも違う景色が広がっていた。


 高層ビルは少ない。


 代わりに広い空が見える。


 山々の緑。


 遠くから吹いてくる潮風。


 どこか落ち着いた空気。


「わぁ......」


 彩葉は窓に顔を近付けた。


「着きました......!」


 列車が停止する。


 扉が開く。


 彩葉は期待に胸を膨らませながらホームへ降りた。


「ここが......伊勢市」


 駅前へ出る。


 穏やかな風が髪を揺らした。


 空は青く。


 太陽は暖かい。


 東京とはまた違う優しい景色だった。


「なんだか落ち着きます......」


 周囲には観光客らしき人々も多い。


 家族連れ。


 友人同士。


 海外から来たらしい人々。


 様々な人が歩いている。


 彩葉もその流れに混ざって歩き始めた。


 まず目に入ったのは大きな案内板だった。


「えっと......」


 地図を眺める。


 すると見覚えのある名前を見つけた。


「伊勢神宮......!」


 パンフレットに載っていた場所だ。


 彩葉は目を輝かせた。


「行ってみたいです!」


 そして歩き始める。


 道中には古風な建物が増えていく。


 木造の店。


 瓦屋根。


 どこか昔の日本を思わせる街並み。


「綺麗......」


 彩葉はきょろきょろしながら進む。


 やがて川が見えてきた。


「わぁ!」


 透明な流れ。


 太陽の光を受けて水面がきらきら輝いている。


 その景色を見ただけで心が落ち着く。


「気持ちいいです......」


 彩葉は橋の上から川を見下ろした。


 魚も泳いでいる。


 自然が豊かだった。


 さらに歩く。


 すると大きな鳥居が見えてきた。


「おぉ......!」


 思わず声が漏れる。


 圧倒的な存在感。


 ただそこに立っているだけなのに、神聖な空気を感じる。


 彩葉は自然と背筋を伸ばした。


「すごい......」


 鳥居をくぐる。


 その瞬間だった。


 空気が変わる。


 ひんやりとしていて。


 静かで。


 優しい。


 まるで森全体が呼吸しているようだった。


 参道の両脇には巨大な木々が並んでいる。


「大きい......!」


 何百年も生きていそうな大木。


 人間よりずっと長い時間を生きてきた存在たち。


 彩葉は見上げながら歩いた。


「こんにちは」


 思わず木へ挨拶する。


 もちろん返事はない。


 だが不思議と暖かい気持ちになった。


 やがて参拝客の列が見えてくる。


 彩葉も真似をして静かに歩いた。


 ここは神域。


 騒ぐ場所ではない。


 そんなことが自然と分かった。


 風が吹く。


 木々が揺れる。


 葉の音が響く。


 それだけなのに心地よい。


「神様って......どんな方なんでしょう」


 昨日会ったアテナを思い出す。


 神と聞くと強大な存在を想像する。


 だがこの場所はどこか穏やかだった。


 優しい空気に満ちている。


 彩葉はしばらくその景色を楽しんだ。


 そして神域を後にする。


「次はどこへ行こうかな」


 街を歩いていると賑やかな通りへ出た。


 木造の建物が並ぶ観光地。


 多くの人で賑わっている。


「わぁ~!」


 彩葉は再び目を輝かせた。


 土産物店。


 雑貨屋。


 食べ物屋。


 色々な店が並んでいる。


「楽しそうです!」


 守護者は食事を必要としない。


 だが食べることはできる。


 彩葉は気になる店を見つけた。


「いい匂い......」


 香ばしい香りが漂ってくる。


 店先には焼きたての餅が並んでいた。


 観光客たちも次々買っている。


 彩葉も一つ購入する。


「いただきます」


 一口。


「おいしい......!」


 思わず笑顔になる。


 外は少し香ばしく。


 中は柔らかい。


 優しい味だった。


「旅っていいですね......」


 陽菜の言葉を思い出す。


 世界を知る旅。


 確かにその通りだった。


 知らない景色。


 知らない文化。


 知らない人々。


 それらを知るたびに、自分の世界が広がっていく。


 午後になる頃。


 彩葉は海の方へ向かっていた。


 パンフレットに載っていた場所が気になったのだ。


 しばらく歩く。


 やがて視界が開けた。


「......!」


 彩葉は立ち止まった。


 目の前には海。


 どこまでも続く青。


 波の音。


 潮の香り。


 そして海辺に立つ大きな鳥居。


「綺麗......」


 彩葉は思わず見惚れた。


 夕陽が海面を照らしている。


 まるで金色の道が海の上にできているようだった。


 風が吹く。


 髪が揺れる。


 彩葉は静かに景色を眺めた。


 その時だった。


 ドクン。


 胸の奥が脈打つ。


「......!」


 まただ。


 東京で感じた感覚。


 名古屋でも感じた感覚。


 今度はさらに強い。


「この感じ......」


 彩葉は周囲を見回した。


 誰かがいる。


 いや。


 何かがいる。


 それもかなり強い存在。


 守護者とも違う。


 妖怪とも違う。


 神とも違う。


 不思議な気配だった。


 海風が吹く。


 波が打ち寄せる。


 すると遠くの岩場の上に、人影が見えた。


「......?」


 夕陽を背にして立つ誰か。


 その姿は逆光でよく見えない。


 だが。


 確かにこちらを見ていた。


 彩葉は無意識に一歩前へ出る。


「誰......?」


 するとその人影は静かに身を翻した。


 そして次の瞬間。


 ふっと姿が消えた。


「えっ!?」


 彩葉は驚く。


 慌てて岩場を見る。


 しかし誰もいない。


 まるで最初から存在しなかったかのようだった。


「今の......なんだったんでしょう......」


 だが。


 胸の鼓動だけは収まらなかった。


 まるで運命が動き始めたように。


 伊勢の海は、静かに夕陽へ染まっていた。

ここまで読んでくれてありがとうございます。

次回もお楽しみに

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