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不思議の王国の奇妙な錬金術師  作者: えのころ
vol.1 便利屋ゼルトザームの事件簿
19/19

CASE19 ハッピートリガーはかく語りき

今回も相変わらずバカやってます

「ふむ、ポーションが10個、お守り人形が6体、癒しのアロマが…」

「きゅむ、きゅむきゅむ」


 ある日、ルドルフとマリーは便利屋で扱う品物の棚卸しをしていた。錬金術により作られた薬品や雑貨等の在庫確認し、記録していく。それが一段落した頃…


「失礼する」

「くふふ…失礼しま〜」

「ああ、君らは…」


 ルドルフの元を見知った人物が訪れた。鉄棒と額のゴーグルをかけ、革鎧を纏った犬耳の獣人の男、ダークアッシュの髪を2つ結びにし、赤ぶちの眼鏡をかけて革鎧を纏ったにやついた女…忘れるはずもない、かつて薬物の売買をしていた男の身柄を取り合った流れの傭兵集団、FLAT小隊のメンバーのゲラルトとリシェルだった。


「なにか依頼かな?」


 2人を応接室に通したルドルフが要件を尋ねると、ゲラルトが突然頭を下げる。


「すまない、リシェルの再教育をしてくれ」

「…え」


 ゲラルトの口から語られた突拍子のない依頼内容に、ルドルフが一瞬固まる。


「ああ、まずは…話さないといけないな」


 ゲラルトはそうなった経緯を話し始める。それは数日前に遡る…


「ふふ、追い込んだぞ…」


 FLAT小隊は町中に逃げ込んだ盗賊集団を捕縛するために大きな公園に追い込んでいた。


「どこへ隠れようが無駄だ、俺が見つけ出し、そしてマルクがひっそりと狙い…」


 ゲラルトが盗賊集団を優れた嗅覚で追っていると…


「いやいや、いっそ、公園ごと吹っ飛ばして…にひひ、広範囲破壊用爆弾、名付けて「九種九牌」!2徹して調合したこいつをブッパして威力をみてみたかったんだよね〜」


 リシェルがにやつきながら取り出したのは様々な色の渦模様が禍々しい爆弾だった。


「やるなよ?やるなよ?公園吹き飛ばすなよ?」


 嫌な予感が止まらなくなったゲラルトは血相を変えリシェルを制する。


「いっひひい、それ、どかん」

「バカぁ!」


 導火線に火をつけようとしたリシェルがドンっという破裂音とともに卒倒する。マルクが空気圧の銃を放ちリシェルを気絶させていた。


「や、やりましたねマルク…」

「よし、盗賊集団を捕まえるぞ」


 その後、リシェル除いたFLAT小隊の3人で盗賊集団は捕縛することはできたが、危うくとんでもない威力の爆弾を爆発させるところだったリシェルは全てが終わったあと、他の隊員から大目玉を食らうことになった。


「お前にを考えてんだ!公園であんな爆弾爆ぜさせるやつがいるかあ!辺り一面荒野にする気か!」


 意識を取り戻したリシェルに対してゲラルトが大きな雷を落とす。


「い、いやあ、せっかく作り出したとっておきの爆弾だったし…」


 リシェルが息を荒げながら言う。爆弾を爆ぜるために錬金術を始め、FLAT小隊に入隊した。


「…爆弾にこだわりがあるのはいいが…その意識はどうかと…」

「これは…再教育が必要なのでは」


 頭を抱えるゲラルトに対し、ハイディが進言する。


「確か前に鉢合わせた便利屋に凄腕の錬金術師がいたような…確か弟子もとっているとか言っていました」

「…ダメもとで相談してみるか…」


 こうしつあ、ゲラルトはリシェルを連れてルドルフのもとに訪れたのであった。


「なるほど…それは切実だなあ」


 ゲラルトからの話を聞き終えたルドルフが頷く。傍らにいるマリーもこくこくと首を縦に振る。


「報酬はきっちり払う。期間は…まず10日ほど頼む」


 ゲラルトは銀貨が入った袋を応接室のテーブルに置く。なかなかの量があるようで、ずっしりとした重量があるようだ。


「よし、引き受けた」


 こうして、ルドルフによる、FLAT小隊の問題児の教育プランが始まったのである。


「ええと…どこから教育したものか…。ルチナくんと違い倫理観というのは…うーむ…」


 ルドルフはルチナとは違うタイプの指導を依頼されたことに悩んでいた。ルドルフも錬金術師としての倫理観は持ち合わしてはいるものの、リシェルはギリギリの倫理観だとは言われており、素直なルチナとは違うリシェルをどう指導したものかと悩んでいた。


