第一章 7話◆翌朝の裁可
外野の嫌がらせと信長の理不尽な圧力を、光秀の悪知恵と左近の勢い、ケロタンの珍妙な技でひっくり返す!
……だが、おもてなしが成功に近づくにつれ、光秀の瞳には異様な光が宿り始める。
「天下の行く末のため……上様、敢えて怒っていただきましょう」
光秀の胸に秘められた、あまりに切なく、壮大な深慮遠謀とは——?
歴史の結末が哀しいからこそ、今は思いきり笑い飛ばす!
史実のリアルと食文化の深掘りに、光秀の覚悟、そしてテンポ抜群の喜劇を掛け合わせた、命がけの過剰接待サイココメディ開幕!
第一章 7話◆翌朝の裁可
夜明け。
梅雨雲が切れ、
雨上がりの朝日が障子を淡く照らしていた。
執務室には、
まだ「くさや」の余韻が
しぶとく漂っている。
机の上には、
骨だけになった皿。
その周りには、
石田三成。
増田長盛。
堀尾吉晴。
三人が折り重なるように眠っていた。
三成の右手には、
判が握られたまま。
大福帳には、
「可」
「可」
「可」
「可」
見事なくらい、
すべてに判が押されている。
その時、
障子が静かに開いた。
白い割烹着姿の光秀が、
何食わぬ顔で入ってくる。
机を一瞥すると、
「……ほう。」
それだけ呟いた。
続いて現れたけろたんが、
皿を見て嬉しそうに頷く。
「完食ですケロ。」
「予算は。」
「全部通りましたケロ。」
光秀は静かに目を閉じた。
「左近が命懸けで買ってきた
東国一高い干物。
安い買い物であったな。」
その時。
三成が寝言で小さく呟く。
「……くさやを……
もう……一枚……。」
けろたんは、
くりくりした目を細めた。
「ケロリ。
これで第一段階、
完了ですケロ。」
後書き:筆者の想いに寄せて
なぜ島左近なのか。なぜケロヨンなのか。
それは、左近の持つ「武人の潔さ」と、ケロヨンの持つ「健やかな日常の象徴」が合わさった時、初めて信長の「死の気配」に対抗できると考えたからです。
店頭で雨の日も風の日も立ち続けるあのカエルのように、ケロヨンは安土の激動をケロリと見過ごし、左近は主君のために地獄の釜を焚き続ける。
この二人がいたからこそ、光秀は本能寺という「最後の配膳」まで走り抜けることができました。歴史という名の厳しい「処方箋」を、少しでも楽しく、そして美味しく書き換えたい。そんな願いを込めた主役抜擢でございました。




