第百二十七話 影を裂く夢砲と血の再起
「またアスワング!?」
「まぁ~東南アジアは~そういうタイプの吸血鬼が~多いからね~」
「はい、うっとうしいほどです。蚊の方がましです」
「そこまでなんだ」
「まぁ、わからなくないかな~」
「なにあたしを無視して話しているんだい!!覚悟しろ!!!」
空気が裂けるような叫びと同時に、ペナンガランの上半身だけの影が空中で揺れ、ぶら下がった臓器が赤黒い光を放ちながら波打った。海風の匂いが一瞬で鉄のような臭気に変わる。
「来ます!」
その声と同時に、紙片が宙に舞った。無数の護符のような紙が円陣を描き、空間に幾何学模様を形成する。
「ペーパーカッター!」
鋭い音とともに、紙の一枚一枚が刃となって奔った。空気そのものを切断するような斬撃がペナンガランの身体を包み込む。
「ギャァァァァァァァァァァ!!??」
悲鳴と共に黒い血が散る。しかしそれでも影は落ちない。空中で揺れながら、笑うように歪む。
「聞いてる!?」
「ペナンガランの弱点は~垂れ下がってる臓器だからね~臓器が傷つくのを~いやがるんだ~」
言葉が終わるより早く、影が膨張した。
「よくもやってくれたねぇ!ブラッティ・ブラスト!!」
血塊が弾丸のように射出される。空気を裂き、地面に当たれば爆ぜる危険な圧力弾だった。
「収納拘束!」
次の瞬間、空間が折り畳まれるように歪み、血の弾丸が吸い込まれていく。逆流した力がそのまま術式へと変換され、ペナンガラン自身の四肢を縛り上げた。
「なに!?」
「やるねぇ~だったら~私も~夢砲・ドリームブラスタ~~~」
マツリカの声が低く響いた瞬間、空中に巨大な砲門のような光輪が出現する。そこから放たれたのは光でも炎でもない、夢そのものを圧縮したような不可解な衝撃波だった。
「ッ!?グ、ギャァァァァァァァァァァ!!」
ペナンガランの身体が空中でねじれ、黒い霧となって崩れていく。海岸の砂が巻き上がり、視界が白く染まった。
「すごい......」
「やりましたでしょうか」
静寂が一瞬だけ訪れる。
しかしその静寂は、すぐに壊れた。
「さぁ!それはどうだろうねぇ......」
「え?」
砂煙の奥で、まだ“それ”は立っていた。
「はぁ、はぁ、はぁ、............よくも......よくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくもよくも!!!!!」
空気そのものが震える。先ほどまでとは明らかに異なる質の“怒り”がそこにあった。血ではない、もっと歪んだ何かがペナンガランの周囲に渦巻いている。
「なに?あのオーラ!?」
「あんな特性、ペナンガランにはありません!」
「う~ん............たぶんだけど~~断界同盟の仕業じゃない~」
「え?」
「聞いた話だけど~~様々な存在に悪的なチカラをわたして~悪いことをやってるのが~アジアにいるって、聞いたことあるよ~」
その言葉が落ちた瞬間、ペナンガランの影がさらに濃くなった。背後に無数の歪んだ輪郭が浮かび、まるで何か“別の存在”が重なっているようだった。
「さぁ!始めようかねぇ......ひひひひ」
砂浜に立つその影は、もはや一体ではない。複数の意思が混ざったような異形となっていた。
潮風が止まる。
そして、次の一撃が始まろうとしていた。
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次回もお楽しみに