「じー…」


 ルドルフと向かい合って座るリシェルはルドルフの顔をじっと覗き込む。


「な、なんだね?」


 ルドルフの背筋を冷たいものが伝う。


「…うひひ」

「な、なんだねその笑いは!」


 頬を染めてにやりと笑うリシェルから思わず視線を逸らす。


「あ、あのさあ…まず…公園爆発させようとしたんだよね…」

「そうだよ…新型爆弾の威力をみたくて…」


 ルドルフが頭を抱える。そこから教えないといけないか?という言葉が頭をよぎる。


「そのために公園を爆発させるのはダメだよ…困る人だって出てくるし、それに、ああいう公園には錬金術に使う素材だってあるんだよ…。素材がとれなくなったら僕も君も困るだろ…?」


 ルドルフは冷たいものが背中を伝う感触を感じながらも小さな子供を諭すように伝える。


「うーん…確かにそれはそうだねぇ」


 リシェルが意外にも素直な反応を示した。


「うんまあ、そういうことだ。それに…君、爆弾以外にも興味は…」

「あう…実をいうと、アカデミーも強い爆弾を調合、爆発させることに熱中しすぎて退学になったくらいで…」

「嘘やん…」


 リシェルのカミングアウトにルドルフは再び頭を抱える。


「あー、うん…まあ、いいや…とりあえず、知りたいことは山程あるけど…調合の腕前とか知りたいんだ。なにか調合してくれないか」

「よし、では超強力なばくだ…」


 ルドルフに言われたリシェルが眼鏡を光らせながら錬金釜に向かおうとする。


「ごめん、言葉足りなかったかな?ポーションで頼む、材料はあるよね?」


 ルドルフがそれを頭を抱えながら制する。


「ええ、これでも小隊の爆弾やら薬品やらいろいろ作ってるからね、材料ももちろんや揃ってるよ!」


 リシェルは手提げのカゴからポーションに使われる材料を取り出す。


「ふむ、一通りの材料はあるようだな…質もいいみたいだ…んぅ?」


 ルドルフはリシェルが取り出した材料が質がいいことに感心した様子を見するが、なにかを違和感を感じるものを見つける。


「これは確か…ん…」


 ルドルフの目に入ったのは紫色のキノコのような変な形の樹の実だった。ルドルフの記憶が正しければ、これをポーションに使うと…


 ──だ、出したら出てきただけ…使わないよなぁ?あれは…


 ルドルフは不安ながらも見つめることにした。


「では、調合していくね…いひひぃ」


 リシェルは慣れた手付きで緑色の中和剤と薬草を入れていく。ポーションの基本的な材料だ。


「ふむ…さすがに手つきは慣れてるようだな」


 アカデミーを退学したとはいえ、リシェルも経験豊富な錬金術師。その手つきはルドルフが感心するほどに鮮やかだった。


「さて、次は…」


 リシェルは件の樹の実を掴んで錬金釜に入れようとした。


「ち、ちょっと待てぇい!」


 それを見たルドルフは血相を変えてリシェルの手を掴み、止めた。


「ちょ、なんで止めるの〜」

「止めるって!これはアレだぞ!アレだ!」


 リシェルが入れようとした樹の実は『色欲の誘い』と俗に称される樹の実であり、その俗称から察されるように、仲のいい夫婦がここぞの時に飲む薬の材料として使われる樹の実であり、ポーションに使うと、まあそううことである。


