表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/35

27 帰り道にて


 試合の結果は七対五でそよいの勝ちだった。


 禁止とされていたスマッシュは彼の体に直撃。幸いにも顔に命中するわけでもなければ、反射的に声を上げただけで痛くはないと、彼は笑ってくれていた。


 得点はそよいのものになった。終盤はスマッシュがありとルールは変わっていた。

 彼もスマッシュを狙ってくる。軽くラケットを振り抜き、張っているガットにシャトルが反発した音は気持ちがいいもの。反響しづらい外でも爽快である。


 しかし、ポイント制でやっているなか慣れないことはやるものではない。

 落下地点を見誤る綾人は、ふわりと飛んできたシャトルに対しラケットを力強く振り抜くも、空振りに。頭にシャトルが落ちてもいれば、表に出そうなものがあった。


 最終的には、コートもほぼ無視のラリーが行われては、最後はお手本を見せるようにそよいがスマッシュを放ってと試合は終了していた。


 その後は彩乃と歩奈と三人でラリーをしては、目標数に達してはお終いに。今日は動いたとそよいは汗を流せば、水分補給をしてから小さく息を吐いた。


 時間帯としては十六時。昼間の澄み渡るような青空の景色から、夕焼けの空へと切り替わっている。運動した後にとって受ける涼しい風は、気持ちを晴らすものであった。


「運動、苦手じゃないよね?」


 帰り道の途中、そよいは思っていたことを本人に直接訊くことに。

 ただ、彼は一部否定する。


「いや、これは彩乃に付き合ってたら、まぁまぁできる程度になっただけだから」

「とか言って、ほかもできたりするんじゃない? 苦手で収まってはないと思うけど」

「えー……」

「しいていうなら、水泳じゃない?」


 話を聞いていた彩乃が横に並び立てば、そよいと綾人の顔を覗くような体勢で言った。


 そんな話の途中、彩乃は兄である綾人に自然と荷物を持ってもらうと、目で追いかけながらも口を止めることはなかった。


「あぁ、そうかもな。小学生の時習わせてもらってたから」

「そうなんだ」

「お兄ちゃん水の中は得意ですよ、平泳ぎ超早い。ただ足遅いのは本当ですし、バッティングセンターも空振りばっかだし、ボール投げるの下手くそだし。ほかの運動が苦手なのは間違ってないと思います。ね、歩奈」

「うん。お兄ちゃんの投げたボール、どっか飛んでくよ」


 疑惑は三原姉妹によって解明される。

 バドミントンは彩乃に付き合ってあげていたから。水泳は得意らしく、小学校時代に習い事として通っていたとのこと。


 それは、綾人、彩乃、歩奈と三人揃って水泳教室に通っていたらしい。

 ただ、らしいと言っても、歩奈はまだまだ通い始めたばかりと続いているとか。


「お腹空いたー」

「お姉ちゃんもお腹空いたなぁー。お菓子なにがあった?」


 歩奈が彩乃に向かって言っていれば、彩乃は綾人に訊いている。


 帰宅したら、お菓子を一つまみ。家にあるストックはと訊いていた言葉には、綾人が「はいはい」と彩乃の口元に持っていく。


「ほい」

「……!」

「歩奈も口開けな」

「なーに?」


 バッグから何かを取り出した綾人が、包装された紙を破いては彩乃の口の中に。歩奈は立ち止まって訊き返すと、目の前のお菓子を見て笑顔になっては、パクリと口にした。


「噛んじゃだめだぞ、歯がポロって取れるから」

「ん!」


 満たすお菓子を口にすれば、歩奈は機嫌よくで駆けだし、手を繋いでいた彩乃は引っ張られるようにして付いていく。


「──はい、そよいお姉ちゃんも」


 何を食べさせたのだろうと足を止めていると、そよいにも渡される。


 封がされたお菓子はソフトキャンディであった。

 彼が肩にかける黒のサコッシュからは、水稲やらハンカチなど入っているのが見て取れる。その中に、お菓子もいっしょに持って来ていたようだった。


 しかし、そんなことよりも、


「お姉ちゃんになった覚えないけど」


 そよいは冷静に言った。

 指摘された綾人は、微妙な顔を浮かべている。


「……わかってるから。黙ってないで、早く受け取ってください」

「そっちが自爆するようなこと言うから」


 苗字ではなく、名前を呼ばれるのは心臓に悪い。

 ただ、嫌悪感を抱いたわけではなく、歩奈がいる前だからこその自然な呼び方には、少し気まずさを覚えただけであった。


 遊び半分といった形で、名前で呼んでくる男子がいたことを思い出すそよい。

 そちらは嫌悪感どころか、言葉を選ばずに言えば気色悪かった。しかも、取り巻きの男子が笑っていれば、自身を利用した茶化しは同じ人間ではないと、避けていた覚えもある。


 そういったところもあるのか。見るからに誠実さの欠片もなかった男子たちと違い、綾人の呼び方には受け入れている自身もいると、そよいは考える。


(宮代お姉ちゃん……呼びにくい? でも……親しみやすいか……)


 歩奈にはまだ名前で呼ばれてはいない。とんとん、とそよいの手に触れては呼ばれるくらい。

 彩乃に関しては、こちらに居候としてからというもの、自然とさん付けで、呼び始めてくれていた。


 兄弟がいないから、呼ばれたいと求めたのか。

 変な欲というものが顔を覗かせると、そよいは揉み消すかのように首を横に振れば、綾人から貰ったお菓子を口にした。


「何見てるの」

「いや、急に顔横に振りだしたら見るでしょ。面白いことしてるなって」


 綾人と目が合えば、小さく笑う彼の左腕にポスっと殴っておく。


「そよいさん、今日付き合ってくれてありがとうございます。楽しかったです」


 歩奈と手を繋ぎながら歩く彩乃が、後ろを振り返っては言った。

 そして、足を止めれば歩奈も倣う。


「それと言い忘れてたんですけど……──これからよろしくお願いします!」

「お願いします!」


 口角上がる可愛い顔はさっと頭を下げていれば、ふたり揃って唇を引っ込めた。

 前向きな表情が出すことができない。そんな自身に対しての言葉には、そよいは感謝しかなかった。


「よかったな、来てもらえて」そう妹たちに向かって綾人が問いかけるように言えば、姉妹は揃って笑顔で頷いてくれていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