表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

6.アスウォのウーナ

一方その頃の話ばっかり。

書いてて楽しいんです。


時々、時系列がごっちゃになる以外はなぁ!

 置き去りにされたルナがソロでのダンジョン巡りをし、エンプティが鍋をかき混ぜていた頃。


 ウーナは海底エリアにいた。


「ほんと、景色だけは好きなんだけど」

 眼下には満天の星空を地に降ろしたかのような七色に煌めく夜景が広がっていた。


 海底深くには当然だが太陽光は届かない。この解決策として二つの方法が取られている。まず魔法を用いて太陽光を海水で減衰させずに都市まで届かせる方法。そして人工灯を用いて光を確保する方法。前者だとコストは大きいが地上と同じような昼夜のサイクルを得られる。後者だと常夜の街並みとなってしまうが安上がりで済む。


 また、海底には空気もない。と言っても海底で生きる人類は、ロロックによって水中でも生きられるようになっているため、生存に限って言えば空気は必須ではない。しかし生活をする上での必要や防衛の面で空気は有用となる。空気がなければ火を使えないし、海中の魔物は当然水棲なので、都市を空気で覆えばその侵入を防ぐこともできるのだ。よってコストを飲んで空気層を作るか、不便とリスクを取るかの二択が発生する。


 採光法と空気層の有無。これらの組み合わせにより、海底エリアの都市の景観は都市毎に大きく異なっているのだ。


 ところで、ウーナがいたのは海底エリア、ベルトーイ海洋の中央よりやや北東部、ベアブッカ王国所属の都市アスウォの外縁部。

 アスウォは周囲を千メートル越えの山々に囲まれた盆地に位置する。都市とその周辺の山々までを空気の層で覆うことで天然の要害を保持する大都市である。

 人工灯が暗闇を照らし、海水が避けられて光の減衰もない。さらに周囲には都市を一望できる高所が囲む。『ロロックスフィア』屈指のデートスポットだ。


「今度はルナも連れて来ようかな」

 勿論独りぼっちで来ていたウーナの目的は夜景ではない。観賞もほどほどに都市の中央部へと飛んで行く。目当ての建物まで直ぐにたどり着いた。

「えんぷ亭、留守かぁ。やっぱりフレンドまで切ったのは失敗だったなぁ…」


 フレンド登録しておけば相手のログインを確認できたりコールを飛ばしたりできる。『ロロックスフィア』にも実装されている機能だ。

 元々パーティを組んでいたウーナとエンプティだったが、些細なことで譲り合えず喧嘩別れしてしまった。ウーナはその時に感情に任せてフレンド登録までも切ってしまっていたのだった。

「会ったらごめんなさいしてもう一回フレンドになってもらわなきゃ!」


 意気込んだウーナが次にやって来たのは冒険者ギルドだった。

「エンプティ~! エンプティいる~!?」

 中に入るやいなや声を上げる。その声に、入り口の小さな影を認めた冒険者達は…。

「ウーナ!? 何であいつがいるんだよ!? 来ねえって言ってただろ! くそ、エンプティめ騙しやがった!」

「待ってくれ、まだアスウォは潰さないでくれ! 妹がまだ地表なんだ! 楽しみにしてるんだ!」

「また貴族が何かやったの!? メンタの悲劇を知らないって言うの!?」

 阿鼻叫喚だった。


「あの、エンプティ………」

「エンプティならいないよ。確か地表に行くって言ってたかな? 何だったらコールしようか?」

 騒然とする冒険者達の中から出て来たのは、鮮やかな紅髪を三つ編みにしたクールビューティーなエルフだった。

「あ、クララ。久しぶり。そっか、エンプティいないんだ」

 クララは後衛魔法アタッカーとして名を馳せるトッププレイヤーだ。ウーナともエンプティともフレンドであり、二人の喧嘩別れの顛末を知る一人でもあった。

「…うん。コールお願いしても良い?」

「勿論。居場所を聞けば良いの?」

「うん」

「じゃ、ちょっと待ってて」


 そう言うとクララは少し離れて、エンプティへのコールを始めた。幸い、繋がったらしく直ぐに相づちを打ち始めた。クララをじっと見ていても仕方がないので、ウーナはやっと落ち着いたらしい冒険者達の方を見遣る。そこに知っている顔をいくつか見つけた。

「むぅ? 結構豪華なメンツだ…?」


「お待たせ、エンプティは今ウェニシアだって」

「ウェニシア!? 私そっちから来たのに…」

 ルナを置いてきたのがウェニシア王国の端の方の都市近郊だった。確かウェニシアなら王都にえんぷ亭があったはずだ。先にそっちに寄っていれば…。


「タラレバだよね…。前向きに考えよ! クララ、もう一回コール頼んで良い? 伝言お願いしたいの」

 ウーナは、元々ルナについてアドバイスをもらおうと思い、エンプティを訪ねて遥々海底まで来ていたのだった。二人が近くにいるなら、エンプティにルナを探してもらって直接指導してもらえば良いのだ。可愛いルナのことならエンプティも乗ってくれるはずだし!


「…ウーナ、伝えたは伝えたけど、あの感じだと期待できないと思う…」

「………その時は…うん…えんぷ亭壊してまわるから」

 ウーナ自身のことを蔑ろにされるのはまだ許せても、ルナのことだと許せないウーナだった。


 果たしてエンプティにやる気は全くなかったが、この後、巡り合わせよく二人は合流することとなる。その後、直ぐに別れるのだが。えんぷ亭の明日はどっちだ!?



「ところで何かあるの? 有名な人が沢山いるけど。…まさか戦争?」

「戦争なら私も来ないよ。海溝に未確認の魔物が出たんだよ。そいつがかなり強かったらしくて、新エリアじゃないかって話題になってる。良かったら一緒に来る?」

 眉をひそめながら質問したウーナに、クララは努めてあっさりと返した。訳あってウーナの戦争に対する忌避感は強い。たとえゲーム内の話題であっても、ウーナの前で戦争に肯定的な言動をすると大変な目に合うというのは広く知られた話だった。

 ウーナの実力を知るクララはつい誘ってしまったが、直ぐに失敗だったと思い直した。ウーナには海底エリアから直ぐに離れてもらうのがお互いにとって一番だからだ。クララは冷静を装いながら心のうちでは冷や汗をかいていた。


 広い土地が確保できる海底エリアでは、人類間の争いが最も激しい。さらに土地が広すぎて都市間の距離が遠いために都市の独立性が高く、国家間の戦争、都市間の戦争、都市の独立戦争と火種に事欠かないのだ。それが分かっているからウーナも普段は海底エリアには近づかないのだが。 


「うーん、ちょっと気にはなるけど…。やっぱり帰るよ。コールと、誘ってくれてありがとうね!」

 やはり海底エリアには留まりたくない。それにクララの動揺も悟っていた。新エリアに興味はあるがさっさと海底を離れるべきだろう。

「そう…。なら今度は上で一緒にやろう」

 ウーナに気を使われたことを悪く思いながら、クララは引き留めず再会の約束をする。決して悪くは思ってはいない、という想いがウーナに伝わると信じて。


 果たしてその想いは正しく伝わっていた。

「うん! じゃあまた今度ね!」

 満面の笑顔で返したウーナは地上へと帰っていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