「これは必要ないでしょ…?なろうに掲載できなくなる展開にでもしたいのかなあ?」

「えへえ…これをあたしが飲んでも誰に飲んでもらってもどうなるものか…想像するだけで…いひひぃ」


 ルドルフが一歩、また一歩と後ずさる。この女、破滅願望者…。ルドルフはリシェルに恐怖を感じるしかなかった。


「と、ともかく、これは没収する!その…いろいろ怖いから」


 ルドルフは色欲の誘いを白衣のポケットにしまい込んだ。


こうしているうちに、ポーションが完成した。


「ふむふむ…やはり、質がよさそうだな、よく効きそうだ」


 しかし腕前は流石の一言であり、品質としては相当よいものであった。


「えへえ、効き目を試してみます?膜破りにも効くかな…」


 リシェルはルドルフの白衣のポケットをまさぐり、色欲の誘いを取り出そうとする。


「な、何をする!やめなさいっ!いい子だから!」

「何をいまさら…悪い子だよぉ…」

「き、きゅむ!きゅむむ!」


 リシェルが覆いかぶさり、ポケットをまさぐる。ルドルフはそうはさせないとばかりになんとか抵抗する。ご主人の危機を察したマリーがリシェルを引き剥がしにかかる。


「渡してたまるかぁ!」

「ああ、もう…うひひぃ」


 リシェルが床に倒れたルドルフに覆いかぶさるというあまりにひどい絵面が繰り広げられている。そこへ、よりにもよってそんなものを見せてはいけない人物が現れた。


「ルドルフ先生、今日は何を教えてくれますか?……あ」


 ルドルフから錬金術を教わろうとルチナが現れた。辺りの空気が静まり返る。


「あ、ルチナくん?ルチナくん?待って!これ違うから!」


 ルドルフとリシェルのあられもない有様を見たルチナは無言でオフィスのドアを閉める。ルドルフは愛弟子にそんな姿を見られ、羞恥心と焦りにより顔色が赤から青へと目まぐるしく変わっていった。



