「弟さん結婚してたの⁉」
結婚祝い、と言われても贈ったことがないので参考もなにもない。
弟が結婚した時には、弟本人が「ハクアの作ったティーセットが欲しい」と言ってきたのでそれを渡したのだが、それは参考になるのだろうか?
「弟の結婚式では、頼まれたので自作のティーセットを持っていきましたが……今回はまた別ですし」
「弟さん結婚してたの⁉」
「? はい」
話してなかった。というか、話すのを忘れていた。
年齢的に言えば、結婚適齢期をとうに逃している白亜である。本人全くと言っていいほど気にしていないし、寿命なんてあってないようなものなので、適齢期もなにもないのかもしれないが。
「日本とは違い、大体15、16才で結婚する方も珍しくないので」
「ああ、そうだったね……」
現代日本でいえば、高校1年生とかがもう既に結婚しているということである。
数百年も昔であれば、日本もそんな感じだったのだろうが。
「それにしても、阪口様はどのようなお方と? こう言ってはなんですが、あまり想像が……」
本当に失礼である。
「旅行先で知り合って、そこから色々と連絡取り合うようになったらしいよ。写真見る?」
端末を弄ってから画面を見せてくる。
すこし無愛想な男性が茶髪の女性とどこかの花畑をバックに自撮りで写っている。
この男性は阪口だ。ということはその隣の女性が結婚相手。
「……性質的には真逆に思えますね……」
「うん。そう思う」
茶髪の女性はどこか派手さがあって、阪口とは見ためからすれば合わなさそうだ。
とはいえ、性質が真反対でも寧ろ己の持っていないものを持っている相手に惹かれて仲良くやっていける例もあるので、正直なんともいえない。
ただひとつ、言葉を飾らずに言っていいのなら、彼女はキャバ嬢と言われても納得してしまう容姿だということだ。
化粧の仕方からして、結構気合いが入っている。
もしかしたらこんな見た目でも中身は阪口みたいに物静かであるかもしれないけれど。
「阪口様は、彼女の事をなんと評価しておられるのですか?」
大地は無言で阪口とのメールを見せてきた。
メールの文面には、結婚の連絡と、彼女の人柄がさらっと書いてあった。相変わらず文面ですらあまり語らない人である。
そこには【彼女はとても明るく、言葉を飾らない素直な人です】と、ある。まぁ、そこに関してはなんとなくわかる。
確かに明るさはありそうだし、言葉遊びを楽しむタイプでも無さそうだ。
何枚か写真が送られてきており、そのどれもが先程と同じポーズで撮られている。何かの銅像の前で撮られたものや、海をバックにして撮られたものなど。
恐らく旅行に何度も出掛けていたのだろう。阪口は元々旅行好きな人だから、そこで気が合ったのかもしれない。
「……私たちが口を出すことでもありませんね」
「そうだね。阪口君は結構楽しそうだし」
どの写真も白亜並みに無表情なのだが、どの辺りが楽しそうなのだろうか?
阪口に関しては、心の声を聞かないとなにを考えているのかさっぱりわからない。
「それで、結婚祝いなんだけど。君さっき自作のティーセットとか言ってたよね?」
「はい。弟から要求されたので」
「じゃあ食器を作ってくれないかい? セットのものを」
食器か、と一旦考え込む。
別に作ることに関しては文句はない。それくらい白亜にとっては殆ど集中せずとも作ることができる。
だが、白亜はよくも悪くもかなり頭が堅く、センスやら何やらも全体的に昔のものだ。
世情に疎いのでどうしたって流行りの物は作れない。
「若干古くさいものになってしまうので、どこかでもっと腕のある職人を雇った方が宜しいのでは?」
「それやっちゃうと阪口君が遠慮しちゃうからね。高価な皿より、君の作った物の方が受け取ってくれるんじゃないかと思うんだ」
それを聞いて白亜も納得した。
超高級品として有名な店のものなど買っていったら、下手したら遠慮されて受け取ってもらえない可能性がある。
だが、白亜の作ったものならまた別だろう。製作にかかる費用も材料費くらいである。
「そういうことなら、作らせていただきます。皿やカップをいくつかご用意すればよろしいのですか?」
「ああ。頼むよ」
「畏まりました」
まずはデザインからだな、と小さく呟いたのだった。




