第百十二話 発明好きの守護者と神鳥の花嫁
インドネシアの深い密林。
赤く染まる空。
何度も響いていた爆発音。
何か恐ろしい存在が暴れているのではないか。
そう考えながら駆けてきた彩葉とサンパギータだったが、木々を抜けた先で見た光景に二人は思わず足を止めた。
そこには大きく抉れた地面。
周囲に散らばる謎の金属片。
煙を上げる奇妙な機械。
そして。
その中心で、頭をかきながら困ったように笑っている少女の姿があった。
「あぁ~あ~また失敗しちゃった」
その声を聞いた瞬間。
彩葉が目を丸くする。
「え、守護者」
隣のサンパギータはため息をついた。
「この声、この気配、あの後ろ姿は……やっぱり」
「お知り合いですか?」
その存在が振り向く。
背中には空飛ぶジャージがふわふわと浮いており、黒い服を無造作に身につけている。
どこかのんびりとした雰囲気をまとった少女だった。
「ん?あ」
サンパギータが静かに言う。
「またですか、リーダー」
彩葉は目を見開いた。
「えええええええええ!?」
少女はのほほんと笑った。
「えへへ、ごめんねぇ~、びっくりさせてぇ~」
「私はインドネシアの守護者『マツリカ』~」
「よぉ~しくねぇ~」
彩葉は慌てて頭を下げる。
「あ、はい!」
「バッグの守護者『彩葉』です!」
そして心の中で思う。
(大きい……)
すると。
「ん~?」
「胸が大きいのは~元人間で~元現人神だからぁ~だよ~」
「そ、そうなんですね」
彩葉は顔を赤くした。
サンパギータは慣れているのか平然としている。
「ところでリーダー」
「また発明?」
「あの爆破はさすがにびっくりするよ」
マツリカは笑顔で頷いた。
「だってぇ~」
「旦那様にぃ~贈り物作りたくてぇ~」
「旦那様?」
彩葉が首を傾げる。
サンパギータが説明する。
「リーダーはガルーダっていう神様の嫁なの」
「え!?」
彩葉の声が森に響いた。
マツリカは相変わらずのんびりした口調で語り始めた。
「そ~だよ~」
「私が~人間だった頃~」
「発明が好きで~」
「一人で森にこもってたら~」
「光が降り注いで~」
「頭は鳥、身体は人間の神様『ガルーダ』が来て~」
「『私の嫁になれ、さすれば未知の技術を授けよう』って言われて~」
「私は現人神になったの~」
サンパギータが補足する。
「その後何百年とたってリーダーは守護者になった」
「そう言うこと~」
「な、なるほど……」
「じゃぁ、さっきの爆発は」
「うん、失敗して爆発したの~」
サンパギータは呆れ顔で言った。
「人間も不安になるので失敗しないでください」
「えへへ~」
その時。
ガサガサ。
マツリカの背後から、何か巨大な物体が起き上がった。
「わっ!?」
彩葉が驚く。
そこには。
羽が六枚。
脚が八本。
尻尾にはプロペラ。
頭には鍋が付いている。
どう見ても意味不明な機械が立っていた。
「なんですかこれ!?」
「新型自動お掃除空飛び多脚炊飯洗濯機~」
「万能なんだよぉ~」
「万能……?」
彩葉が呆然とする。
サンパギータも額に手を当てる。
「名前からして嫌な予感しかしない」
「大丈夫だよぉ~」
「今回はたぶん成功してるからぁ~」
「たぶん?」
「うん!」
次の瞬間。
ピコン。
機械の目らしき部分が赤く光った。
『オチャヅケヲ作リマス』
「え?」
『目標ヲ確認』
『鍋ガ不足シテイマス』
『鍋ヲ回収シマス』
ブォォォォォ!!
機械が動き出した。
「わわっ!?」
彩葉が飛び退く。
サンパギータがため息をつく。
「ほら始まった」
「えぇ~?」
「なんでぇ~?」
マツリカが首を傾げる。
『鍋』
『鍋』
『鍋』
『鍋』
巨大な機械は八本の脚で歩きながら森の中へ進もうとする。
「待ってぇ~!」
「まだ完成してないよぉ~!」
マツリカが慌てて追いかける。
「リーダー!」
サンパギータも後を追った。
「え?」
「えぇ!?」
「待ってくださ~い!」
彩葉も慌てて走り出す。
深いジャングル。
月明かり。
そして。
意味不明な機械を追いかける三人。
「止まってぇ~!」
「お茶漬け作らなくていいからぁ~!」
「リーダー!」
「壊した方が早いんじゃ……」
「ダメぇ~!」
「旦那様へのプレゼントなのぉ~!」
「えぇぇぇ!?」
こうして。
インドネシアの守護者。
ISMPPのリーダー。
元現人神にして神鳥ガルーダの花嫁。
発明好きの守護者、マツリカとの賑やかな出会いは始まったのだった。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
次回もお楽しみに




