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不思議の王国の奇妙な錬金術師  作者: えのころ
vol.1 便利屋ゼルトザームの事件簿
14/16

CASE14 化け狐はメイド服がお好き

便利屋主任のルカスくんのおはなし

「ありがとうございました!またいらしてくださいね!」

「ああ、またくるよ!クリスティーナちゃんがいるんだからな!」


 便利屋ゼルトザームのオフィス内の一室ではルドルフやルチナが錬金術により作成した品物が売られており、そこで接客をしているのが銀髪ロングヘアに狐耳と尻尾、メイド服にくりくりとした黒い瞳が特徴のメイド服の小柄な少女だった。可愛らしい容姿と愛嬌のある接客から買い物客からも人気のある少女であるがその正体は…


「今日はもう店じまいだよ、ルカス君」

「はーい、わかりました、ルドルフ社長」


 クリスティーナはルドルフに一礼すると靄に包まれる。靄が晴れると、そこには銀毛で胴長の狐。セリアにより飼い慣らされた使い魔のルカスがいた。


「ふふ、いつも店番ありがとう、ルカスくん」 

「もう、人間の姿のときはクリスティーナって呼んでって言ったよね?」


 ルカスがルドルフの首元に尻尾を巻き付ける。もふもふとした感触にルドルフの顔がほころぶ。


「ただいまーって、あれ、仲良くしちゃってるね、お二人さん」


 手配犯の捕縛に向かっていたセリアがオフィスに帰ってきた。衣服には乾き始めた血がべっとりとかかっていた。また潰れたトマトみたいにしたんだろうな…とルドルフは思った。


「えへえ、ルドルフがクリスティーナって呼ばないから…」

「なんでクリスティーナなんだろうか、てか僕この子に関してあんまりよく知らないんだよなあ」


 ふと思い返してみると、ルドルフはルカスについてはあまり知っていることがなかった。便利屋ゼルトザームを立ち上げてしばらくしてから、セリアが突然「面白いから使い魔として飼うことにした」と連れてきて、そのまま成り行きで社員になった。という経緯であった。


「ああ、あれはね…」 


 セリアはルカスを捕獲したときのことを話し始めた。


「いたずらばかりする狐の獣人?」

「ああ…最近このあたりでよく出るんだ」

「わたしは顔に灰を塗られて」

「ぼくはバナナの皮ですべらされて」


シュタール村から少し離れたところにある山あいの小さな町で、いたずらばかりする狐の獣人を捕まえてほしいと言われ、セリアは引き受けることに。


「さて、ふむ…」


 セリアは大きな箱を被り、狐の獣人がよくあらわれるという通りの隅で待ち構える。


「さあこいわんぱくフォックスめ…」


 セリアはパンをかじりつつ、時折箱をかぶったまま移動しながらあたりを見回していく。そうしていと…


「銀髪で狐耳…まさかあの子かな?手に持っているのは…クナルの実?」


 セリアの目に、銀髪で狐耳の少女の姿が目にはいる。少女の手には、刺激を与えると大きな音を立てて弾けるるというクナルの実が握られていた。セリアは自分箱の近くまで寄るのを待ち構える。


「にっひっひ、あっちにむけて…」


 少女がクナルの実を投げるために振り被った瞬間…


「ばあっ!そうはイカの黄金球!」


 セリアはかまいたちの魔術でかぶっていた箱を壊し、突如少女の前に現れる。


「ひゃうっ!?!」


 驚いた少女は思わず手に握っていたクナルの実を強く握った。すると、パンッと大きくはじける音を鳴らし、実は爆ぜた。


「ひゃわわわわわ…」

「いや悪いねえ、でも依頼は依頼だから、はやく捕まりなさいっ!」


 セリアは少女を取り押さえ、ロープで縛り上げる。


「今まで迷惑かけた皆に謝罪行脚ののち親御さんに落とし前を…うわわっ!?」


 セリアが少女を抱えながら歩いていると、突如少女の姿が煙に包まれる。


「あれ、化け狐…?てか魔獣だったの!?」

「わわあ!」


 煙が晴れるとそこには、銀毛の小さな子狐が居た。人や動物、魔物、さらには無機物などにも化けていたいたずら好きの魔物、化け狐であった。知能が高く、人の言葉を話せる個体も多いという…