「つまり、リシェルさんから危ない樹の実を守るためにし抵抗していたわけですね」

「そういうことだよ。ねえ、リシェルくん?」


 諸々の事情の説明をを受けたルチナはルドルフが完全な被害者であることを理解した様子だった。


「はい…うひひぃ…痛い、けど、なんか気持ちいい…」


 頭に大きなたんこぶを2つ作ったリシェルが肯定する。その表情はどこか気持ちよさげだった。


「…それで、依頼…遂行できそうですか?なんか…いろいろ拗らせているようですけど」


 ルチナが悪気なく質問すると、ルドルフが肩を震わせる。


「うん、どうしたものか…破滅願望と爆発願望に溢れてる…」


 ルドルフは破滅願望が止まらなかったり、退学されるほどに爆発に対するこだわりが強いリシェルに対して怖さと疲れを感じていた。


「ふむ…なにか人から喜ばれる爆発があればいいんだけど…」


 ルチナもルドルフと一緒に一緒になって考え込む。


「なんだろねぇ…そうはいってもそんなの、鉱山の発破用爆弾か…それか、夜空に一発ぱーんと花を咲かせるか…」

「夜空に?」


 ルドルフの言葉に、リシェルがぴくりと反応する。


「ああ、夜空にぱーんと綺麗な花火を打ち上げるのもいいんじゃないかなと、これぞまさしく喜ばれる爆発…ってやつかな。皆を楽しませるんだ、よくないかな?」

「おお…それはいいアイデア…よし、やってみたいね…、ルドちゃん、ちょっと本読ませて!」


 ルドルフの言葉に乗り気になったリシェルは紙とペンを取り出す。


「ええと、この物質はこの色になるから…」

「な、なんとかなりそうか?」


 リシェルが熱心にいい花火を作るために考えている姿を見てルドルフは安堵する。


「ええと…できればすっごくハデな音が鳴る方がいいかなあ?」

「…やっぱり不安かもしれない。…まあ、僕もそこまでつきっきりになれないからなあ。それはそうと、今日はマジックアイテムの調合を教えるよ、ルチナくん」


 ルドルフは不安そうな目をリシェルに向けながら、ルチナにマジックアイテムの調合を教えることにした。


「うひひ、ここはこうして…」


 リシェルは熱心にどんな花火を打ち上げるかを熱心に考え続けた。数日間、机に向かい、あるときは調合した。


「ふふん、ここ数日間心血を注いだ作品がついに、今日には完成できそうだよ」

「おお、それは是非見てみたいね」


 製作を始めて1週間ほどたった日のことであった。リシェル特製の打ち上げ花火は完成間近となっていた。


「完成が楽しみだな…さて、今日は僕は王都へ用があるから…夜頃には帰るよ。くれぐれもオフィス爆発なんてことはないようにね?」

「はーい、気をつけまーす。さて、ラストスパート…うひひひ」


 ルドルフは不安げに思いながらもオフィスをあとにした。リシェルはルドルフを見送ると、作業に取りかかった。





「さて…うん、不安だ、早く帰ろう」


 その日の夜、仕事を終えたルドルフはシュタール村へ向かう汽車に乗りながら不安げにしていた。その頃リシェルはというと…


「よし、できあがったあ!早速打ち上げたくてたまらなくなってきた…もう…すみませんルドちゃん、あたし、欲求には抗えない…」


 悦に浸った表情でリシェルは打ち上げ準備を始めた。


「早く帰らないと…」


 ルドルフは駅を出ると便利屋のオフィスへ走っていった。疲れはあるが、言ってる場合ではないと思える。小走りで向かって十数分。小高い丘にあるオフィスが見えてきた。


「うひひぃ、さて、どーん!!やはああああ!」


 ひゅるるるる…パァァァァァァァァァン!!!!!


小高い丘の上に建つリシェルが導火線に火を付けた。リシェルの心血を注いだ結晶は…シュタール村の夜空に七色の大輪の花を咲かせた。村全体に響き渡るすさまじい爆発音とともに…。


「あ…」


 鼓膜が悲鳴をあげ、耳を裂くような爆発音…そして、小高い丘から上がった大輪の花…状況を理解したルドルフは頭と耳が痛むのを感じながら白目を剥いていた。その爆発音は当然、村中に響いており…



「あがががが…ふががっ」

「ふぇぇぇぇぇん!」

「わわわ、泣かないで泣かないで…何があったのかしら…」

「便利屋さんのほうから何か大きな花火が上がってたよ!」


 ある一家では驚いたお爺さんが舌を噛み、赤ん坊が大泣きする騒ぎが起きていた。


「る、ルチナちゃん、今のは…?」

「あ…」


 事情を察したルチナはまるでラピスラズのように青ざめていた。


「な、なんだ!?」

「にゃはあ!?」

「わあ!タイゲンが血ぃどばあした!」


 饅頭屋では、包丁で野菜を切っていたタイゲンが突然の爆発音に驚いて手元が狂い、指を切るという事故が発生していた。村中で人々の驚く声、犬がけたたましく吠える声が響く大騒ぎとなっていた。中には突然の音に驚きながらも花火の美しさに感心する人々もいたという。


「我ながらよいものができた…やみつきになったかも…耳が痛かったけど…それも…」


 満足げな顔で優雅に紅茶を啜るリシェルの背後に…


「リ〜シェ〜ルくん〜?」


 橙色のオーラを放ちながら威圧感を感じる笑みを浮かべるルドルフが立っていた。振り向いたリシェルは金縛りのように動けなくなったのである…。



「ひぃぃぃぃ…さ、さすがにもう5時間ぶっ通しは…」

「まだまだ!どおおおおおん!!どおおおおおん!!ごほごほ…」


 その後、リシェルはルドルフ立ち会いのもと各家庭に謝罪行脚に向かい、その後はオフィスの地下室にて、縛られた状態で正座をさせられ、ルドルフの叫びを耳元で聞かされ続ける仕置きを受けていた。リシェルの耳が痛くなり、ルドルフの喉が切れ血の混じった咳をしても、仕置きは止まらなかった。


「あ、あの…先生?頼まれていた喉用のポーション…できあがりました」

「す、すまないね…ん…効くなぁ…調合の腕を上げたね、ルチナくん。さて…あー…あー…よし」


 ルドルフはルチナから喉用のポーションを受け取ると、再びリシェルの耳元へ向かい、叫び始めたのであった。


「ひぃぃぃん、もう迷惑な爆発はしませぇん…」


 仕置を受けながらリシェルは半泣きになりながら懺悔するしかなかったのであった…


さていかがでした?

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