第百十一話 深緑の密林と謎の爆発
インドネシアの大地に足を踏み入れた彩葉とサンパギータ。
夜の海から吹く潮風が、異国の香りを運んでくる。
その時だった。
「ドォォォォォォォォォォン!!!」
再び巨大な爆発音が響き渡る。
夜空の一角が赤く染まり、遠くの鳥たちが一斉に飛び立っていく。
「また!?」
彩葉が驚いて空を見上げた。
サンパギータも細い目をさらに鋭くする。
「……近い」
「さっきより」
「距離が縮まってる」
「何か戦ってるんでしょうか……?」
「分からない」
「でも」
「行かなきゃ」
「うん!」
二人は海岸を走り始めた。
白い砂浜。
寄せては返す波。
そしてその先には、深い緑に覆われた巨大なジャングルが広がっていた。
「すごい……」
「本当に森だ……」
彩葉は思わず声を漏らす。
日本の森とは違う。
巨大なシダ植物。
見上げるほど高い木々。
どこからともなく聞こえてくる虫の声。
夜にもかかわらず生命の気配に満ちていた。
サンパギータが静かに前へ進む。
「入るよ」
「はい!」
ガサッ。
二人はジャングルへと足を踏み入れた。
木々が月明かりを遮り、周囲は薄暗い。
しかし守護者である二人の視界には問題はなかった。
「なんだか……」
「冒険してるみたいです!」
「ふふっ」
珍しく。
サンパギータが少しだけ笑った。
「彩葉は」
「本当に楽しそう」
「えへへ」
「旅って楽しいですから!」
「日本を出る前は不安もありましたけど」
「来てよかったです!」
「そう」
「私は逆かな」
「え?」
「昔は」
「外の世界が怖かった」
彩葉が不思議そうな顔をする。
サンパギータは歩きながら話し始めた。
「私は精霊だった」
「ドゥウェンデ」
「森に住んで」
「人間を遠くから見てるだけ」
「それで十分だった」
「でも」
「リーダーに出会って」
「世界は怖いだけじゃないって知った」
「だから今の私がいる」
彩葉はにっこり笑った。
「素敵ですね!」
「居場所をくれた人なんですね!」
「うん」
「大切な人たち」
「いつか会ってみたいなぁ」
「きっと」
「歓迎してくれる」
二人はさらに奥へ進んでいく。
すると。
頭上の枝から小さな動物が飛び移った。
「わっ!」
「お猿さん!?」
キキキッ!
小さな猿が彩葉を見下ろし、また別の木へと飛び移っていく。
「かわいい!」
「日本では見ないですね!」
「この辺には多い」
「鳥もいる」
「蛇も」
「わっ」
「蛇はちょっと怖いかも……」
「ふふ」
「大丈夫」
「私がいる」
「頼もしいです!」
そのまましばらく進んでいく。
すると。
「ドォォォォォォォォォン!!!」
またしても爆発音。
今度は地面まで揺れた。
「きゃっ!?」
彩葉が思わずよろめく。
「近い!」
サンパギータの表情が変わる。
「もう」
「かなり近い」
「急ごう」
「はい!」
二人は速度を上げた。
ガサガサガサッ!
密林を駆け抜ける。
巨大な根を飛び越え。
川を渡り。
岩場を越えていく。
そして。
十分ほど進んだ頃だった。
木々の隙間から。
遠くに。
赤い光が見えた。
「え……」
彩葉の足が止まる。
さらに。
ゴゴゴゴ……
何か巨大なものが動くような振動。
そして。
時折空を照らす閃光。
「近い……」
「もうすぐそこです!」
彩葉が息を呑む。
サンパギータも真剣な表情で前方を見つめていた。
「……うん」
「もう少し」
「この先」
「何かがいる」
風が吹く。
木々が揺れる。
赤い光がジャングルの奥から漏れ出していた。
そして再び。
「ドォォォォォォォォォォン!!!!」
轟音が夜の密林を震わせる。
彩葉とサンパギータは顔を見合わせた。
「行きましょう!」
「うん」
二人は警戒しながら、赤く染まる密林の奥へと近づいていくのだった。
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