「わわ、捕まらないよう!」

「へへん、追いかけっこであたしに勝てるわけないでしょ!」


 逃げ出す化け狐をセリアが矢のような速さで追いかけ、再び捕まえた。


「逃げる悪い子にはお仕置きだよ!えいやあっ!」

「わひゃああああああ!」


 セリアは化け狐の両耳を掴むと、勢いよく、ちぎれない程度に引っ張った。


「というわけで、こいつがいたずらしてました」

「はい…すみませんでした…」


 耳を腫らした被害者の前に化け狐を連れて行く。化け狐は涙目になりながら謝った。


「やれやれ…大きな被害はなかったからいいけど…それで、この化け狐どうするんですか?」

「ああ、うちで飼い慣らして便利屋に入れようかなと。いろいろと役目がありそうだし」


 こうして、セリアは化け狐を連れ事務所へ向かった。


「んー…。もう悪いことはしないんだね?」


 白い液の入った小瓶を片手にしたルドルフが化け狐をじっと見つめる。


「あ、はい…懲りましたので」

「ならいいよ、今便利屋は猫の手でも狐の手でも借りたいくらいなんだ。それで、この子なんて呼べばいいの?」

「そうだね…この化け狐ちゃん名前つけなきゃね…性別は…どっちかな?女の子によく化けてたみたいだけど」


 セリアが化け狐を抱きかかえ問いかける。


「い、一応男の子…つまり、男の狐なんだ…」

「…クソ寒いフォックスジョークは置いといて、なら…ルカスくんでいいかな。光をもたらすもの、の意味だよ」


 こうして、ルカスは便利屋ゼルトザームの一員となった…。


「なんてことがあったんだよね」

「なるほどなあ。いたずら好きの魔獣が今や…」


 セリアが話し終えると、ルドルフは感慨深そうにしている。


「ただ、あたしもまだよくわかってないんだよね。ほら、ルカスくんはよく女の子になるけど、そのとき、見えない部分もちゃんと女の子になってるのかなとか」


 空気が凍りつく。ルドルフは目を見開いている。


「あ、それはね…」

「ルカスくん、言わなくていい、言わないほうがいい、言うな…」


 何かを言おうとするルカスをルドルフが制止した。頬が少々紅潮している。社長のそんな姿は見たことない、明日は傘を用意したほうがいいかも…とセリアは心の中で呟いた。


 翌朝…


「さて…今日も新しい朝が来た…眠れてないから眠いよ…」


 ふらついたルドルフが調合に取り掛かろうとしたとき、オフィスの戸が叩かれる。


「はい、どなた?」


 ルドルフが出迎えると、そこには傘をさしているチェルシーとミミの姿があった。


「あら、どうしたんですか?ミミさん、チェルシーくん」

「ええ、こまったことがありまして…」


 ルドルフはミミとチェルシーをオフィスに案内する。


「それで、困ったこととは?」

「ええ。この男は知っていますか?」


 チェルシーは1枚の写真を取り出す。写真には無精ひげを生やした人数の悪いやせこけた男が写っていた。


「たしか、こないだ捕まったとかいう盗賊の…それで、やつがどうしたんだい?」


 ルドルフの問いかけに、チェルシーはバツが悪そうに答える。


「実は…看守さんがやらかしまして、早い話が脱獄を…」

「うん、調査の結果、根城にしていた洞窟でまた盗賊稼業を始めようとしてる」


 ミミは出されたパイをほおばり、チェルシーに続く。


「ならまた捕まえればいいじゃない?次は逃げられないようにガチガチに拘束してさ」


 セリアが言うと、チェルシーの顔が悪い笑みを浮かべたものになる。


「そうなんだけど、ボクらを舐めたからには屈辱を味あわせたくてね。女好きの奴をハメて…」

「そのために、ルカスくんの力を借りたいの」

「うん、かわいい女の子と思ったら魔獣の男の子だった!みたいになったらショックでしょ?ルカスくんならどんな姿にもなれるし、よいかなと思って」


