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「ちょっと一緒に行ってもいいかい?」

遅くなりました……大学の課題が多すぎるんです誰か助けて……

 受付に行くと、なぜかエヴォックが出てきた。


「ああ、今日はどうしたんだい? いい武器も買えたみたいだね」

「はい。お店を教えていただきありがとうございます。それでこの依頼なのですが、諸事情により時間内に終わらせることは難しいと判断したので、未達成という形で報告させていただきます」

「君が未達成? ……まぁ、これは常時依頼の魔物の間引きだし、別に構わないけど……何かあったのか?」


 一瞬女性のことは話すべきかと迷ったが、情報提供を呼びかける必要があった際にエヴォックの手があると心強い。先に言っておくかと決める。


「依頼に出た先で倒れていた女性を保護しました。とりあえず医者に診せてます」

「え、どういう状況?」


 白亜の説明があまりにも適当だったため、シアンが即座に台本を作って白亜に読み上げさせる。


 白亜も状況を説明することは勿論普通にできるが、そんなに必要なさそうだなと勝手に判断して口に出さないことが多い。


 そのためにトラブルに巻き込まれたことや連絡を怠ったことで面倒事に発展したのは一度や二度ではない。


 報連相が欠けまくっているのが白亜である。しかも普段話を聞き流していることが多いため、大事なことですらうっかり忘れる。


 基本的にジュードたちがカバーしているのでなんとかなっている。


 ちなみにリシャットとして日本で働いている時は普通になんの支障もないのでやろうと思えばできる。ちゃんと大地に報告もするし、ある程度好き勝手に庭をいじったりはするが、ちゃんと伺いを立てている。


 やることはできるのだが、やらないのが白亜なのだ。


 白亜(シアン)が簡潔に事情を説明すると、エヴォックが一瞬怪訝そうな表情になった。


「それは、不思議ですね。その方はどのあたりに居ましたか?」

「えっと……簡単なものでもいいんですが、地図ありますか?」

「かなり大雑把なものだが、これでもいいかな」


 ざっくりとこの国周辺の地形の描かれた地図が出てきた。


 本当にざっくりなので細かいところはほぼ白い。地図というよりメモ書きだ。


「多分……この辺りです」


 詳しくはわからないが、多分この辺、と指し示す。


 というのもこの地図、ちょいちょい間違っているのだ。


 わざとなのか? と思うくらいには露骨に間違っている箇所がある。


 川が途中で切れていたり、何やら書き込まれていなくて空白の場所がある。地図など軍用品に等しいものだから、わざとこうなっているのかもしれない。


「そこか……」


 何やら黙り込んだエヴォック。


 白亜は面倒だったので心の声を聞かなかった。変なことを聞いてしまって何かに巻き込まれたくない。というか、以前にこういった状況で相手の心の内を読んでからポロッと声に出してしまい、本当に大変なことになりかけた。


 貴族との商談だったのだが、危うく会話を打ち切られるところだった。


 ジュードが見事にフォローしたが、その後でこっぴどく叱られた。


 そして「つい口に出してしまうのなら、聞かないでください! そもそも人様の考えていることを盗み聞きするのは良くないです」と言われた。


 元々独り言の多い白亜である。余程気をつけないと何を口走っているのか自分でも記憶がない。


「これから君はその女性のところに?」

「ええ。まぁ来てくださいと言われたので」


 発見時の状況確認のために白亜は来てくれと言われている。


 ただ、依頼が達成できない旨を先に伝えておきたいと白亜が言ったため、特別に一回ギルドに来ることを許してもらったのだ。


 本来ならそのまま事情聴取が始まるところである。


「ちょっと一緒に行ってもいいかい?」

「え?」







 というわけで、女性の見舞いになぜかはわからないがエヴォックと共に向かった。


 医者に話を聞いたところによると、かなり衰弱しているものの命に関わるものではないというのと、未だ意識は戻らないということだった。


 女性は固く目を閉じたまま動かない。


 白亜は少し耳に意識を集中させる。周りの音がより鮮明になって耳に飛び込んでくる。


(シアン)

『心音、異常なし。呼吸速度、異常なし。ただ少し浅いですね』


 シアンの解析の結果を聞きつつもう少し耳を澄ます。


 周りの風の声なども聞こえてきた。


 だが、この女性に関係していそうな情報は特に得られなかった。


 風の声が聞こえても白亜は会話できるわけではない。風が通り過ぎるときに言っている言葉をなんとなく聞き取っているだけなので、白亜は聞こえるだけで話すことは基本できない。


 やろうと思えば多分できるが、面倒なのはわかるのでやろうとは思わない。


 そうこうしていると大切なことを思い出した。


(あ、前田の監視……)


 大切なことというか、それを忘れていたらお前は何をしに来たのかという話である。


 思い出したついでとばかりに魔眼でさらっと確認してみたが、前田はまだ寝ていた。こんな時間まで寝てやがる、と一瞬イラっとしたが口を噤んだ。

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