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「所詮は素人なので」

 短めです。

 それから数時間後。


「とりあえず何種類か作ってみました」

「速いね⁉」


 ズラッと並べられたそれは、練習用とは思えないほど精緻に作られている。


 数時間倉庫に籠っていると思えば普通の人なら一日二日では完成しないであろう食器類を生産していた。


 しかもこれただのサンプルのつもりで作っているので、木で出来たものから、どうやったのかまるでわからないが陶器で作られたものもある。


「ひとつ聞いていいかな?」

「はい」

「陶芸教室とか行ったことあるからわかるんだけど、こういうのって乾かしたり焼いたりする時間とか考えたら一時間やそこらでは作れないはずだよね?」


 それは、常人の感覚である。


 当然というか、なんというか。白亜は勿論そんなもの軽く超越している。


「粘土から水分を転送して、時間を早めながら火で炙りました」

「ああ、うん……」


 もうなんでもありである。


 大地が自分の正体を知っているからといっても、隠す気全くなしである。


 魔法の存在を知らせてから使うことに遠慮がなくなった。


 この世界に無いものとはいえ、白亜は自重する気配が一切ない。


 白亜曰く「使って楽になるなら使った方がいい」のだそうだ。


 とことんマイペースというか、天然記念物である。


「それにしても、相変わらず凄いね……君のセンスに任せちゃダメかい?」

「贈るのは旦那様なのですから、ご自身で選ばれた方が良いのでは?」


 それも正論である。


 白亜に食器を頼んでおいてなんだが、大地にはその辺りの目利きはさっぱりわからない。


 なにが良くてなにが悪いのかも理解できないので白亜に丸投げしようかと思ったのだが、確かに白亜からの結婚祝いではなく大地からの結婚祝いなので白亜が選ぶのもおかしい。


 職人でもないのに自作してる時点で、多分いろいろとおかしいのかもしれないが。


「じゃあ、材質はこの軽いやつで……柄はこの木のやつで」

「畏まりました。では作って参ります」

「ああ、うん。……え、今から?」


 さっさと倉庫に帰っていった白亜。


 夕飯の時間になっても出てこないのでどうしようかと思っていたら、冷蔵庫に夕飯が入っていた。


 レンジで温めて食べてくださいというメモまで入っている。


 対応が手厚い。というか、何時作ったのだろう?







 そして珍しく徹夜して作っていたらしい。


 翌日、朝食の時間に完成品を持ってきた。


「こんな感じで如何でしょうか?」


 妙にお洒落な木箱には、食器が並べられていた。


 一般的な大きさの皿に加え、仕切りのついているプレート、小鉢、スープカップ、ナイフとフォーク、スプーンすらついている。


 そのすべてに同じ模様が入っているが、完璧に同じではない。


「これ、カップの端を合わせると別の模様になります」


 ペアグッズとしても完璧である。


 文句のつけようもない。いや、文句言うつもりも更々無かったのだが。


「商品化できるよこれ……」

「所詮は素人なので」


 憎たらしいくらいの謙遜だが白亜の謙遜は嫌みでもなんでもなく、純粋にあり得ないほど自己評価が低いだけだということを知っている。


 知ってはいる。けれどその上で嫌みにすら聞こえてくるのはなぜだろう。


「それ、職人さんの前とかで言っちゃダメだよ」

「? はい」


 一応返事しているが多分わかってない。


 白亜はとりあえず返事する。頭の回転も早いので理解はできている。


 そのはずなのに、何故言ってはならないのか、ということの納得ができない。


 正直、白亜にこの手の忠告をしたのは一度や二度ではない。


 それは大地だけではなく、ジュードやリンまでもが何度も言い聞かせている。


 だが、度々問題を起こして帰ってくるのは最早病気の一種としか思えないレベルだ。


 欄丸が皿を割ったりお使いが全くできないのと似ているのかもしれない。


 ちなみに、試作品のお皿は勿体ないからと家で使うことになった。


 初日で欄丸がほぼ全部割った。

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