 チェルシーとミミの計画を聞いたセリアは合点が行った、という表情を浮かべる。


「うん、それはいいんだけど、どんな姿になればいいかな?いつものクリスティーナちゃんじゃだめ?」


 ルカスはデモンストレーションとばかりに、いつもの狐耳美少女メイドに変身する。


「ん…どっちかというと、もっとおっきいほうがいいかも」

「つまり、ドエロな女の子ということだね!」


 大人の姿のがいいと進言するミミに対し、セリアが身も蓋もない事をいう。ルドルフのハリセンがセリアにヒットした。


「じゃあ、こうかな?」


 次にルカスが変身したのは、クリスティーナより背が高く、胸元がよくみえるメイド服を着たグラマラスな狐耳の美女であった。


「メイドなのは継続なんだね、名前なんて呼ぼうかな」

「…あと、狐耳は消えなかったんだね」

「く、くやしい…くやしい〜!ボクよりでかい〜!」

「きゅむ!きゅむきゅむ!」


 冷静にコメントするセリアとミミとは対照的に、チェルシーはルカスのスタイルのよさに憤慨して地団駄を踏んでいた。マリーがうるさい、と言わんばかりにハリセンをチェルシーの頭に振るった。


「と、ともかく、下手人を捕まえに行こう」


 一行は盗賊が根城にしている洞穴へ向かう。


「あれは引っかかちゃいますね…」

「ちょうどいいタイミングで突っ込むよ」


ミミとチェルシーが洞穴の外の木陰で見つめる。ルドルフとチェルシーは洞穴内の岩陰に身を潜めている。


「ふう、今日も一仕事終えたな…って、どうしたんだ、女?」

「ええ…ここに大胆不敵で男らしい盗賊さんがいるときいて…」


 仕事を終え洞穴に戻ってきた盗賊をルカスが出迎える。


「な、なんだ、滾ること言うじゃねえか…」

「さあさ、今この場で…」


 ルカスが息を荒げながら胸をはだけさせる。盗賊の目線は胸に集中される。


「おおう…見えかけてるぞ…」

「もう、お好きなんですから…そんなに見たいのなら…」


 はだけていくたびに盗賊の息が荒くなり、目が離れなくなる、その瞬間、あたりが靄に包まれる。靄が晴れると、その場には先ほどまで息を荒くしながら胸をはだけさせていた美女ではなく、やや胴長の銀毛の化け狐がいた。


「ふふん、なにを期待してたのかなぁ?」

「ま、魔獣だとぉ!?つまらんいたずらしやがって!」

「でもその魔獣に欲情しちゃってたよね〜ふふん」

「このぉ!その分厚い皮剥いでやろうか!」


 盗賊がルカスに殴りかかろうとした時。


「確保!」

「確保!」

「ぐあああああああ!」


 ミミとチェルシーが飛び出し、両腕を曲げてはいけない方向に直角に折り曲げる。こうして間抜けなスケベ盗賊は再びお縄についた。


「いや〜、さすがルカスくんだよ」

「えへえ、うまいぐあいにやれたよ」


 盗賊を収監したあと、セリアたちは王都の酒場にいた。セリアがルカスを称えていると


「くやしい〜…くやしいいい!変身術はずるいよううう!」


 すでに出来上がった様子のチェルシーがなにやらわめきながら机をガンガンたたいていた。隣に座っているミミは取り押さえるかどうか考えているようだった。


「まあまあ、でもたしかに、考えようによってはチェルシーちゃんのが屈辱は与えられそうだからね…くふふ〜」


 セリアはニヤリと笑いながらバナナの皮をむき、チェルシーに握らせた。


「うう…ルカスくん、ボク負けないからね…」

「そんな事言われてもなあ…うん」


 勝手にライバル認定されたルカスは困った顔になりながら、セリアの竹筒に戻っていった。

今回は箸休め回に。近々重い話になるかも?

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